西原が順也に『ちょっとだけ距離を置く』と言い、鳳家から自分のマンションに帰って3日。
待っても待っても順也からの『会いたい』と言ってくれる電話は無くて、只でさえ脆弱な西原の精神は、早くも本格的に壊れてしまおうとしていた。
あの本家を尋ねた日の朝に慌ててマンションを出てしまったせいで、きちんと片付いていない部屋の中のそこここに、順也の気配が残っている。
それを壊さないよう気をつけながら眠った最初晩。
自分が辛い以上に、きっと順也は辛くそしてもっと悲しい思いをしている。
西原は、そう自分を戒めて、順也が許してくれるのを何時までもじっと待つつもりだった。
そうしてもしこの先に順也から許して貰える時が来なくても、離れた場所からでも順也を見守って、その幸せを陰ながらでも守っていこうと思っていた。
それが、順也との約束を破ってしまった自分への、当然の報いだと思っていた。
でも、そう理性でがんじ絡めにした頭で考えても、心はと身体は聞こえない声でひっそりと、『順也に会いたい』と悲鳴を上げ続けていた。
マンションに帰って一日目は、何時順也に呼んで貰えてもいいようにと、西原は身なりを整えて、お土産に持って帰るお菓子をあれこれ作って待っていた。
二日目も、鳴らない電話を前に段々と不安な気持ちになっていたけれど、それでも順也に呼ばれた時の事を考えて、一日目と同じに過ごした。
三日目も大量に出来てしまったお菓子を前に多少困った気分だったけれど、これも自業自得の結果なのだしと首を振って、作るメニューを常温で日持ちしそうなもの切り替えて、また電話を待とうと思った。
でも、材料を取り出そうと冷蔵庫を開けたら、もうそこにもう卵も牛乳も無くて・・・
代わりに食べて貰える当てのないケーキやプリンがギュウギュウに詰めてあって・・・
こんな事をして待っていても順也は2度と自分を許してはくれないのかな?
ふっとそう考えた瞬間に、『許して貰えるまで、出来る事をして頑張らなければ』と張り詰めていた気持ちの糸がプツリと切れて、そのまま冷蔵庫を開けた姿勢で固まってしまった。
順也という愛しく輝かしい存在がそこにいなければ、西原の心はこの現実世界で形を保つ事すら難しい。
「・・・うっ・・・うぅ・・っ・・」
知らずに目から涙が溢れ、口から止め様のない嗚咽が漏れてくる。
3日間、悪いのは自分なのだからと誤魔化して、順也を失うという最悪の未来を考えないように過ごしてきたけれど、もうそれが西原の精神の限界だった。
―――ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・
そのまま、どれ位の時間がたったのか?
しつこい位になるインターホンの音で、西原は何も無い真っ白だった世界から、ふと現実に引き戻された。
外を見ると、冷蔵庫を開けた最後の記憶では朝だった筈なのにすっかり夜になっていて、冷蔵庫のドアは閉まっていたけれど、その前の床にボンヤリと座り込んでいる自分を発見した。
泣き過ぎたせいなのか顔も喉も耳も、そして腕や足もあちこちが熱を持ってだるい。
そして、昨日あたりからずっと重かった胃が、キリキリと焼け付くように痛んだ。
―――ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・
何時までも鳴り続けるインターホンの主が、もしかしたら順也かもしれない。
にわかに焦点を取り戻した頭でそう思いつき、大慌てで確認すると、モニターに写っていたのは何故だか三都葉と桜子の不思議な取り合わせの二人で、
「遅いですわ、三男の嫁のくせに、どうして電話にもでませんの?」
「何時まで待たせる気だ?三男の嫁のくせに、年長者を待たせるなっ」
「は・・?え・・?」
「もう10分もピンポンしているから、後ろでガードマンの方がガン見ですのよ、三男の嫁」
「警察を呼ばれる前に上げてくれないか?聞いて欲しい話があるんだ、三男の嫁」
「・・え?・・・・ええ?」
乗り出すように二人してモニターに向かい、なにやら必死に訴えてくる。
順也でないのなら、他の誰にも会いたくない。
夢から醒めたばかりみたいな、まだボンヤリとしていた頭の中で西原はそう考えていたけれど、何だか逆らうと恐い事が起こりそうな気配がヒシヒシと感じられたので、気付けば二人をマンションの部屋に上げてしまっていた。
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待っても待っても順也からの『会いたい』と言ってくれる電話は無くて、只でさえ脆弱な西原の精神は、早くも本格的に壊れてしまおうとしていた。
あの本家を尋ねた日の朝に慌ててマンションを出てしまったせいで、きちんと片付いていない部屋の中のそこここに、順也の気配が残っている。
それを壊さないよう気をつけながら眠った最初晩。
自分が辛い以上に、きっと順也は辛くそしてもっと悲しい思いをしている。
西原は、そう自分を戒めて、順也が許してくれるのを何時までもじっと待つつもりだった。
そうしてもしこの先に順也から許して貰える時が来なくても、離れた場所からでも順也を見守って、その幸せを陰ながらでも守っていこうと思っていた。
それが、順也との約束を破ってしまった自分への、当然の報いだと思っていた。
でも、そう理性でがんじ絡めにした頭で考えても、心はと身体は聞こえない声でひっそりと、『順也に会いたい』と悲鳴を上げ続けていた。
マンションに帰って一日目は、何時順也に呼んで貰えてもいいようにと、西原は身なりを整えて、お土産に持って帰るお菓子をあれこれ作って待っていた。
二日目も、鳴らない電話を前に段々と不安な気持ちになっていたけれど、それでも順也に呼ばれた時の事を考えて、一日目と同じに過ごした。
三日目も大量に出来てしまったお菓子を前に多少困った気分だったけれど、これも自業自得の結果なのだしと首を振って、作るメニューを常温で日持ちしそうなもの切り替えて、また電話を待とうと思った。
でも、材料を取り出そうと冷蔵庫を開けたら、もうそこにもう卵も牛乳も無くて・・・
代わりに食べて貰える当てのないケーキやプリンがギュウギュウに詰めてあって・・・
こんな事をして待っていても順也は2度と自分を許してはくれないのかな?
ふっとそう考えた瞬間に、『許して貰えるまで、出来る事をして頑張らなければ』と張り詰めていた気持ちの糸がプツリと切れて、そのまま冷蔵庫を開けた姿勢で固まってしまった。
順也という愛しく輝かしい存在がそこにいなければ、西原の心はこの現実世界で形を保つ事すら難しい。
「・・・うっ・・・うぅ・・っ・・」
知らずに目から涙が溢れ、口から止め様のない嗚咽が漏れてくる。
3日間、悪いのは自分なのだからと誤魔化して、順也を失うという最悪の未来を考えないように過ごしてきたけれど、もうそれが西原の精神の限界だった。
―――ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・
そのまま、どれ位の時間がたったのか?
しつこい位になるインターホンの音で、西原は何も無い真っ白だった世界から、ふと現実に引き戻された。
外を見ると、冷蔵庫を開けた最後の記憶では朝だった筈なのにすっかり夜になっていて、冷蔵庫のドアは閉まっていたけれど、その前の床にボンヤリと座り込んでいる自分を発見した。
泣き過ぎたせいなのか顔も喉も耳も、そして腕や足もあちこちが熱を持ってだるい。
そして、昨日あたりからずっと重かった胃が、キリキリと焼け付くように痛んだ。
―――ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポーン・・
何時までも鳴り続けるインターホンの主が、もしかしたら順也かもしれない。
にわかに焦点を取り戻した頭でそう思いつき、大慌てで確認すると、モニターに写っていたのは何故だか三都葉と桜子の不思議な取り合わせの二人で、
「遅いですわ、三男の嫁のくせに、どうして電話にもでませんの?」
「何時まで待たせる気だ?三男の嫁のくせに、年長者を待たせるなっ」
「は・・?え・・?」
「もう10分もピンポンしているから、後ろでガードマンの方がガン見ですのよ、三男の嫁」
「警察を呼ばれる前に上げてくれないか?聞いて欲しい話があるんだ、三男の嫁」
「・・え?・・・・ええ?」
乗り出すように二人してモニターに向かい、なにやら必死に訴えてくる。
順也でないのなら、他の誰にも会いたくない。
夢から醒めたばかりみたいな、まだボンヤリとしていた頭の中で西原はそう考えていたけれど、何だか逆らうと恐い事が起こりそうな気配がヒシヒシと感じられたので、気付けば二人をマンションの部屋に上げてしまっていた。
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