上段に構えた剣を足を踏み出しながら斜めに振り下ろし、床に方膝をつく。
その体勢でゆっくりと剣の刃を返して、身体の反対側で下段に構え、振り下ろしたのと反対の方向に切り上げる。
次に付いた膝を持ち上げて立ち上がり、刀を正眼の構えに構え直す。
演舞を始めて15分。
そろそろ半分を過ぎる辺りまで来たあたりで、西原の全身は汗にまみれていた。
空調が効いている道場の中で、額から、首筋から、背中から汗が滴り、肌を伝って落ちていく。
刀を振る時意外はゆっくりとした動きが続く演舞は、見た目はそんなにハードな運動には見えないけれど、意外な程に体力を消耗する。
身体の芯がブレるのを許さない、振っている時意外に刀が揺れるのを許さない。
それをしっかりと守らなければ、傍から見た様子が非常に無様なものになってしまう。
複雑な動きの順番を間違う気はしない。
でも、全身の隅々までの筋肉を絶えず緊張させて、模造とはいえ真剣と同じ程に重みのあるそれを支え続けるのは、大人と変わらない体格の西原にでも大変なことだった。
それを、身体も小さく鍛えていても華奢な順也が見事にこなせるのは、やはりそこに『才能』という、持って生まれた特別なモノがあるからだろう。
「西原ぁ、何か刀の振り方が変だぞ」
「え?そうなの?どういう風に?」
「ん〜、何となく・・・もっと刀の言う事をちゃんと聞いてやらないと駄目だぞっ」
「刀の言う事?」
順也が練習しているのを横でマネしていたら、そう指摘された事があった。
何の事だか西原にはさっぱり分らなかったけれど、それを聞いた史也は「順也はちゃんと分かっているんですね」と言って、やたらにニコニコと嬉しそうにしていた。
順也には間違いなく輝く天賦の才能があり、それは西原を魅了して止まない。
そんな順也の代理なのだから、どれだけ疲れていようが何だろうが、みっともない真似は出来なくて、西原は握った刀が汗で滑り落ちそうになるのを、力を入れて握り直した。
相変わらず、蹴飛ばしてやりたくなるような勝手な無い事を、フランス人達は変なフランス語で話し続けている様だけれど、もう西原もそれに構っている余裕は無かった。
手から刀を取り落とさないように、無様に身体が揺れない様に、上がる息を無理に抑えながら演技を続けるのが精一杯だ。
後ろに立った史也達がハラハラした顔で見ているけれど、それに答える元気も残っていない。
同じ事をしても順也はここまで疲れていなかった筈なのに・・・・
もしかしたら才能うんぬん以前に、自分の鍛え方が足りないのだろうかとボンヤリする頭で反省しながら、西原は演舞の最後の一連の動きに入ろうとした。
始めた時と同じに、新古心流の基本の動きを一つづつ繰り返し、最後に礼をして、それで演舞は終了だ。
あと少し・・、そうすればもうこんな下らない奴等の相手をしないで、愛する順也の元に返ることが出来る。
そう思い、西原が最後の気力を振り絞ってまた剣を正眼の構えに構え直したその瞬間、
「ちょっーーと待った、お人形ぁさん・・・お客様からリクエストがあるそうだぁ・・」
「・・・リク・・エスト?」
「そう・・この邪魔な道着を脱いで、もう一度最初からやり直して欲しいそうだからぁ・・よろしくなぁ・・・・ひゃははは・・・」
鷹也が座っていたパイプ椅子からいきなり立ち上がり、フラリとこちらに寄って来て、着ている道着を引っ張りながら突拍子もない事を言ったので、西原は構えた刀はそのままに呆然としてしまった。
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次に付いた膝を持ち上げて立ち上がり、刀を正眼の構えに構え直す。
演舞を始めて15分。
そろそろ半分を過ぎる辺りまで来たあたりで、西原の全身は汗にまみれていた。
空調が効いている道場の中で、額から、首筋から、背中から汗が滴り、肌を伝って落ちていく。
刀を振る時意外はゆっくりとした動きが続く演舞は、見た目はそんなにハードな運動には見えないけれど、意外な程に体力を消耗する。
身体の芯がブレるのを許さない、振っている時意外に刀が揺れるのを許さない。
それをしっかりと守らなければ、傍から見た様子が非常に無様なものになってしまう。
複雑な動きの順番を間違う気はしない。
でも、全身の隅々までの筋肉を絶えず緊張させて、模造とはいえ真剣と同じ程に重みのあるそれを支え続けるのは、大人と変わらない体格の西原にでも大変なことだった。
それを、身体も小さく鍛えていても華奢な順也が見事にこなせるのは、やはりそこに『才能』という、持って生まれた特別なモノがあるからだろう。
「西原ぁ、何か刀の振り方が変だぞ」
「え?そうなの?どういう風に?」
「ん〜、何となく・・・もっと刀の言う事をちゃんと聞いてやらないと駄目だぞっ」
「刀の言う事?」
順也が練習しているのを横でマネしていたら、そう指摘された事があった。
何の事だか西原にはさっぱり分らなかったけれど、それを聞いた史也は「順也はちゃんと分かっているんですね」と言って、やたらにニコニコと嬉しそうにしていた。
順也には間違いなく輝く天賦の才能があり、それは西原を魅了して止まない。
そんな順也の代理なのだから、どれだけ疲れていようが何だろうが、みっともない真似は出来なくて、西原は握った刀が汗で滑り落ちそうになるのを、力を入れて握り直した。
相変わらず、蹴飛ばしてやりたくなるような勝手な無い事を、フランス人達は変なフランス語で話し続けている様だけれど、もう西原もそれに構っている余裕は無かった。
手から刀を取り落とさないように、無様に身体が揺れない様に、上がる息を無理に抑えながら演技を続けるのが精一杯だ。
後ろに立った史也達がハラハラした顔で見ているけれど、それに答える元気も残っていない。
同じ事をしても順也はここまで疲れていなかった筈なのに・・・・
もしかしたら才能うんぬん以前に、自分の鍛え方が足りないのだろうかとボンヤリする頭で反省しながら、西原は演舞の最後の一連の動きに入ろうとした。
始めた時と同じに、新古心流の基本の動きを一つづつ繰り返し、最後に礼をして、それで演舞は終了だ。
あと少し・・、そうすればもうこんな下らない奴等の相手をしないで、愛する順也の元に返ることが出来る。
そう思い、西原が最後の気力を振り絞ってまた剣を正眼の構えに構え直したその瞬間、
「ちょっーーと待った、お人形ぁさん・・・お客様からリクエストがあるそうだぁ・・」
「・・・リク・・エスト?」
「そう・・この邪魔な道着を脱いで、もう一度最初からやり直して欲しいそうだからぁ・・よろしくなぁ・・・・ひゃははは・・・」
鷹也が座っていたパイプ椅子からいきなり立ち上がり、フラリとこちらに寄って来て、着ている道着を引っ張りながら突拍子もない事を言ったので、西原は構えた刀はそのままに呆然としてしまった。
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