「順也・・俺だよ、入っていい?」
部屋に戻った順也の後を追って、西原は再び順也の部屋の前に立った。
そして、中からの返事を待つのももどかしく、襖に手を掛け横へつ開く。
また一人にしておいたら順也が何処かへ出て行ってしまうかもしれない。
そう思うと居ても立ってもいられなくて、西原は怒られるのを覚悟で順也の居る部屋に足を踏み入れた。
今度はちゃんと順也は部屋に居て、それを見て西原は一先ず安心する。
でも、お弁当の入ったコンビに袋を床に投げ出し、その姿はモソモソと布団の中に潜っていくところだった。
「西原は入って来ないでくれよなっ」
そして、中でクルリと丸くなっている事が分る布団の下から、そうくぐもった声がする。
―――ああ・・久しぶりに聞く順也の声だ
いきなり拒絶されてしまって勿論悲しいけれど、でも久々に順也が自分の名前を呼んでくれるのを聞いて、西原は泣きたい位に嬉しい気持ちになってしまった。
「うん・・・直ぐに出てくけれど、ちょっとだけ俺の話しを聞いてね」
西原は部屋に入って後ろ手に襖を閉めて、順也の形に盛り上がっている布団の脇に正座し、背筋を伸ばしてそう言う。
本当は手を伸ばして、薄い夏掛け布団の上からでも愛しい恋人の身体に触れたかったけれど、そうしても今の順也はきっと嬉しがってはくれないだろ。
だから、膝の上でキツク拳を握り締めて、その衝動を無理やりに飲み込んだ。
お腹が空いたからと言って、家を抜け出してコンビニでお弁当を買うなんて、しかも、そこからパトカーで連れ戻されるなんて、余りに順也らしくない行動。
これまで素直なばかりだったのに、機嫌が悪いを通り越して、性格自体が気難しくなってしまった様な末っ子に何と声を掛けていいか戸惑っているのか、母屋からは誰もこの部屋に様子を見に来ない。
ここにきても順也に一番受けが良いのは西原だと思っていて、取りあえずは西原にご機嫌を取って貰おうと思っているのかもしれない。
でも信用して貰えるのは嬉しいけれど、普段なら露知らず、今の西原にはかなり荷の重い期待だった。
「あのね、順也に謝りたい事があるから、ちょっとだけ顔を見せて欲しいけど駄目かな?」
西原の掛けた言葉に、しかし順也の形に盛り上がった布団からは何の返事も無い。
しかもそれはピクリとも動かなくて、掛けられた言葉に対する拒絶と怒りをありありと表していた。
しばらく待ってみたけれど、順也が布団から出てくる様子は無い。
「あ・・じゃあそのまま聞いてね、まずはゴメンネ、順也、俺は順也とあんなに約束したのに、鷹也さんに俺の身体に触らせたよね、順也との約束を破ってしまって、順也はずっとその事で怒っているんだよね、それに、約束を破った上にそんな事にも気付けなくて、順也に悲しい思いをさせて今まで本当にゴメンね」
なので、布団の中の順也にも聞こえる様に、西原は少しだけ声を大きくして、順也にそう謝った。
そして、一度正座をしている背筋を伸ばしてから、畳に手を付いて背中を倒し、額が床に着くまで深々と頭を下げた。
『許して貰えるまでエンドレスで土下座をしていらっしゃい!』
桜子にはそう言われたけれど、順也はあからさまに西原がこの部屋にいるのを嫌がっている様だった。
本当ならその言葉通りに許して貰えるまでこの場に居座り謝り続けたかったけれど、それで順也に嫌な思いをさせてしまうのでは、本末転倒だ。
「俺はこれからもうマンションに帰るね・・・もう順也がいいって言うまでもうこの家には近づかないよ、あっ、だからって俺が怒っていたり、順也を嫌いになったとか思わないでね、俺は順也の事が何時でも大好きだし、何があってもずっと順也のものだよ・・でもね・・、今は俺が傍にいると順也はイライラするでしょう?そういう気持ちは今の順也の身体に一番良くないと思うから・・だから、ちょっとだけ距離を置くよ、でも、呼んでくれたら直に帰ってくるからね」
自分がこの家にいるから、順也は家に帰りたがらなかった。
自分が作った晩御飯を食べたくないから、順也は体調が悪いのにコンビニにお弁当を買いに出掛けた。
心が潰れてしまいそうに辛い事だけれど、それが順也との約束を破ってしまった結果が導いた、今の現実なのだろう。
それを知ってしまった西原は、もうこの家にはいられないと思う。
ここは順也の家なのだ。
自分のせいで、順也の居場所がなくなるなんて、そんな事は絶対にあっていい筈がない。
話しかけて待っても、やっぱり布団の中の順也は動かない。
そのままでは暑いし、息も苦しいだろう。
西原は順也から何らかの返事を貰うのを諦めて、下げていた頭を上げて、座っている床から立ち上がった。
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そして、中からの返事を待つのももどかしく、襖に手を掛け横へつ開く。
また一人にしておいたら順也が何処かへ出て行ってしまうかもしれない。
そう思うと居ても立ってもいられなくて、西原は怒られるのを覚悟で順也の居る部屋に足を踏み入れた。
今度はちゃんと順也は部屋に居て、それを見て西原は一先ず安心する。
でも、お弁当の入ったコンビに袋を床に投げ出し、その姿はモソモソと布団の中に潜っていくところだった。
「西原は入って来ないでくれよなっ」
そして、中でクルリと丸くなっている事が分る布団の下から、そうくぐもった声がする。
―――ああ・・久しぶりに聞く順也の声だ
いきなり拒絶されてしまって勿論悲しいけれど、でも久々に順也が自分の名前を呼んでくれるのを聞いて、西原は泣きたい位に嬉しい気持ちになってしまった。
「うん・・・直ぐに出てくけれど、ちょっとだけ俺の話しを聞いてね」
西原は部屋に入って後ろ手に襖を閉めて、順也の形に盛り上がっている布団の脇に正座し、背筋を伸ばしてそう言う。
本当は手を伸ばして、薄い夏掛け布団の上からでも愛しい恋人の身体に触れたかったけれど、そうしても今の順也はきっと嬉しがってはくれないだろ。
だから、膝の上でキツク拳を握り締めて、その衝動を無理やりに飲み込んだ。
お腹が空いたからと言って、家を抜け出してコンビニでお弁当を買うなんて、しかも、そこからパトカーで連れ戻されるなんて、余りに順也らしくない行動。
これまで素直なばかりだったのに、機嫌が悪いを通り越して、性格自体が気難しくなってしまった様な末っ子に何と声を掛けていいか戸惑っているのか、母屋からは誰もこの部屋に様子を見に来ない。
ここにきても順也に一番受けが良いのは西原だと思っていて、取りあえずは西原にご機嫌を取って貰おうと思っているのかもしれない。
でも信用して貰えるのは嬉しいけれど、普段なら露知らず、今の西原にはかなり荷の重い期待だった。
「あのね、順也に謝りたい事があるから、ちょっとだけ顔を見せて欲しいけど駄目かな?」
西原の掛けた言葉に、しかし順也の形に盛り上がった布団からは何の返事も無い。
しかもそれはピクリとも動かなくて、掛けられた言葉に対する拒絶と怒りをありありと表していた。
しばらく待ってみたけれど、順也が布団から出てくる様子は無い。
「あ・・じゃあそのまま聞いてね、まずはゴメンネ、順也、俺は順也とあんなに約束したのに、鷹也さんに俺の身体に触らせたよね、順也との約束を破ってしまって、順也はずっとその事で怒っているんだよね、それに、約束を破った上にそんな事にも気付けなくて、順也に悲しい思いをさせて今まで本当にゴメンね」
なので、布団の中の順也にも聞こえる様に、西原は少しだけ声を大きくして、順也にそう謝った。
そして、一度正座をしている背筋を伸ばしてから、畳に手を付いて背中を倒し、額が床に着くまで深々と頭を下げた。
『許して貰えるまでエンドレスで土下座をしていらっしゃい!』
桜子にはそう言われたけれど、順也はあからさまに西原がこの部屋にいるのを嫌がっている様だった。
本当ならその言葉通りに許して貰えるまでこの場に居座り謝り続けたかったけれど、それで順也に嫌な思いをさせてしまうのでは、本末転倒だ。
「俺はこれからもうマンションに帰るね・・・もう順也がいいって言うまでもうこの家には近づかないよ、あっ、だからって俺が怒っていたり、順也を嫌いになったとか思わないでね、俺は順也の事が何時でも大好きだし、何があってもずっと順也のものだよ・・でもね・・、今は俺が傍にいると順也はイライラするでしょう?そういう気持ちは今の順也の身体に一番良くないと思うから・・だから、ちょっとだけ距離を置くよ、でも、呼んでくれたら直に帰ってくるからね」
自分がこの家にいるから、順也は家に帰りたがらなかった。
自分が作った晩御飯を食べたくないから、順也は体調が悪いのにコンビニにお弁当を買いに出掛けた。
心が潰れてしまいそうに辛い事だけれど、それが順也との約束を破ってしまった結果が導いた、今の現実なのだろう。
それを知ってしまった西原は、もうこの家にはいられないと思う。
ここは順也の家なのだ。
自分のせいで、順也の居場所がなくなるなんて、そんな事は絶対にあっていい筈がない。
話しかけて待っても、やっぱり布団の中の順也は動かない。
そのままでは暑いし、息も苦しいだろう。
西原は順也から何らかの返事を貰うのを諦めて、下げていた頭を上げて、座っている床から立ち上がった。
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