何時も、白いバルコニーからぶら下がっている、白い母の遺体を発見したところで、目が醒めてしまう。
そして、連続夢を見る事もそこで終わりで、その先何度眠りに落ちても、その先のことを夢に見たことはなかった。
だから、その先の自分の身に何が起きたのか、西原は良く知らない。
事実、6年前に母の遺体を見つけてしまった時も、渡り廊下で気を失った後に、次の記憶があるのは母の葬式も済み、父に連れられて東京に戻ってからだった。
それも劣化したモノクロビデオを見ている様な曖昧としたもので、本当に生きている人としての色彩のある記憶が戻るのは、生き生きと愛らしい順也の笑顔と出会えてからだった。
でも、今日は順也のフニフニ頬っぺたに救われて、何時ものところで絶叫しないで済んでしまった。
そのせいで、目を覚まさないまま眠り続け、その先の、自分ですら覚えていない、保養所での記憶を夢に見てしまう。
それが、本当の記憶に基づく夢なのか、勝手に作り出した嘘の映像なのか、記憶が無いので自分でも判断がつかない。
白い光の中で揺れる母の変わり果てた姿を見つけて気を失ったあと、次に目を醒ますと、そこはコテージの自分の部屋の、自分のベッドの上だった。
張り付いた様に思い目蓋を開けると、そこには白い天井を背景に自分を心配そうに覗き込む、看護婦の制服に身を包んだ海野と、今にも泣きそうな顔の総一郎と、出張に出掛けた筈のスーツ姿の宮田がいた。
「優希君っ、良かったっ!目を覚ましたのねっ!!」
「優希っ、心配したんだぞっっ、大丈夫かっ?」
「コラっ、二人とも大声を出さない、優希君が驚いているだろうっ、優希君、大丈夫?何処か痛まない?気分は?直ぐに宇間詰先生を呼ぶからね、そのまま寝ているんだよ」
三人は目を醒ました自分を見て、口々に気遣いの言葉を掛けてくれる。
そんな3人に向けて、何か言い返さなければと思うけれど、何故だか声が出てこない。
まるで心と身体を繋ぐ線が切れてしまった様に、ピクリともベッドに寝ている身体を動すことが出来なかった。
やがて、宮田が内科の宇間詰先生を呼びに部屋を出て行ってしまい、部屋の中には、自分と海野と総一郎の3人が残された。
「何も心配ないからな、俺がずっと一緒にいてやるから安心しろ」
「大丈夫よ、優希君、大丈夫よ」
海野と総一郎は、ベッドの両側に陣取り、それぞれ手をギュッと握ってくれて、引き続き励ましの声を掛けてくれる。
―――何が心配が無くて大丈夫なのだろう?
さっきから、皆がしきりにそう声を掛けてくれるけれど、一体何の事を言っているのかさっぱり分からない。
もの凄く大切なことを忘れている気がするけれど、それが何なのかまったく思い出せなかった。
でも、このままでは二人に悪い気がするので、ボンヤリと焦点の定まらない頭に神経を集中して返事を考えようとすると、途端に頭が鈍く痛み、胸を締め付ける様な吐き気に襲われた。
「うぅ・・・っ!」
「どっどうしたっ、優希っ!?」
「しっかりしてっ、優希君っ」
その苦しさに思わず寝ているベッドの上で丸まると、二人が慌てて様子を見ようと顔を寄せてきた。
―――カチャ・・・
その時、ベッドの足元の方にある、部屋の出入り口のドアが静かに開いた。
吐き気と頭痛でベッドの上で身悶えしながら、屈みこんでくる海野の向こうに垣間見えた視界の先には、薄く開いた扉の向こうに、見知ら少年がこちらを見て立っていた。
いや、見知らぬというのは間違いかもしれない。
見たことはないけれど、白い開襟のシャツと、涼しげな夏色のズボンを着たその少年は、髪型は少し違うけれど、まるで自分と同じ顔をしていた。
まるで鏡を見ている様な同じ顔の少年の、自分より更に色の薄い瞳と視線が絡んだ瞬間に・・・・
「いい加減にしろっ!!重いわぁっボケぇぇぇっっ!!!」
―――ドサーーーァッ!!
「痛ぁぁぁぁっっ!!えっ?ええっ??」
「あっ、こらっ、優希を床に投げ出すなっ、翔也っっ」
「だって、コイツ、筋肉質だからもの凄く重いんだぜっ!!もう身がギッシリ詰まりきってる感じ?兄貴はいいよなっ、おんぶしてるのが順也でよぉっっ」
「オマエがジャンケンで負けたんだから仕方ないだろう?優希、悪かったな、大丈夫か?」
「あの・・・あっ、はい、大丈夫です」
「身が詰まってて嬉しいのはカニだけだぜっ!反省しろっ、このバカ優希っっ!!」
「えええっ?なっ何だか分からないですけれど、スミマセンッ!!!」
居間で寝たまま起きない自分を運んでくれようとしたらしい翔也に、離れに向かう途中の廊下で床に捨てられてしまい、西原は本当に体験した過去とも、単なる空想ともつかない夢の世界から、引き戻されてしまったのだった。
ランキング参加中!
ポチッ↓ありがとうございます♪大変励みになっています〜(^^)
そして、連続夢を見る事もそこで終わりで、その先何度眠りに落ちても、その先のことを夢に見たことはなかった。
だから、その先の自分の身に何が起きたのか、西原は良く知らない。
事実、6年前に母の遺体を見つけてしまった時も、渡り廊下で気を失った後に、次の記憶があるのは母の葬式も済み、父に連れられて東京に戻ってからだった。
それも劣化したモノクロビデオを見ている様な曖昧としたもので、本当に生きている人としての色彩のある記憶が戻るのは、生き生きと愛らしい順也の笑顔と出会えてからだった。
でも、今日は順也のフニフニ頬っぺたに救われて、何時ものところで絶叫しないで済んでしまった。
そのせいで、目を覚まさないまま眠り続け、その先の、自分ですら覚えていない、保養所での記憶を夢に見てしまう。
それが、本当の記憶に基づく夢なのか、勝手に作り出した嘘の映像なのか、記憶が無いので自分でも判断がつかない。
白い光の中で揺れる母の変わり果てた姿を見つけて気を失ったあと、次に目を醒ますと、そこはコテージの自分の部屋の、自分のベッドの上だった。
張り付いた様に思い目蓋を開けると、そこには白い天井を背景に自分を心配そうに覗き込む、看護婦の制服に身を包んだ海野と、今にも泣きそうな顔の総一郎と、出張に出掛けた筈のスーツ姿の宮田がいた。
「優希君っ、良かったっ!目を覚ましたのねっ!!」
「優希っ、心配したんだぞっっ、大丈夫かっ?」
「コラっ、二人とも大声を出さない、優希君が驚いているだろうっ、優希君、大丈夫?何処か痛まない?気分は?直ぐに宇間詰先生を呼ぶからね、そのまま寝ているんだよ」
三人は目を醒ました自分を見て、口々に気遣いの言葉を掛けてくれる。
そんな3人に向けて、何か言い返さなければと思うけれど、何故だか声が出てこない。
まるで心と身体を繋ぐ線が切れてしまった様に、ピクリともベッドに寝ている身体を動すことが出来なかった。
やがて、宮田が内科の宇間詰先生を呼びに部屋を出て行ってしまい、部屋の中には、自分と海野と総一郎の3人が残された。
「何も心配ないからな、俺がずっと一緒にいてやるから安心しろ」
「大丈夫よ、優希君、大丈夫よ」
海野と総一郎は、ベッドの両側に陣取り、それぞれ手をギュッと握ってくれて、引き続き励ましの声を掛けてくれる。
―――何が心配が無くて大丈夫なのだろう?
さっきから、皆がしきりにそう声を掛けてくれるけれど、一体何の事を言っているのかさっぱり分からない。
もの凄く大切なことを忘れている気がするけれど、それが何なのかまったく思い出せなかった。
でも、このままでは二人に悪い気がするので、ボンヤリと焦点の定まらない頭に神経を集中して返事を考えようとすると、途端に頭が鈍く痛み、胸を締め付ける様な吐き気に襲われた。
「うぅ・・・っ!」
「どっどうしたっ、優希っ!?」
「しっかりしてっ、優希君っ」
その苦しさに思わず寝ているベッドの上で丸まると、二人が慌てて様子を見ようと顔を寄せてきた。
―――カチャ・・・
その時、ベッドの足元の方にある、部屋の出入り口のドアが静かに開いた。
吐き気と頭痛でベッドの上で身悶えしながら、屈みこんでくる海野の向こうに垣間見えた視界の先には、薄く開いた扉の向こうに、見知ら少年がこちらを見て立っていた。
いや、見知らぬというのは間違いかもしれない。
見たことはないけれど、白い開襟のシャツと、涼しげな夏色のズボンを着たその少年は、髪型は少し違うけれど、まるで自分と同じ顔をしていた。
まるで鏡を見ている様な同じ顔の少年の、自分より更に色の薄い瞳と視線が絡んだ瞬間に・・・・
「いい加減にしろっ!!重いわぁっボケぇぇぇっっ!!!」
―――ドサーーーァッ!!
「痛ぁぁぁぁっっ!!えっ?ええっ??」
「あっ、こらっ、優希を床に投げ出すなっ、翔也っっ」
「だって、コイツ、筋肉質だからもの凄く重いんだぜっ!!もう身がギッシリ詰まりきってる感じ?兄貴はいいよなっ、おんぶしてるのが順也でよぉっっ」
「オマエがジャンケンで負けたんだから仕方ないだろう?優希、悪かったな、大丈夫か?」
「あの・・・あっ、はい、大丈夫です」
「身が詰まってて嬉しいのはカニだけだぜっ!反省しろっ、このバカ優希っっ!!」
「えええっ?なっ何だか分からないですけれど、スミマセンッ!!!」
居間で寝たまま起きない自分を運んでくれようとしたらしい翔也に、離れに向かう途中の廊下で床に捨てられてしまい、西原は本当に体験した過去とも、単なる空想ともつかない夢の世界から、引き戻されてしまったのだった。
ランキング参加中!
ポチッ↓ありがとうございます♪大変励みになっています〜(^^)





