「俺もお父さんと同じなんだよ、自分の事はともかく、翔也や順也がこの世にいるのは御家元のお陰なんだと思うと、腹が立つ事があってもこの家や御家元の事を見限れないんだ・・でも、それで優希や桜子さんにまで心配を掛けてしまって凄く反省している、桜子さんの事では順也にも叱られてしまったし、これからは考えないとな」
史也の話が終わった頃に道場に呼ばれて、部屋から出ようとしたら、後ろに立つ智也がそう言った。
その智也の気持ちが西原には良く分った。
史也の話を聞いて西原が想像した事は、智也の言葉そのままに、もし家元が史也を助けてくれなかったらという事だった。
もし、過去がそうだったとしたら、順也はこの世に存在せずに、自分と順也は出会えていない。
魂の底から愛しいと思える順也という存在の居ない世界、その世界で生きなければならない自分。
それは余りにも殺伐とした心の凍りつきそうな情景で、西原は史也の聞かせてくれる昔話を聞きながら、知らずに身震いをしてしまった。
順也という存在を得られたから、自分は普通の人間の振りをして、明るい場所で生きていられる。
順也がそこにいればこそ、楽しい事をそのまま楽しいと感じて、感情のままに笑うことが出来た。
西原の心は、母親が目の前で自殺する場面を見た時に、手の付けようが無い程に壊れて千切れ千切れになってしまった。
それを元の形に戻してくれたのが順也の愛らしい笑顔で、もしその順也と出会えなければ、今頃はこの世の総てから見捨てられた、鷹也顔負けの廃人になっていたことだろう。
「素晴らしい出来だねぇ・・お人形さぁん・・いやぁ、順也の猿真似でも本当に良く出来てたぜぇ・・それでぇ・・お客さんからの次のリクエストだよぉ・・次は袴も脱いじゃってぇだとさぁ・・ひゃはははは・・・」
「はぁ・・はぁ・・・いえ・・そんな事を言っては・・」
上半身が裸のまま、二度目の演舞を終えた汗まみれの西原に、椅子から立ち上がりバチバチと手を叩く鷹也が、更に無茶な要求を突きつけてきた。
しかし、結構大人しく西原の演舞に見入っていた外国人達はそんな事は一言も言っていなくて、もう 立っているのも辛い疲労と上がる呼吸の中で反論しようとした。
でも、鷹也が怪訝な顔をしたので、途中で言葉を止める。
今ここで西原が総ての会話を理解している事を知られてしまうのは、色々な意味で利口な事ではない。
順也の為に、そして順也と自分の現在を救ってくれた家元の為に、鷹也の無理な要求を聞くことは、西原としては別に嫌では無かった。
それで、鷹也や阿呆でも間違いない犯罪者である外国人達が大人しくなって、この家と順也を脅かす危機を回避出来るのなら、どんな無茶なリクエストでも叶えてみせよと思う。
しかし、袴を脱いだ自分の姿を想像すると、恥ずかしくはないけれど情けない。
「脱いだら・・・パンツですけれど・・・」
まあ、そんな自分の感情は黙殺しても構わないけれど、でもやはり少しだけ悔しいので鷹也を睨みながらそう言うと、
「ひゃはははははは・・・最高だねぇ・・」
可笑しそうに笑った鷹也が近寄って来て、馴れ馴れしく肩に腕を回してきた。
「鷹也さんっ、もういいでしょうっ!」
「いいんですっ!やりますからっ!」
その様子を見ていた智也が、怒りの籠もった声を上げて駆け寄って来ようとする。
史也や家元達も顔を引き攣らせてこちらに向って来ようとしているけれど、西原はそれを声で制した。
確かに鷹也の要求は際限がないとは思うけれど、ここで跳ね付けてしまっては、何もかにもが台無しだ。
総ては自分が我慢すればいいことだし、それは大した苦労でもない。
男の自分を脱がせて何が楽しいのかは知らないけれど、お望みならパンツ一枚でも何にでもなる。
だけけれど、ブヨブヨとした気色の悪い手でベタベタ胸に触るのは止めて欲しい。
「馬鹿を言うんじゃないっ、優希!そんなマネは絶対に許さないぞ!」
「優希君っ、もう十分ですよっ!」
「史也と智也は煩ぇぞぉ・・・っ、オマエらが楽しそうにしていられるのは誰のお陰だよぉ?」
「鷹也さんっ!その話と優希は関係ありません!」
「ああ・・智也は良い子ちゃんでぇ本当に煩ぇ・・順也で、こいつで・・次はオマエの婚約者もぉこの格好にさせてやるぜぇえ・・・たぁのしみだなぁ・・ひゃははは・・」
「鷹也さんっ!あなたは昔からどうしてそうなんですかっ、俺が憎いなら俺に直接当ればいいでしょう?!」
「やぁだねぇ・・良い子ちゃんのオマエなんかを苛めてもつまらねぇ・・」
しかし、止めても智也は引いてくれず、それどころか我慢の限界と言わんばかりに、鷹也に食って掛かろうとする。
その様子に、見ているフランス人も、余り人相の良くない鷹也の取り巻き達も色めきたった。
にわかに、騒々しい気配に満ちる道場。
「智也さんっ、いいんですっ、俺のことは放っておいてくださいっ、俺はこんな事で少しも傷つきませんからっ」
庇おうとしてくれる智也の気持ちは嬉しいけれど、これでは何もかもが水泡に帰してしまう。
そう思い、慌てた西原が珍しく興奮する智也を止める為に、気味悪く纏わり付いてくる鷹也の手を振り払おうとした。
「西原ぁ・・・!」
その瞬間、いきなり居る筈の無い順也の声が飛び込んできて、振り返るとやはりそこには、毛布でグルグル巻きにした身体を翔也に抱き抱えられている順也の姿があった。
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その智也の気持ちが西原には良く分った。
史也の話を聞いて西原が想像した事は、智也の言葉そのままに、もし家元が史也を助けてくれなかったらという事だった。
もし、過去がそうだったとしたら、順也はこの世に存在せずに、自分と順也は出会えていない。
魂の底から愛しいと思える順也という存在の居ない世界、その世界で生きなければならない自分。
それは余りにも殺伐とした心の凍りつきそうな情景で、西原は史也の聞かせてくれる昔話を聞きながら、知らずに身震いをしてしまった。
順也という存在を得られたから、自分は普通の人間の振りをして、明るい場所で生きていられる。
順也がそこにいればこそ、楽しい事をそのまま楽しいと感じて、感情のままに笑うことが出来た。
西原の心は、母親が目の前で自殺する場面を見た時に、手の付けようが無い程に壊れて千切れ千切れになってしまった。
それを元の形に戻してくれたのが順也の愛らしい笑顔で、もしその順也と出会えなければ、今頃はこの世の総てから見捨てられた、鷹也顔負けの廃人になっていたことだろう。
「素晴らしい出来だねぇ・・お人形さぁん・・いやぁ、順也の猿真似でも本当に良く出来てたぜぇ・・それでぇ・・お客さんからの次のリクエストだよぉ・・次は袴も脱いじゃってぇだとさぁ・・ひゃはははは・・・」
「はぁ・・はぁ・・・いえ・・そんな事を言っては・・」
上半身が裸のまま、二度目の演舞を終えた汗まみれの西原に、椅子から立ち上がりバチバチと手を叩く鷹也が、更に無茶な要求を突きつけてきた。
しかし、結構大人しく西原の演舞に見入っていた外国人達はそんな事は一言も言っていなくて、もう 立っているのも辛い疲労と上がる呼吸の中で反論しようとした。
でも、鷹也が怪訝な顔をしたので、途中で言葉を止める。
今ここで西原が総ての会話を理解している事を知られてしまうのは、色々な意味で利口な事ではない。
順也の為に、そして順也と自分の現在を救ってくれた家元の為に、鷹也の無理な要求を聞くことは、西原としては別に嫌では無かった。
それで、鷹也や阿呆でも間違いない犯罪者である外国人達が大人しくなって、この家と順也を脅かす危機を回避出来るのなら、どんな無茶なリクエストでも叶えてみせよと思う。
しかし、袴を脱いだ自分の姿を想像すると、恥ずかしくはないけれど情けない。
「脱いだら・・・パンツですけれど・・・」
まあ、そんな自分の感情は黙殺しても構わないけれど、でもやはり少しだけ悔しいので鷹也を睨みながらそう言うと、
「ひゃはははははは・・・最高だねぇ・・」
可笑しそうに笑った鷹也が近寄って来て、馴れ馴れしく肩に腕を回してきた。
「鷹也さんっ、もういいでしょうっ!」
「いいんですっ!やりますからっ!」
その様子を見ていた智也が、怒りの籠もった声を上げて駆け寄って来ようとする。
史也や家元達も顔を引き攣らせてこちらに向って来ようとしているけれど、西原はそれを声で制した。
確かに鷹也の要求は際限がないとは思うけれど、ここで跳ね付けてしまっては、何もかにもが台無しだ。
総ては自分が我慢すればいいことだし、それは大した苦労でもない。
男の自分を脱がせて何が楽しいのかは知らないけれど、お望みならパンツ一枚でも何にでもなる。
だけけれど、ブヨブヨとした気色の悪い手でベタベタ胸に触るのは止めて欲しい。
「馬鹿を言うんじゃないっ、優希!そんなマネは絶対に許さないぞ!」
「優希君っ、もう十分ですよっ!」
「史也と智也は煩ぇぞぉ・・・っ、オマエらが楽しそうにしていられるのは誰のお陰だよぉ?」
「鷹也さんっ!その話と優希は関係ありません!」
「ああ・・智也は良い子ちゃんでぇ本当に煩ぇ・・順也で、こいつで・・次はオマエの婚約者もぉこの格好にさせてやるぜぇえ・・・たぁのしみだなぁ・・ひゃははは・・」
「鷹也さんっ!あなたは昔からどうしてそうなんですかっ、俺が憎いなら俺に直接当ればいいでしょう?!」
「やぁだねぇ・・良い子ちゃんのオマエなんかを苛めてもつまらねぇ・・」
しかし、止めても智也は引いてくれず、それどころか我慢の限界と言わんばかりに、鷹也に食って掛かろうとする。
その様子に、見ているフランス人も、余り人相の良くない鷹也の取り巻き達も色めきたった。
にわかに、騒々しい気配に満ちる道場。
「智也さんっ、いいんですっ、俺のことは放っておいてくださいっ、俺はこんな事で少しも傷つきませんからっ」
庇おうとしてくれる智也の気持ちは嬉しいけれど、これでは何もかもが水泡に帰してしまう。
そう思い、慌てた西原が珍しく興奮する智也を止める為に、気味悪く纏わり付いてくる鷹也の手を振り払おうとした。
「西原ぁ・・・!」
その瞬間、いきなり居る筈の無い順也の声が飛び込んできて、振り返るとやはりそこには、毛布でグルグル巻きにした身体を翔也に抱き抱えられている順也の姿があった。
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