西原&順也くんシリーズのブログです。 <登場人物> 西原 優希(さいばら ゆうき)日仏クォーター、才色兼備な中学2年の14歳。幼馴染の順也が大好き。 /鳳 順也(おおとり じゅんや)ちょっと小さいけれど、剣道チャンピオンのやっぱり14歳。綺麗で優しい西原が大好き。
場所・・・優希の寝室
登場人物・・・西原優希 大公爵の息子 
        順也 人魚の国の第三王子(今は人間)



「はぁ・・・ただ今、順也」
「んっ、お帰り、優希ぃ・・じゃなくて、お帰りなさい、『あ・な・た』」
「ええっ!!!!何?それ、順也っっ?何でいきなり『あ・な・た』なのっ?!」
「ん?嫌だったか?」
「ぜっ全然嫌じゃないけれどっ、でもどうして?」
「えっとな、ケント君が、きっと優希は沢山怒られてガッカリして帰ってくるから、そう呼んで元気付けてやった方がいいって言ってたからだぞっ」
「ケントが?」
「んっ・・・なぁ、優希ぃ、そんなに皆から怒られたのか?」
「え?ああ、フローリア姫を投げ飛ばしちゃったから、ちょっとね・・でも、隣国の国王にもキチンと謝ったからもう大丈夫だよ、それに順也が『あ・な・た』って、可愛く呼んでくれたから元気が出たよ」
「んっ、そうかっ!それなら良かったぞっ!!」
「うん、ありがとう、順也、そう呼ばれると、もう順也と夫婦になれたみたいで凄く嬉しいよ」
「どういたしましてだぞっ!あっ、それからな、さっき三都葉先生の水鏡で、海の中の智也兄さんと桜子姉さんと久しぶりに話したんだぞっ!」
「そう、良かったね・・あっ、ねえ、お兄さんとお姉さん、俺と順也の結婚のことは何か言ってなかった?例えば、俺を順也のお婿さんとして認めるとか何だとか・・」
「ん〜とな、俺も一応、優希と結婚していいか聞いたらな・・」
「聞いたら?」
「『その件に関しては未来永劫保留だっ、二度と口にするなっ!』って言っていたぞ」
「みっ・・未来永劫保留っ?!」
「なあ、優希ぃ、『未来永劫保留』って何だ?」
「ううううう・・・・」
「何か二人共凄く怒ってたけど、どうしてかなぁ?」
「うぁぁぁぁ・・・・」
「あっ、また優希に元気が無いぞっ、『あ・な・た』って呼ぶか?」


場所・・・フローリアの部屋
登場人物・・・フローリア 隣国の王女 
        オババ 魔女



「きぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!悔しいっ!!!!優希様ったら、この青い海の真珠姫、フローリアを投げ飛ばしたわっ!!何故っ?何故なのっ?優希様っっ、この絶世の美女フローリアが、あんな真っ白いヒョロヒョロの子供に負けるどんな理由がありますのっ?納得がいかないっ、絶対に納得がいきませんわっ!!このフローリアが負けた何か良からぬ理由が、きっと何かある筈ですわっっ!!」
「おおせの通りです、ご聡明なフローリア様」
「ぎゃあああっ!!ビックリしたっ、『黒い森の魔女のオババ』、何時からそこにいたの?何時も言っているでしょう?いきなり背後に現われるのはお止めなさいっ!」
「ヒャッヒャッヒャッ・・・コレは失礼いたしました、次は気をつけます」
「ま、まぁいいわ、それよりオババ、今仰せの通りっていっていたわね、それってどういうこと?優希様がフローリアでなくあの貧相な子供を選んだのには、やっぱり何か理由があるの?」
「ヒャヒャ・・・その通りでございます、フローリア様」
「まぁっ!やっぱりそうだったのねっ、で、何なの?オババッ??優希様をこのフローリアとの真実の愛から目を背け指せているその理由は何??」
「ヒャヒャヒャっ・・・それは、フローリア様、あの順也という少年の正体が、人間では無く人魚だからでございます」
「に、人魚?人魚ってあの下半身が魚のあの人魚?そんなものが本当にいるの?」
「はい、人魚は海に住む魔性の者、今の優希様はその人外の魔力に惑わされているのでございます」


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2008.08.12(07:42)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「うわぁぁ!凄く綺麗だなぁっ!西原ぁっ」
「うん、そうだね、順也」
 分厚そうな曇り硝子に、金で複雑な模様が描かれた、見上げる程の巨大な扉。
 自動ドアになっているそれが真ん中から音も無く左右に開き、その向うに広がった光景に、順也が大きな歓声を上げた。
 西原達が居るのは新宿の高層ビル群が間近に見える老舗の高級ホテル。
 その45階にある、ホテルの会員制フィットネスクラブに付属したプールだった。
 外から見上げた時、ホテルの外観が途中から少し細くなっていているのが見えたけれど、ここは丁度その細くなっていた部分らしい。
 意外と広くベランダの様に張り出したそこに作られている大きな楕円形のプールは、夕方の近い夏の空に下で湛えた透明な水をキラキラと輝かせていた。
 そして、45階だけあって眺めも開放感も最高で、グルリと観葉植物の多く置かれた向うには透明な硝子の柵が目立たなくしてあって、まるで空中に浮かんでいる庭の佇んで居る様な気にさせる。
 ここで今日は、このプールの改装が終わった事を記念したパーティーが開かれていて、プールサイドには瀟洒なテントが出されていて、その下には白いテーブルクロスの掛かったテーブルが置かれ、沢山の豪華な料理が準備されていた。
「西原ぁ!誰も泳いでないぞっ!早く泳ごうっっ」
「待って!順也っ、いきなり飛び込まないで、準備運動が先だよっ、あと遊園地のプールじゃないんだからそんなに騒いじゃ駄目だよっ!」
「ホホホ・・いいのよ、好きな様に楽しく泳いでくれて、でもこのパーカーは脱ぎましょうね、順也ちゃん」
 余りプールらしくない、良い匂いが漂う贅沢な空間。
 しかし、パーティーと言うにはお客が少なく、プールサイドにはホテル側の給仕の人の姿の方が目立っていた。
 そして、せっかく改装したばかりの、豪華なタイル張りのプールの中には、順也の言う通りにまったく人影が無い。
 貸切状態のプールに喜んで飛び込もうとする水着姿の順也を、西原が慌てて引き止めて、 連れて来てくれた桜子が楽しそうに笑いながら、順也のパーカーを脱がせてくれようとしていると、
「桜子、来てくれたのねっっ、ありがとうっ、助かるわっ!!!」
 プールの向う側から、ホテルの従業員の格好をした女が駆け寄ってきて、ガバッとやはり水着姿の桜子に抱きついた。

 桜子に抱きついたスーツ姿の美女は、皐月瑠璃子という女性で、桜子の小学校からの大親友だということだった。
 桜子と並んでも引けを取らない、目鼻立ちのハッキリしたスラリと長身の美人で、父親が社長のこのホテルで、将来は跡を継ぐ為にホテルマンとして働いている。
 今日、桜子を通じて、このプールに西原と順也を誘ってくれたのはこの女性だった。
 誘ってくれた理由は、改修工事が遅れて9月と言う半端な時期になってしまい、お客が微妙に集まりそうに無いプール開きを賑やかにして欲しいという、つまりは景気付けと言う事らしい。
 もう2年ほど前になるけれど、以前一度、智也の大学の学園祭で会ったことがあるので、実は西原も順也も初対面ではない。
「こんにちは、お久しぶりです、今日はこんな綺麗なプールに誘って頂いてありがとうございます」
 なので、桜子との挨拶が一通り終わった頃を見計らって、いつも通り人見知りしている順也の代わりに西原が挨拶をすると、
「こちらこそ、無沙汰しています、まぁっ、あなたがあの時の男の子?桜子には聞いていたけれど、本当に素敵な男の人になったのねぇ・・」
 瑠璃子はじっと西原を見て、頬に手を当て酷く感嘆した声を出した。

「いえっ、俺なんか、背が伸びたくらいで何も変わっていません・・」
「そんな事ないわ、本当に見違えちゃった」
「いえ、そんなっ・・」
「あら、優希君、珍しく照れてるの?瑠璃子は美人ですものえぇ」
「さ、桜子さんっ、そんな事ないですっ、からかわないでくださいっ!」
「あらっ?そんな事無いって、私が美人じゃ無いって事かしらっ?」
「あっ!いえっっ、全然そんな事はっっ!」
 桜子とその親友、何だか雰囲気の似ている微妙に苦手な二人を前に、西原は心ならずも緊張して、受け答えがしどろもどろになってしまう。
 桜子もハキハキしているけれど、瑠璃子もこんな立派なホテルの跡を継ごうとしているだけあって、仕草は桜子同様に上品だけれど口がまわる。
「それじゃあ皆さんはごゆっくり、順也ちゃん、沢山泳いで一杯食べていってね」
 そして、しばらく桜子と一緒になって、オロオロする西原をからかった瑠璃子だったけれど、やがてポケットの中の携帯で呼ばれたらしく、そう言い残し急ぎ足でホテルの中に戻っていった。
 やっと二人掛かりのイジメから開放されてホッとした西原は、背中に隠れて大人しい順也の方を振り返ろうとして、その瞬間に『はっ!!』とした。
―――あんな大人の美人と親しく話していたら、また順也のヤキモチスイッチが入るかもっっ!? 
「順也っっ、今のは違うよっ、そういうんじゃ無いんだよっ!!」
 どこの誰からとも知れない手紙にあれだけ怒っていたんだから、今ので怒らない訳が無い。
 今日の学校での散々だった事を思い出し、早くも泣きたい気分で西原が振り返ると、
「ん?違うって何がだ?」
 しかし、順也は何時の間に手にしたのか、カットされたオレンジの実がとハイビスカスが綺麗に飾ってある、ゴージャスなオレンジジュースをチューッとストローで吸いながら、不思議そうに顔を傾けてみせた。


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2008.08.11(21:18)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大広間
登場人物・・・何かもう全員



――――パンパカパーーーン、パンパンパンパン、パンパカパーーーン
「皆様、大変お待たせいたしましたっ、時期国王陛下西原ゆ・・」
――――バーーーンっ!!!!
「順也ーーーーぁぁっ!!!愛しているよっ!!!俺と、結婚してくださいっ!!」
「ん?優希ぃ、走るの凄く早いな」
「それは今はどうでもいいからっ、俺と結婚してっっ、返事はっ??」
「んっ、別にいいぞっ」
「本当にっ?ありがとうっっ!順也!!」
「優希様っ、そんなにいきなり、段取りが滅茶苦茶でお客様が驚いていますっ」
「いいから、ケントは邪魔しないでっ」
「優希さまぁぁぁぁ!!!お選びになる相手を間違っていらっしゃいますっ!!抱きしめるならこのフローリアをぉぉっ・・・・うぶっ!!!!」
「煩いっっ!突進して来るなっっ、南方イボ猪っっ!!!」
「あらあらっ、優希さんっっ、相手は一応隣国のお姫様なんだから、投げ飛ばしては駄目ですよっ」
「おいおい、今のはちょっと酷くねぇ?」
「いいから、母さんも翔也さんも黙っていて下さいっ!三都葉殿っっ、お姉さんはどこから見ているんですかっ?ボーーッとしてないで、教えてくださいっ!!」
「えっ?あっ、えっと、そうですね・・あちらの海方向だと思いますけれど・・」
「こっちですねっ!!順也っ、こっちに来てっ!!!誓いのキスをするよっ!んーーーっ」
「んっ、いいぞっ、んーーーーっ」
「あっ!こらぁっっ!!こんな人前で、俺の弟になにすんだよっっ!!」
「だから翔也さんは黙ってて下さいっっ!!今、大切なところですっっ!海のお兄さんっっ、お姉さんっっ!!見てますかぁっっ?!俺の中に迷いはミジンコ程もありませんっっ!必ず幸せにしますからっ、順也を俺にくださいーーー!!!」


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2008.08.10(20:50)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
 縋り付いてくる順也の小さな身体を抱き締めて、西原は落ち着かせる様にポンポンとその背中を叩いた。
「そんな事を心配してたんだ・・・バカだね、順也は・・」
 そして、順也の落ち込んでいた原因が以外に他愛の無いものだと知り、安心してつい思ったままの感想を口にしてしまう。
「ふえっ・・、バカだと面倒臭いか?」
 すると順也はガーンとショックを受けたような顔をしてまた泣きそうになるので、
「違うよっ、そんな事は一言も言ってないよっ!」
 慌てて西原はブンブン首を振って見せた。

 どんな状況になったって、順也のことで何かを面倒だと思う事なんて絶対に有り得ない。
 順也がそこに居て、順也の為に何かが出来るから、西原はこうして普通の人の振りをして動く事が出来るのだ。
 順也だけが西原をこの現実世界に繋ぎ止めていてくれる唯一の楔だった。
 順也に見捨てられれば、存在理由を失って、三日と持たずに西原は正気を失うだろう。
 その愛しい存在の順也を恋人に出来て、最高に幸せな気持ちで生きているのに、どうしてヤキモチを妬かれた位でその生命線の順也を疎ましく思えるだろう?
 そんな有り得ない理由でこれ以上泣かれてしまっては敵わない。
「あのね、何があったって俺が順也を面倒だなんて思う事は絶対に起きないんだよ、だって、俺のこの中は順也で一杯なんだから」
 それをどうやって納得させようかと考えて、西原は順也を1人でソファーに座らせてその前に跪き、少し下から順也の顔を見上げてそう言った。
 そして、順也の手を掴んで導き自分の胸に触らせる。
「俺で一杯なのか?」
 順也は言われた事の意味が分からないらしく、大きな目を見張って不思議そうに小首を傾げてみせた。

「そう、順也が傍にいてくれて、何時も話しかけたり、笑いかけたり、甘えたりしてくれるから、そういう順也を取り込んで、俺は俺でいられる」
「ん?そうなのか?」
「そうだよ、知らなかった?」
「んんっ、知らなかったぞっ」
「あはは、大切な事だから覚えておいてね、じゃあ、反対に順也がいなければどうなると思う?」
「ん〜・・・・寂しい?」
「そんなんじゃ済まないよ、順也は以外と簡単に身体の外に抜けちゃうからね、俺の中は空っぽになって、直ぐにペシャンコに潰ちゃうんだ」
「んんっ!そうなのかっ?そんなの俺は嫌だぞっ!」
「うん、俺も嫌だよ、そうならない為にはずっと順也の傍にいて、順也を補給してなきゃならないから、ヤキモチを妬きでもいいから順也が傍にいてくれないと、俺は凄く困っちゃうんだよ」

「俺はヤキモチ妬いてもいいのか?西原は面倒じゃないのか?」
「順也を面倒だって思って嫌になったりしたら、俺は三日でペシャンコになっちゃうよ、そんな事は気にしないでいいから、ずっと俺の傍にいて順也を俺に補給させて?」
 西原の話しを納得してくれたらしく、順也は「なら良かったぞ」と言いニコリと笑って、酷く安心したように身体の力を抜いた。
―――チュッ
 フニャリのソファーの上で力を抜いている順也が可愛いので、西原はその上に圧し掛かり、ほんのり赤い唇にそっとキスを落とす。
「西原ぁ・・・」
 勿論、順也は嫌がったりしないで、首に腕を回してきて、先を強請るように目を閉じて首を小さく傾けてみせる。
「順也・・愛してるよ」
 西原はフワフワ柔らかく甘い唇を少し長く味わって、何時の間に二人で倒れこんでいたソファーの上で、順也を抱き締めた。
 ヤキモチは心臓に悪いから止めて欲しい。
 本心を言えばそうだけれど、それを言うとまた順也が混乱しそうなので、今はヤキモチを容認する事までで話を止めておく。
 これから、また順也は容赦なく膨れるかもしれないけれど、それについては本をただせば西原の自業自得なので仕方が無い。
 夏の日差しが眩しい、けれどもクーラーの効いた静かな部屋。
―――ああ、大事に至らなくて良かった
 はた迷惑なユウコリンさん事を忘れて機嫌の直った順也の華奢な身体を、西原は幸せな気分でシミジミ抱き締めた。
「なあ、西原ぁ・・・」
 安心して、つい何時の間にか意識を飛ばしてしまっていると、大人しく腕の中に納まっていた順也が、顔を上げて名前を呼んできた。
「ん?何?順也、ごめんね、苦しかった?」
 ちょっと力を込めて抱き締め過ぎていたかもしれない。
 慌てて西原が身体を起こすと、でも順也はそファーの上に寝転がったまま、そうじゃないと言いたげにフルフル首を振り、
「このままエッチするのか?俺は別にいいぞ・・・」
 何故か熱っぽく潤んだ色っぽいハシバミの瞳で西原を見上げながら、プチッとワイシャツの一番上のボタンを外して見せた。
「ええっ!しっ、しなよっ!!!!これから、家に帰って、お昼ご飯を食べて、また稽古するんでしょうっ!?」
 何時の間にそんな話になってしまっていたのか?
 こんなまっ昼間から、学校帰りにそんな事、したいけれど出来る筈が無い。
 まったくそんな気の無かった西原は、大慌てで順也をソファーから引き起こし、外したボタンを締めなおして、
「んんんっ!それはエッチしてからでも構わないぞっ!」
「絶対無理っ!!!そんな事した直ぐ後で、お母さん達とご飯なんて食べられないよっ!」
「んんっ!ちょっとだけっ!!」
「ちょっとも駄目っ!お昼を作ってお母さんが待ってるよっ!!早く家に帰ろうねっ」
 抵抗する順也の腕を引っ張って、足早にマンションを出たのだった。

 PM1:15分
 お昼ごはんは冷やしうどんと、順也と西原には追加でカツ丼が付いていた。
 マンションから帰ってきて、シャワーを浴びてサッパリした後に、それを、順也、西原、小枝子、桜子の四人で茶の間でテーブルを囲んで食べていると、
「そうだ、順也ちゃん、優希君、今日の晩御飯はプールで食べない?」
 うどんを上品に口に運んでいた桜子が、ニッコリと笑いながらそう言った。



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2008.08.10(11:00)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「わぁ、暑いね、直ぐにクーラー入れるからちょっと待ってね、何か冷たい物を飲む?オレンジジュース入れようか?」
 順也を連れてマンションの部屋に入ると、締め切っていた部屋の中は蒸し風呂みたいになっていた。
 慌ててクーラーを入れてから、順也をリビングのソファーに座らせて、西原は冷たい物を取りにキッチンへと向った。
 すると、順也も後をついてきて、食器棚からグラスを出している西原の腰に腕を回し、ピタリと背中にくっついてくる。
「ごめんなぁ・・・西原ぁ・・・」
 そして、くぐもった声でそう言い、
「・・・ぅ・・ぇぇ・・・っ・・」
 直ぐに西原の背中に顔を埋めて小さな声を出して泣き出した。

 クーラーの音が低く響くリビングにある椅子の上。
 泣き出した順也を西原は膝の上に抱き、そのまましばらく抱き締めていると、やっと順也は泣き止んだ。
「落ち着いた?ねえ教えて、さっき教室で、俺がちょっとだけいない間に何があったの?」
 それでも、まだ大きなハシバミ色の目に一杯涙を湛えたままでいる順也を驚かせてしまわないように、出来る限りの優しい声でそう尋ねると、順也はポツポツと泣いて掠れた声で話し始めた。

「梅本君の彼女のユウコリンさんがな・・・」
「ユウコリン・・さん?まぁ、いいか、うん、ユウコリンさんがどうしたの?」
「うん・・ユウコリンさんがな、凄くヤキモチ焼きなんだ」
「ヤキモチ焼き?」
「んっ、あのな、梅本君がなユウコリンさん以外の女の子と口を利くと、もの凄く怒るんだぞ」
「ふぅん、そうなの、どんなふうに?」
「んとな・・駅前でティッシュを配ってる女の人からティッシュを貰って、梅本君が『どうも』って言うと怒る」
「へぇ・・」
「それから、コンビニでお弁当を温めて貰って受け取る時に『どうも』って言った時、店員さんが女の人だと怒る」
「ふぅん・・」
「それからな、マックでハンバーガーを買って、『どうも』って言って、店員さんが女の人だと怒る」
「はぁ・・・」
「それから」
「まだあるの?」
「ん・・・と、もう無い、聞いたのはそれだけ、とにかくなユウコリンさんは凄いヤキモチ焼きで、梅本君は凄く困てるらしいんだぞっ」
「そうなんだ、そんなに何でも怒られたら、梅本君も大変だね・・で、それで何で順也の元気が無くなるの?」
 順也の話しを聞いて、謎だった若林達と順也の会話は理解する事が出来た。
 でも、何でそれで順也が泣く程に落ち込んで、しかも台所で西原に『ごめんな』と謝ったのか分からない。
 なので、疑問に思った事を、近くにあった順也の白く形の良いオデコにチュッとキスをしながら聞いてみる。
「んっ・・あのな、梅本君はユウコリンさんが好きだけど、余りヤキモチを妬くから、この頃ちょっと『面倒くさい』って言ってたぞ」
「うん・・・それで?」
「俺もな、今日は沢山オマエにヤキモチ妬いただろう?俺も西原に『面倒臭い』って思われてたらどうしようって考えたら、凄く恐くなったんだ」
 キスをされた順也はちょっとくすぐったそうに肩をすくめてそう言い、
「ヤキモチ妬いてゴメンなぁ・・・もうしないから、俺を『面倒臭い』って思わないでくれよな・・っ」
 また涙が溢れてきた瞳で縋るように見上げて来て、そのまま西原の首にギュッと力を込めて抱きついてきた。



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2008.08.08(07:30)|dropped somethingコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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