西原&順也くんシリーズのブログです。 <登場人物> 西原 優希(さいばら ゆうき)日仏クォーター、才色兼備な中学2年の14歳。幼馴染の順也が大好き。 /鳳 順也(おおとり じゅんや)ちょっと小さいけれど、剣道チャンピオンのやっぱり14歳。綺麗で優しい西原が大好き。
場所・・・大公爵邸客間
登場人物・・・大公爵の息子 西原優希
        隣国の王女 フローリア




「え・・・と、フローリア姫、何ですか?この身体に超悪そうな青緑、見ようによってはドドメ色掛かった紫の液体は?」
「ホホホ・・・優希様、これ我が王家に伝わる『秘伝健康ドリンク』、我が王家では、親しい方とお別れする時には、これを酌み交わして、お互いのこれからの健康をお祈りするのですわ」
「はぁ・・そうですか・・・で、私にこれを飲めとおっしゃるんですね」
「ご心配無く、優希様だけでなくフローリアも飲みますわっ、あの花嫁選びの舞踏会で優希様に5メートル程投げ飛ばされて・・・」
「うっ!その節はすみませんでした」
「おほほほっ、謝らなくてよろしいんですのよっ、優希様っ、このフローリアは女神の様に心の広い女、まったく気にしていませんわっ」
「ほ、本当ですか?こめかみが物凄い勢いでピクピクしていらっしゃいますけれど・・」
「おほほほっ!それは優希様の気の迷いっっ、とにかくっっ、5メートル投げ飛ばされて目が覚めましたの、優希様に本当にお似合いなのは順也様で、フローリアは身を引くべきだとっ、でも、優希様をお慕いしている気持ちは今も変わらないので、せめて、この『秘伝健康ドリンク』で、優希様のこれからの健康と幸せをお祈りしたいのですわっっ!」
「フローリア姫・・・」
「優希様の前から消えるフローリアの最後のお願いですわっ!どうかこの『秘伝健康ドリンク』をフローリアと飲み交わしてくださいませっ!」
「わっ!わかりましたっ!!飲みますっ、飲みますからっ、そんなに顔を近づけないで下さいっっっ!!」


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2008.08.19(20:49)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
 何処を触れても敏感な順也の肌は、西原の愛撫に総てに反応を示す。
 健康的な、でも雪のように白い首筋に西原が舌をそっと這わせると、
「ん・・・んぁっ・・・」
声を出さないと約束した筈の順也は、また蕩けそうな甘い声を出した。
「もうっ、順也っ、お願いだから声を出さないでっ」
「ん・・だって・・・あんっ・・西原ぁ・・!」
「え?今は何もしてないよっ、お願いだからっ、順也ぁっ」 
 西原が身動きし、重ねた身体が擦れ合うだけで声を上げる順也は、そりゃ可愛くて仕方が無いし、実際にはそこまで大声では無いのかもしれない。
 でも、その可愛い声を万を一でも隣で寝ている智也達に聞かれてしまったらどうしよう?
 そう考えると気が気ではなくて、せっかくの目の前の順也にも、西原は集中する事が出来なかった。

「隣の部屋に聞こえたから困るからね、続けるけど絶対静かにしててねっ」
「んっ・・・わかったぞ・・」
 しかし、夜も遅いし、ここで止めるのは絶対に順也が許してくれないので、順也にもう一度厳重注意を与えてから、行為を進める事にする。
 吸い付くように肌理の細い、ほのかなピンクに色づいた順也の肌。
 何時触れてもウットリとさせられる絹の様に滑らかな肌の上を、唇を這わせ指先を移動させると、
「く・・・ふぅ・・・ぁ・・・・ん・・」
 西原の注意を守って、順也は幼さの残る身体を切なそうに捩らせながらも、声を抑えようとしてくれる。 でも、何時の間にか硬く芯を持っていた愛らしい胸の突起を西原が指で摘み上げると、
「ふぁ・・・ぁぁぁっ、さいばらぁっ」
「もうっ、順也っ、しぃぃぃっ!」
 順也は枕に埋めた頭を切なそうにフルフルと振りながら、これまでにない大きな声を上げるのだった。

 AM4:45分
 日の出を寸前に控えた白い空が見える薄暗いキッチンで、西原はグッタリと椅子に凭れて座っていた。
 結局、あの後、順也は自分で声を押さえられなくて、その代わりにずっと西原が順也の口を手で押さえながら事を進めたのだ。
 声が漏れたら困るので、快楽で歪む小さな顔の下半分を手で覆い、何時もの様に元気な反応が床に響いたらいけないので、身動きが出来ないように華奢な身体に体重を掛けてベッドに押し付けた。
「・・ふぅっ・・・さ・・・っ・・・ふぅ・・っ・・」
 そして西原はベッドが軋んだ音を出さないように、順也の脚の間に割り込ませた腰を、抉る様にゆっくり大きく動かした。
 大きく脚を開き、西原自身を受け入れている順也は、そんな西原の動きに合わせるように、深く大きな呼吸を繰り返し、そして快楽に耐える為かキツク目を閉じた瞳から、ポロポロと大粒の涙を流し続けた。
「西原ぁ・・・もう一回してくれよな・・」
「えっ、でも順也、明日も学校だし、もう寝よう?」
「んんっ、ヤダぞっ、西原はもっと俺としたくないのかっ?」
「そりゃしたいけど・・でもね、」
「んんっ!!!!じゃあ、してくれよなっ!してくれよなっ!」
「わぁ!静かにしてっ、するっ、しますっっ!」
 その順也が余りにも色っぽくて、更なるおねだりを断われなかった西原は、終わってみれば請われるままに、順也の中に3度も欲望を放ってしまったのだった。

 総てが終わったのが夜中の4時も近い時間で、西原は満足そうに寝てしまった順也の身体を拭いから、パジャマを着させた。
 それも、寝ている他の人達に気付かれないようにこそこそ行ったのではかどらず、やっと終わったのがついさっきだった。
 その後、自分も汗を流す為にシャワーを浴びて、フラフラとこのキッチンへやってきたのだ。
「ふぁ・・・ぁ・・・何かもの凄く疲れた・・・」
 順也とのエッチ出来るのは、何時も通りにこれ以上は無い位に気持ちよく、最高に幸せな事だった。
 だけれど、ずっと順也の口を手で押さえながら、しかも隣の部屋の気配をずっと気にし通しだったので、激しく気疲れしたのも確かだ。
「はぁ・・それなのに、何で俺は3回もしちゃっあかなぁ・・」
 せめて、一度で止めておけば、ここまでヘトヘトにはなあなかっただろう。
 西原は徐々に明るくなっていくキッチンの椅子に座り、順也のおねだりを断われなかった自分の意思の弱さを呪いながら、しばらくボーーーッとしてしまうのだった。

「もう朝ご飯の支度をしちゃおう・・・」
 少し寝ようかと考えた西原だったけれど、ボケーーーッとしているうちに5時も回ってしまったので、もうこのまま起きて朝食の準備を始めてしまうことにした。
 結局一睡も出来なかったけれど、今日は土曜日だし何とかなるだろう。
 朝食はお客様の為にちょっと豪華にしたいなと考えていたので、少し早めに準備を始めようと昨日から決めていたのだけれど、それとは別に西原にはある企みがあった。
 きっと呼ぶまで起きてこない順也と、呼べば早々に起きてくるだろう他の家族。
 その二組の朝食を別々にして、今朝だけは全員揃って朝食の席を囲むのを阻止しようと、西原は寝不足の頭で考えていたのだった。



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2008.08.19(15:28)| future progressive formコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「なぁ西原ぁ、次のエッチは何時だ?」
「えっと・・、そうだね、次に俺のマンションに行ったらだけど、次の日に学校がある日は無理だし、今度の日曜日は練習試合だし、なかなか行けそうに無いね、行けるとしたらその次の土曜日かな?」
「んんんっ!つまんないぞっ!!そんなに待ちたくないぞっ」
「うん、俺も凄くつまんないけど、次にマンションに泊まれる時まで待っててね」

 ああ、そんな約束したなぁ・・・
 部屋に入って来たけれど、入り口に立ったまま動かない西原に痺れを切らしたように、順也は抱きしめていた枕を投げ捨ててベッドを下り、西原の胸に抱きついてきた。
 生まれたままの姿の順也を条件反射で抱きしめながら、西原は始業式の日、このマンションから家に帰りたがらない順也を宥める為に、約束した事を思い出す。
 勿論、西原だって順也とそういう事をしたいのは同じ気持ちなので、言った言葉に嘘は無い。
 そして確かに、今日は『次にマンションに泊まれる日』だった。
 しかし、それはあくまでも二人きりでという条件の下での事であって、順也の家族全員が、同じマンションの中にいる今の事では絶対に無い。
 その日が今日だなんて考えは、今の今まで西原の頭の中にはまったく無かった。
 でも、順也はあくまでそれは今日だと思っている様で、こんな時間まで起きて、しかもベッドの上で服まで脱いで、準備万端で待っていたのだ。
 約束の日は今日っ!と決めて疑っていない順也に、西原は何と言っていいか途方に暮れてしまう。
 『どう考えても、皆が一緒に泊まりに来ている今日は違う』と言うのが正論で、それで納得して貰えれば一番なのだけれど、
「西原ぁ、早くぅ」
「え・・あ、そうだね・・あはは・・・」
「今日はなっ、西原が好きなふうにしていいぞっ」
 ここまでその気になっている順也を説得するのは、これまでの経験から言って、かなり困難だと分かっていた。 

 悩んだ結果、期待に満ちた眼差しに勝てる気がしなくて、西原は順也を説得するのはさっさと諦めて、自分も服を脱ぎ裸の順也をベッドの上に組み敷いた。
 もう夜中の2時近い時間。
 土曜日とは言え明日も朝から学校なので、マゴマゴしている時間は無い。
「大きな声を出さないでね」
 隣の空いている寝室には、ベッドに翔也と敷いた布団に智也、それから離れているけれど、ツインのベッドが置いてある父親の寝室には、史也と小枝子が眠っている。
 多分もう眠ってしまっている筈だけれど、万が一にもその人達に気付かれてしまわない様に、西原は順也の身体に触れる前にそう注意をする。
「んっ!分かったぞっっ」
 言われた順也は、大きく頷いて笑顔で良い返事をしたけれど、
「あぁぁ・・・んっ・・!」
「わぁっ!順也っ、しーーーーっ!」
 西原がまだ柔らかいままの淡いピンクの乳首にチュッとキスを落とした途端に、いきなりまったく堪えない愛らしい喘ぎ声を上げるので、西原は大いに慌ててしまったのだった。


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2008.08.18(09:09)| future progressive formコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大公爵邸サンルーム
登場人物・・・大公爵の息子 西原優希
        海の国の第1王子 順也(今は人間)
        海の国の第2王子 翔也(今は人間)
        優希の母
        召使 ケント




「優希ぃ、まだ立ってないと駄目なのか?」
「うん、もう少しだけ我慢しててね、順也・・・あっ、次、そっちのレースと、赤い宝石の付いた冠を見せて」
「はい、優希様、こちらは遥か東方の国から届きました最高級の手編みレースと、最高品質の紅竜石の冠でございます」
「ああ、これも綺麗でいいね、順也、ちょっと被って見て」
「んん・・また被るのか?さっきからどれも一緒だぞ?なぁ、翔也兄さん?」
「俺もそう思うね、順也の言うとおりどれも一緒だ、優希のオフクロさんもそう思うだろう?」
「ホホホ・・・そうねぇ、流石にこれだけ数があると、どれも同じに見えてくるわねぇ」
「違いますよッ!皆揃って何を言っているんですかっ?どれも全部順也の可愛く見え方が微妙に違っています!!」
「んん?そうなのか?」
「本当かよ?」
「そうなのかしら?」
「そうですっ!!そうに決まっていますっっ!!一生に一度の俺と順也の結婚式の為の衣装で、順也の御両親と、お兄さんとお姉さんも出席して下さることになったんだからっ、順也が一番可愛く見えるのを探さないとっっ!だから順也っ、お願いだからもう少し我慢していてっ!」
「んんん・・・じゃあ、我慢するぞ・・」
「それからっ、お母さんと、翔也さんは、申し訳ないですけれど黙っててっ、邪魔するんなら向うでお茶でも飲んでて下さいっ」
「何だとっ!?義理の弟のくせに生意気だぞっ!!!はぁ、何で親父とお袋は帰ってきていきかり、こんな奴との結婚に賛成しちまったんだ?調子に乗って手が付けられねぇじゃかっ!」
「あらあら、本当に一生懸命ね、優希さん、何だか性格が変わってしまっているわよ」
「当然ですっ!結婚を快く許してくれたお義父さんと、お義母さんの信頼に応えられるように、もう最高の結婚式と、最高の可愛い順也にしてみせますからっっ!」
「はは・・うぜぇ・・」
「ほほ・・本当ね・・」
「何とでも言ってくださいっ!次、そっちのレースと冠っ!!」
「あの、優希様、ちょっといいですか?」
「何っ?ケントっ!!まさかオマエまで俺の邪魔をするのっ?」
「いえっ、そうではありませんっっ、あのっ、優希様にお客様がいらっしゃっています」
「お客?今日は忙しいから誰にも会わないって言わなかった?」
「はい・・・そうお伝えしたんですけれど、でもお客様というのが、あのフローリア姫様で・・・」
「えっ?またフローリア姫?」
「はい、それで、何が何でも優希様に会わせろと、玄関の前で門番と大喧嘩なさっています」


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2008.08.17(17:29)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
 進路調査票のプリントに書くことは出来ないけれど、西原が将来になりたい一番の職業は、『鳳家の三男順也の嫁』だった。
 順也と、順也が大好きな順也の家族の事だけを考えて、皆の面倒を見て、たまに少し感謝されながら生きていく。
 自分は男なのでまさか専業主婦にはなれないだろうし、順也の為に何か出来る職業に付くことは嫌では無い。
 だけれど、順也の面倒を見て、順也の為に料理や掃除をしている時が一番幸せなので、もしそうなれたら最高だろうなとずっと思っていた。
 今晩、順也の家の水道が使用不能になったせいで、にわかにその夢が俄かに叶ってしまい、西原は最高に幸せな気分の中にいた。

「足りないものがあったら何でも言ってくださいねっ!」
 AM12:45。
 自分のマンションで何時ものエプロンを掛けて、西原は張り切っていた。
 順也の家の水漏れはもう夜も遅いのでどうにもならず、明日の朝に業者に連絡することになったのだ。
 なので、当然、順也の家では水も明日の朝まで出ないので、お風呂も、トイレも、台所も使えない。
 短い間なので我慢すればいいいう話もあったのだが、夏の夜に台所を掃除してみんな汗をかいていたので、車で5分の西原のマンションへ、お風呂を使うついでに、全員で一晩避難することになったのだ。
 桜子は自宅へ帰ってしまったので、残りの自分と順也と、順也の両親と、智也と翔也。
風呂の用意を急いでしてから、次に空いているベッドとお客様様の布団を引っ張り出し全員の寝床の準備をし、更に掃除をしてお腹が空いているといけないので、夜食も焼きウドンを作ってみた。
大好きな順也とその家族の為に何かをする事が出来る。
こんなに嬉しい事は無くて、西原のテンションは夜中にも関わらず最高潮に上がってしまう。
「んんっ!焼きうどん美味しいぞっ!」
「うん、沢山食べてね、順也っ」
「本当に今日は助かったわ、ありがとう、優希ちゃん」
「こんな夜にご迷惑掛けてすみませんでした、優希君」
「おかげで気持ちよく眠れるよ、ありがとうな、優希」
「そんなっ、何時も俺がお世話になってるんですから、お礼なんて止めてくださいっ」
「明日の朝飯は和食が食いたいから準備しておけよっ」
「はいっ、翔也さんっ」
 西原が張り切った甲斐あって、夜食を食べ終わって、全員が笑顔でそれぞれの寝床に引っ込んでいった。

 ああ・・将来、順也と結婚した後には、本当にこんな生活だったらいいなぁ
 PM1:45分。
 明日の朝は、また早起きして、皆の朝食の準備をしなければいけない。
 自分もシャワーを軽く浴びて、軽く朝食の下ごしらえをして、西原は夢見心地の幸せな気分に浸ったまま、そろそろ寝ようと寝室のドアに手を掛けた。
『俺は西原の部屋で寝るぞっ』
 そう宣言していた順也が先に眠っている筈なので、起こしてしまわない様にそっとドアを開けたのだけれど、しかし、部屋の中には何故か照明が明々とついたままになっていた。
 順也ったら付けっぱなしで寝ちゃったのかな?
 そう思ってベッドの上を見ると、しかし、そこには全然寝ていない、しかも何故だか一糸纏わぬ姿の順也が、枕を抱きしめた可愛いポーズで、チョコンと座っていた。
(わぁぁっ!!何してるのッ!?順也っっ)
 いきなり目に飛び込んで来た思わぬ光景にそう叫びたくなったのを、順也の家族が泊まっているのを思い出し、西原は寸前で飲み込む。
 そのせいで変なふうに空気を吸い込んでしまい、むせ返りたいのにそれも出来なくて、呼吸困難で本気で死にそうになった。
 しかし、そんな西原の決死の努力なんか露知らない顔で、順也は入って来た西原の姿を見るなりちょっと不満そうに唇を尖らせて、
「遅いぞ、西原ぁ、何してたんだ?俺、待ってて眠くなっちゃいそうだったぞっ」
 甘えた愛らしい声でそう言った。


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2008.08.17(12:28)| future progressive formコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・フローリアの部屋
登場人物・・・フローリア 隣国の王女 
        オババ 魔女



「フローリア様、この秘薬を何とかして優希様に飲ませてください」
「まぁ、オババ、その身体に超悪そうな青緑、見ようによってはドドメ色掛かった紫の液体は一体何?」
「これはこのオババが作りました『操り人形の秘薬』、これを飲むと、飲んだ人間はそれから3分間、このオババの言いなり、つまりは操り人形になります」
「まぁっ!3分間っっ、じゃあ、これを優希様に飲ませて、その間にこのフローリアと優希様は濃厚なキッスをし放題ということかしらっ?!」
「いえ、フローリア様、これはそういう使い道でお渡しするのではありません」
「じゃあ、優希様の服を脱がせて、3分の間は触りたい放題?」
「いえ、それとも違います」
「じゃあ、3分なんて短い時間の間に、何をすればいいのかしら?」
「ヒャヒャヒャ・・・それはこれからこのオババが言う通りにお動き下さい、そうすれば、優希様の傍から、あの禍々しい人魚の少年を消し去る事が出来ます、あの少年さえ居なくなれば、優希様の心はいずれ間違いなくフローリア様のものになるでしょう」
「まぁ!それは本当なのっ?凄いわっ、オババっ、本当にそうなったなら、お礼に何でも差し上げてよっ!!」
「ヒャヒャ・・・フローリア様からのお礼は特にいりません、でも、その代わりと言っては何ですが、あの人魚の少年の兄、あの者も人魚ですので、その兄の身柄は私にお任せください」
「兄?ああ、そう言えば傍に居たわね、優希様程ではないけれど、結構ハンサムでかっこ良かったわ、でも、あの者を捕まえてオババはどうするつうもりなの?」
「ヒャヒャヒャ・・それはこのオババの企業秘密で・・・」
「何よ、気になるわね、教えなさいよ・・・はっ、まさかオババも年甲斐も無く兄人魚に、濃厚なキッスをするつもりなのかしらっ?」
「そうではございません・・・」
「じゃあ、服を脱がせてお触りし放題っっ?そんなカサカサなのにまだまだ若いわねっ!オババっっ!!」
「違いますっ!!フローリア様とご一緒になさいますなっ!!人魚の身体は総て貴重な魔術の素材になるのでございます、あの兄は、捕まえて、バラバラにして、乾燥させて、新たな秘薬を作る材料にするのでございますっ」


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2008.08.16(22:24)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「都・立・・両・・・生・・高校」
「順也っ、全然漢字が違ってるよっ、それじゃあカエルの学校みたいだよっ」
「アホゥ!『綾西高校』だっ!校名くらい書ける様になってから志望しろっ!」
「んんっ!痛いぞっ、翔也兄さんがブッたぞっ!西原ぁっ」
「あはは・・翔也さん、これ以上漢字を忘れると困るので、止めてください」
 まぁ、まだ一年以上先にある受験を考えるのは早いという事で、今日の家族会議はお開きになった。
 進路調査票は、順也が気に入って譲らないので、智也と翔也の出た都立高校を書くことに決まり、西原もそれに習って同じ事を書くことにした。

―――ピチャン・・・・
 天井から落ちた雫が、湯船に落ちて小さな音を立てる。
 鳳家お風呂名物、『雫爆弾』。
 築40年の建物が古いせいか、お風呂の天井で湯気が結露して、ところかまわずやたらに雫が落ちてくる。
 別に大した被害ではないのだが、気を抜いている時に、うなじなんかに冷たいのが落ちてくると、結構ビックリする。
 高校かぁ、考えたこと無かったなぁ・・・
 目の前に落ちた雫が、ささやかな波紋を作る湯船につかりながら、西原はいきなり現実的な話になった、自分の進学について考えた。
 高校に進学する。
 順也にも言った通り、それは余りに当然のことで、そしてまだ先の事だと思っていたので、これまで真剣に考えてみたことも無かった。
 それに、進学する先は順也と一緒と無意識に決めていたので、自主的にいきたい高校を想像するようなこともまったく無かった。
 しかし、それを考える時期になった今、順也の将来にも関係する大切なことなのだし、順也が行く先に自分も行くなんて、丸投げな気持ちのままでいい筈が無い。
『何か、将来になりたい職業があれば、それに向けて有利な進学先を見つける事も出来るからな、何かあったら相談してこいよ』
 進路希望のプリントを配った後に、担任の羽田はそう言っていたけれど、西原の将来は順也の傍に居る事なので、具体的になりたい職業がある訳ではない。
 順也の傍に居て、順也の為になるような、そんな職業につきたいと思うばかりだ。
 しかし、順也の将来はと考えると、順也に何かなりたい職業があるという話しは、聞いて事が無かった。
 あれだけの才能があるのだから、剣道から離れた未来は考えられない気はするけれど、じゃあそれを活かせる職業と考えると、『学校の先生をしながら部活の顧問』とか、『この家で道場を開く』とか、そんな事しか思い浮かばない。
 後は、本家の『新古心流』を継いで家元になるという選択師もあるのかもしれないけれど、順也は本家ではあんな酷い目に遭ったばかりだし、それを目標に据えるというのも気が進まない。
――――家元になった順也の秘書になれれば最高だったんだけれどなぁ・・・
 いざ、考えてみると、大切な事のはずなに酷く曖昧模糊としていて、順也の未来の事なのにこのままではいけないと、西原は気を引き締める。

「うぇ・・・ちょっと浸かり過ぎた」
 考え事をしていたらすっかり長風呂をしてしまい、ちょっとのぼせながら西原は脱衣所で身体を拭いていた。
 水が飲みたいと思い、もう水道水でもいいやと洗面所の蛇口を捻ると、
―――キューー・・・・・ポタタタ・・・・
 しかし、空気の抜ける様な情けない奇妙な音が聞こえるばかりで、水はテキテキとしか出てこない。
「あれ?」
 断水なんてあるのかなぁ?
 水が止まるような話は聞いていなかったので、「まさか壊れた?」と焦った西原が蛇口を覗き込もうとした瞬間、
「キャーーーーーーーッ!!!!」
「んんっ!!!!西原っっ!!西原ぁぁぁーーーーーー!!!!」
 絹を裂くような桜子の悲鳴と、それと一緒に自分の名前を呼ぶ順也の切羽詰った叫び声が、台所の方から聞こえて来た。

 一体、二人に何が起きたのか?
「順也っ!桜子さんっ!!どうしたのっ!?」
 裸だったので取りあえずバスタオルを腰に巻いて、西原が慌てて台所に駆けつけると、そこは大惨事になっていた。
 流し台の蛇口から、流し台では無く天井に向けて水が景気のいい噴水のように激しく噴き上げていて、順也と桜子がその水をモロに被って水浸しになりながら、何とか吹き上げる水を止めようと四苦八苦していた。
「西原ぁぁ!!!!これが取れたぁぁ!!!」
 西原が飛び込んで来たのを見て、順也が手にした水道の蛇口の取っ手を見せてくれる。
「順也ちゃんっっ!!!それを桜子お姉さんに返してっっ、もう一度嵌めてみるからっ」
「いいですっ!桜子さんっ、俺がやりますっっ、順也っ、それちょうだいっっ!!」
 しかし、もう部品が朽ちているらしく蛇口は元に戻らず、騒ぎに驚き直ぐに駆けつけてきた、他の家族達が庭にある水道の元栓を止めて、やっと噴水が収まった。
「んんんっ!俺はカルピス飲んだコップを洗おうとしただけだぞっ!」
「いきなりでビックリしましたわ」
 ずぶ濡れの二人の話だと、二人で台所でカルピスを飲みながら漢字の勉強の話をした後、コップを洗おうと蛇口を捻ったら、取っ手が取れて水が吹き出たらしい。

「桜子さんと順也ちゃんをこんなに驚かせて、だから、早く修理してくださいねってお願いしていましたでしょう?」
 この頃、台所の蛇口は、いくらきつく閉めても水が上手く止まらず、小枝子はその修理を、史也、智也、翔也の男性グループに依頼していた。
「あっ、でもですね、お母さん、この頃その・・・」
「色々、忙しかったからなぁ・・なぁ、兄貴?」
「あっ、ああ、そうだな、なぁ?優希?」
「えっ?えっと・・・俺は・・はいっ、俺がやれば良かったですねっ、すみませんっ、お母さんっ」
「あらっ、優希ちゃんは良いのよっ!私は、お父さんとお兄ちゃん達にお願いしていたんですからっ!」
 機嫌の悪い小枝子にビクビクしながら、全員総出で水浸しの台所を夜遅くまで掛けて掃除した。
お風呂の『雫爆弾』もそうだけれど、築40年のこん家は、色々と不備な点が目立ち始めている。
「そろそろこの家も建て替えですかねぇ・・」
 日付が変わる頃になり、やっと掃除が終わった台所を後にする時に、史也が西原の後ろでポツリとそう呟いた。


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2008.08.16(10:08)| future progressive formコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「志望の学校を第三志望まで書いてください。理由があればそれも一緒に書いてください。ご家族の方と相談しても・か・・こ・・ん?西原ぁ?」
「構いませんだよ、順也」
「んっ、かまいません。内容は次の保護者面談で保護者の方とお話しする時の参考にします。なお、就職を希望している場合は、希望するしょしゅす?」
「職種だよ」
「しょくしゅを書いてください。提出期限、9月7日(月)・・・だぞっ!」
 学校から貰って来た『進路希望調査』のプリント。
 史也、小枝子、智也、翔也、桜子、そして西原。
 全員が揃った夕食の後の団欒の席でそれを順也が読み上げるのを聞いて、皆の顔が微妙に引き攣った。
 順也は3人兄弟の歳の離れた末っ子で、剣道一家のこの家でも特に剣道の才能に溢れていて、しかも可愛い甘えん坊で、言わばこの家のアイドルだった。
 皆が手放しで甘やかすのでちょっと家の中での順也は我侭だけれど、誰もそんな事は気にしない。
 むしろ、順也に甘えられ我侭を言われるのを、西原も含め皆が喜ぶ傾向にあったりする。
 なので、順也が何をしようが、大概の事では誰もが笑っているのだが、今回だけはそうも言っていられなかった。
 中学2年の2学期に、学校で配られたプリントを読むのに2度もつっかえている様では、話題が進学問題なだけに、全員が一抹の不安を感じて、さっきまで和やかだったお茶の間の空気がにわかに緊張してしまう。
「順也は剣道もいいけれど、少し本も読んだ方がいいな、後で智也兄さんの部屋においで、面白そうな本を見繕ってあげるから」
「大丈夫よ、順也ちゃん、まだ受験までは時間があるわ、これから夜は桜子お姉さんと一緒に、漢字のお勉強をしましょうか?」
「漢字だけじゃなくて順也の場合は数学もだろう?しょうがねぇ、暇な時は面倒見てやるよ」
「そう言えば、順也が本を読んでいる姿はついぞ見たことが無いですねぇ、ねえ、お母さん」
「順也ちゃんは昔から絵本にも余り興味が無かったのよ」
 しかし、にわかに明らかになった末っ子の微妙な学力を口々に心配する家族を他所に、話題の中心の順也はいたってマイペースだ。
「ん?西原ぁ、俺って高校に行くのか?」
「ええっ?何を言ってるのっ、順也っ、そんなの当然行くに決まってるよっ」
「そうかぁ・・何かな、考えた事も無かったから、良く分からないぞっ」
 今日のデザートの梨とブドウを1人でパクパクと食べながら、何の危機感も感じていない。
「これって何て書けばいいんだ?」
 目の前のプリントを不思議そうな顔で眺めた後に、大きな瞳をクルリと見開いて、愛らしく小首を傾げながらのんびりした口調で聞いてくる。
「そうだねぇ、智也さんと翔也さんが卒業した都立高校とかがいいんじゃない?家から近いし、剣道部も強いよ、俺もそう書いておくからね」
 確かに、これまで順也を相手に進学問題なんて話したことがない。
 受験なんか何処吹く風で、ポワッと幸せそうな順也に厳しい事を言えなくて、西原は取りあえず楽観的な意見を提案してしまう。
「んっ、じゃあもう高校は西原と一緒にそこでいいぞっ」
 そんな現実はさて置いたばら色の西原の提案を順也はいたく気に入った様だけれど、
「バーカッ!ウチの学校はこの辺じゃ一番レベルが高いんだぞっ、そこでいいぞっとか言ってる場合かっ!」
「優希は問題無いだろうけれど、順也は何てったって数学がなぁ・・本気ならこれから特訓するか?」
「まあ、今からもう受験勉強だなんて、そんなの順也ちゃんが可哀想ですわっ」
「あらあら、順也ちゃんも受験を考える歳になったのねぇ、お兄ちゃん達の時を思い出すと何だか憂鬱だわ」
「ははは、そんなに急いで決めなくても、ゆっくり考えて順也が行きたい学校を選べばいいですよ」
 それ以外の家族には余り受けが良くないようだった。


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2008.08.13(23:29)| future progressive formコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「はぁぁうぅぅぅぅ・・・」
 PM7時15分。
 すっかり日も暮れ、足下からの控えめなライトに照らされて、プールの水が光沢のある漆黒の布の様にユラユラと揺れる。
 高層ビルの夜景が眩いプールサイドで、秋の気配を感じる心地良い夜風を肌に感じながら、西原は大きく溜息をついた。
 すわり心地の良い籐製のデッキチェアに座り、肩にはパーカーを羽織っているので寒くも無く、目の前のテーブルにはホテルの豪華な料理が並べられている。
 状況は申し分ないのだけれどガックリと項垂れてしまうのは、さっきから繰り返される順也のヤキモチ攻撃のせいだった。

 桜子の友人の美人ホテルウーマン瑠璃子には何の反応も示さなかった順也だったけれど、その後、二人でビーチボールで遊んでいた時に、暴投してしまったそれを拾って渡してくれた、ちょっと小太りの女性に向い西原が笑ってお礼を言ったら、もの凄く怒った。
 フランス人で金髪碧眼の同じ歳の美少女が言葉が通じなくて苦しているので通訳したら、『西原は凄いなぁ』と感心してくれたのに、その母親が『娘に親切にしてくれてありがとう』とお礼を言いに来て、それに西原が『どういたしまして』と答えたら、あっと言う間にホッペタを膨らませた。
 ジュースが飲みたいと言うから、そこにいたボーイさんに声を掛けたら睨まれた。
 ジュースをお代わりと言うから、別の今度はメイドさんに声を掛けたら、今度は何も起こらなかった。
 半ば貸しきり状態のプールが楽しくて、プールサイドには食べても尽きないご馳走が山盛りで、順也の機嫌は基本的には悪くない。
 なので、一回一回の剣幕は長続きしないのだけれど、こう頻繁に繰り返されると、流石に精神的にグッタリしてしまう。

 力なく椅子に凭れる西原の前には、美味しそうな料理が並ぶテーブルを挟んで、桜子と三都葉が座っていた。
 順也を連れてプールに来ている事を桜子がメールで知らせたら、あっという間にプールで順也と遊びたい智也と翔也が寄って来て、その翔也に釣られて三都葉も現われたのだ。
 3人共、今日は一日忙しいと言っていた筈なのに、こんな場所で遊んでいていいのかと少々心配になるが、西原だって同じ立場なら迷わず順也とプールを取っただろうから、敢えて何も言わない。
 ちなみに、智也と翔也と順也は皆で一緒に、一番人気の鉄板焼きの列に並びに行ってしまっているので、今はこの場に居なかった。

「もう訳がわかりません、順也は何を基準に怒っているんでしょうか?」
 良い機会なので、西原がこれまでの経緯を話して疑問の答えを駄目もとで聞いてみると、
「そりゃ、その相手が優希君に、恋愛対象としての興味を持っているか否かでしょう」
「そうねぇ、瑠璃子は優希君が面白いって分かっているから、いくら見た目がこんなんでも、まず優希君にそう言う興味は持たないわねぇ」
「あの、俺が面白いって何ですか?」
「マゾ」
「ナル」
「うううっ・・もうその話題は飽きたからいいです、じゃあ、順也はあの人達が俺にそういう興味を持っているって勘違いしてるんですか?」
「勘違いじゃなくて、本当にそうなんじゃないかしら?順也ちゃんは誰かさんと違って、意外と勘が良いのよ」
「ははは、流石全国チャンピオン、誰かさんと違って洞察力が一味違いますねぇ」
 微妙に疑わしいけれど、何だか筋の通った答えを二人は出してくれる。
 何だ、ちゃんと基準があったのか。
 何となく納得した西原だけれど、しかし、自分の派手な見かけだけに惹かれて薄っぺらな行為を寄せる人間はそれこそ掃いて捨てるほどいるので、このままではきりがないと怯えて、
「じゃあ、どうすれば順也がそんないらないヤキモチを妬かなくなると思いますか?」
縋る思いで解決策を尋ねると、
「無理よ、ヤキモチを妬くのは順也ちゃんが優希君を独り占めしたい証拠ですもの」
「妬かれる心配より、妬かれなくなった時の心配の方が重要だと思いますよ」
 またあっさりと、でも今度はこれまで西原が考えた事も無いような事を、ピシッと指摘されてしまうのだった。

「それにしても良い眺めですねぇ」
「本当ねぇ」
 桜子と三都葉が、鮮やかな色のカクテルを片手に、ウットリとした声を出す。
 セレブな雰囲気で椅子にもたれ脚を組み、芸術品でも眺める様な二人の視線の先には、宝石を散りばめた様な都心の夜景ではなく、頼んだ鉄板焼きが焼けるのを待っている、順也、翔也、智也の後姿があった。
 3人共、桜子が用意した、色違いだけれどお揃いの、水着とパーカーを身に着けていた。
 手足が長く、頭が小さく、無駄なく鍛えられたしなやかな体躯をした3人。
「本当ですねぇ」 
 背中を向けると、身長の差はあるけれど、そっくりな後姿に、西原も一緒になり見惚れてしまう。
 きっと、西原達をプールに誘ってくれた桜子の本当の狙いは、この絶景を見る為だったのだろう。
 本当に桜子は何時も何かを企んでるなぁと、西原はいらない感心してしまう。
 ちなみに、やはり桜子が用意してくれた、西原と三都葉の水着は、妙に派手派手しくて、その割りに面積が微妙に小さく、見た人が一瞬ギョッとするので何だか着ているのが恥ずかしい。
「きっと何か気付かない内に、ご機嫌をそこねる事をしてしまったんでしょうねぇ」
 順也のに比べて自分の水着は何か変だなと薄々思っていたら、同じ様な水着を着せられた三都葉が諦めたように説明してくれて、ああ、嫌がらせだったのかと西原も納得した。
 
 順也がヤキモチを妬くのは西原を独占したいという気持ちの現われ。
 そうは言われても、順也がこんなな情け無い自分をそこまで好きでいてくれるなんて、自分に自信の持てない西原にはにわかに信じられない。
 だけれど本当にそれがヤキモチの理由ならば、それは本当に嬉しい事だった。
 順也のヤキモチの原因が無節操な好意のせいならば、直ぐにむくれる困った癖は治りそうに無い。
 順也に『ヤキモチを妬いてもいい』と許可した心の片隅で、治せるものならなら治したいとこっそり考えていた。
 だけれど、もう今はそんな気持ちもすっかり失せた。
 西原だって、順也を独占したい気持ちは人一倍強く持っている。
 順也がちょっとした事で、敏感に反応するその気持ちは手に取るように分かる。
 そしてその気持ちは、相手を好きでいるうちは、決して消せるものだはないだろう。

「西原ぁっ!」
 一番にお肉を貰った順也が、嬉しそうに振り返り、お皿を見せながら西原の名前を呼ぶ。
 きっとオマエもお肉を貰いに来いと誘ってくれているのだろう。
 可愛らしい順也が楽しそうに笑うので、何時の間にか増えたプールサイドのお客の視線が集まり、その視線が微笑ましそうに細められる。
 そんな誰もが惹きつけられる順也を自分ひとりで独占したくって、
「うんっ、今行くよっ、順也っ」
 水着がちょっと恥ずかしいのを我慢して、西原は慌てて椅子から立ち上がったのだった。



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2008.08.13(08:07)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
木ノ実さん、こんにちわ(^^)
コメントありがとうございます!
相変わらず、気付くのが遅く、お返事が遅れて申し訳ありません。
三都葉先生、お気に召して頂けて嬉しいです。
頭の中で考えていた時は、もっとクールで意地悪な感じだったのですが、いざ出場したらご覧の有様(桜子さんのおもちゃ)になってしまいました。
でも、桜子>翔也>三都葉の順で頭が上がらないのだから、まあこうなっても当然と言えば当然かもです。
翔也君と三都葉先生の先はうーーーん(^^;;
翔也君の頭の中が滅茶苦茶健全なお子様なので、進展するならもう少し大人になってからですかねぇ?
本当に健全、エッチなのは順也君の方が数倍上です(余計な情報)
2008.08.12(07:56)|未分類コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・優希の寝室
登場人物・・・西原優希 大公爵の息子 
        順也 人魚の国の第三王子(今は人間)



「はぁ・・・ただ今、順也」
「んっ、お帰り、優希ぃ・・じゃなくて、お帰りなさい、『あ・な・た』」
「ええっ!!!!何?それ、順也っっ?何でいきなり『あ・な・た』なのっ?!」
「ん?嫌だったか?」
「ぜっ全然嫌じゃないけれどっ、でもどうして?」
「えっとな、ケント君が、きっと優希は沢山怒られてガッカリして帰ってくるから、そう呼んで元気付けてやった方がいいって言ってたからだぞっ」
「ケントが?」
「んっ・・・なぁ、優希ぃ、そんなに皆から怒られたのか?」
「え?ああ、フローリア姫を投げ飛ばしちゃったから、ちょっとね・・でも、隣国の国王にもキチンと謝ったからもう大丈夫だよ、それに順也が『あ・な・た』って、可愛く呼んでくれたから元気が出たよ」
「んっ、そうかっ!それなら良かったぞっ!!」
「うん、ありがとう、順也、そう呼ばれると、もう順也と夫婦になれたみたいで凄く嬉しいよ」
「どういたしましてだぞっ!あっ、それからな、さっき三都葉先生の水鏡で、海の中の智也兄さんと桜子姉さんと久しぶりに話したんだぞっ!」
「そう、良かったね・・あっ、ねえ、お兄さんとお姉さん、俺と順也の結婚のことは何か言ってなかった?例えば、俺を順也のお婿さんとして認めるとか何だとか・・」
「ん〜とな、俺も一応、優希と結婚していいか聞いたらな・・」
「聞いたら?」
「『その件に関しては未来永劫保留だっ、二度と口にするなっ!』って言っていたぞ」
「みっ・・未来永劫保留っ?!」
「なあ、優希ぃ、『未来永劫保留』って何だ?」
「ううううう・・・・」
「何か二人共凄く怒ってたけど、どうしてかなぁ?」
「うぁぁぁぁ・・・・」
「あっ、また優希に元気が無いぞっ、『あ・な・た』って呼ぶか?」


場所・・・フローリアの部屋
登場人物・・・フローリア 隣国の王女 
        オババ 魔女



「きぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!悔しいっ!!!!優希様ったら、この青い海の真珠姫、フローリアを投げ飛ばしたわっ!!何故っ?何故なのっ?優希様っっ、この絶世の美女フローリアが、あんな真っ白いヒョロヒョロの子供に負けるどんな理由がありますのっ?納得がいかないっ、絶対に納得がいきませんわっ!!このフローリアが負けた何か良からぬ理由が、きっと何かある筈ですわっっ!!」
「おおせの通りです、ご聡明なフローリア様」
「ぎゃあああっ!!ビックリしたっ、『黒い森の魔女のオババ』、何時からそこにいたの?何時も言っているでしょう?いきなり背後に現われるのはお止めなさいっ!」
「ヒャッヒャッヒャッ・・・コレは失礼いたしました、次は気をつけます」
「ま、まぁいいわ、それよりオババ、今仰せの通りっていっていたわね、それってどういうこと?優希様がフローリアでなくあの貧相な子供を選んだのには、やっぱり何か理由があるの?」
「ヒャヒャ・・・その通りでございます、フローリア様」
「まぁっ!やっぱりそうだったのねっ、で、何なの?オババッ??優希様をこのフローリアとの真実の愛から目を背け指せているその理由は何??」
「ヒャヒャヒャっ・・・それは、フローリア様、あの順也という少年の正体が、人間では無く人魚だからでございます」
「に、人魚?人魚ってあの下半身が魚のあの人魚?そんなものが本当にいるの?」
「はい、人魚は海に住む魔性の者、今の優希様はその人外の魔力に惑わされているのでございます」


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2008.08.12(07:42)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「うわぁぁ!凄く綺麗だなぁっ!西原ぁっ」
「うん、そうだね、順也」
 分厚そうな曇り硝子に、金で複雑な模様が描かれた、見上げる程の巨大な扉。
 自動ドアになっているそれが真ん中から音も無く左右に開き、その向うに広がった光景に、順也が大きな歓声を上げた。
 西原達が居るのは新宿の高層ビル群が間近に見える老舗の高級ホテル。
 その45階にある、ホテルの会員制フィットネスクラブに付属したプールだった。
 外から見上げた時、ホテルの外観が途中から少し細くなっていているのが見えたけれど、ここは丁度その細くなっていた部分らしい。
 意外と広くベランダの様に張り出したそこに作られている大きな楕円形のプールは、夕方の近い夏の空に下で湛えた透明な水をキラキラと輝かせていた。
 そして、45階だけあって眺めも開放感も最高で、グルリと観葉植物の多く置かれた向うには透明な硝子の柵が目立たなくしてあって、まるで空中に浮かんでいる庭の佇んで居る様な気にさせる。
 ここで今日は、このプールの改装が終わった事を記念したパーティーが開かれていて、プールサイドには瀟洒なテントが出されていて、その下には白いテーブルクロスの掛かったテーブルが置かれ、沢山の豪華な料理が準備されていた。
「西原ぁ!誰も泳いでないぞっ!早く泳ごうっっ」
「待って!順也っ、いきなり飛び込まないで、準備運動が先だよっ、あと遊園地のプールじゃないんだからそんなに騒いじゃ駄目だよっ!」
「ホホホ・・いいのよ、好きな様に楽しく泳いでくれて、でもこのパーカーは脱ぎましょうね、順也ちゃん」
 余りプールらしくない、良い匂いが漂う贅沢な空間。
 しかし、パーティーと言うにはお客が少なく、プールサイドにはホテル側の給仕の人の姿の方が目立っていた。
 そして、せっかく改装したばかりの、豪華なタイル張りのプールの中には、順也の言う通りにまったく人影が無い。
 貸切状態のプールに喜んで飛び込もうとする水着姿の順也を、西原が慌てて引き止めて、 連れて来てくれた桜子が楽しそうに笑いながら、順也のパーカーを脱がせてくれようとしていると、
「桜子、来てくれたのねっっ、ありがとうっ、助かるわっ!!!」
 プールの向う側から、ホテルの従業員の格好をした女が駆け寄ってきて、ガバッとやはり水着姿の桜子に抱きついた。

 桜子に抱きついたスーツ姿の美女は、皐月瑠璃子という女性で、桜子の小学校からの大親友だということだった。
 桜子と並んでも引けを取らない、目鼻立ちのハッキリしたスラリと長身の美人で、父親が社長のこのホテルで、将来は跡を継ぐ為にホテルマンとして働いている。
 今日、桜子を通じて、このプールに西原と順也を誘ってくれたのはこの女性だった。
 誘ってくれた理由は、改修工事が遅れて9月と言う半端な時期になってしまい、お客が微妙に集まりそうに無いプール開きを賑やかにして欲しいという、つまりは景気付けと言う事らしい。
 もう2年ほど前になるけれど、以前一度、智也の大学の学園祭で会ったことがあるので、実は西原も順也も初対面ではない。
「こんにちは、お久しぶりです、今日はこんな綺麗なプールに誘って頂いてありがとうございます」
 なので、桜子との挨拶が一通り終わった頃を見計らって、いつも通り人見知りしている順也の代わりに西原が挨拶をすると、
「こちらこそ、無沙汰しています、まぁっ、あなたがあの時の男の子?桜子には聞いていたけれど、本当に素敵な男の人になったのねぇ・・」
 瑠璃子はじっと西原を見て、頬に手を当て酷く感嘆した声を出した。

「いえっ、俺なんか、背が伸びたくらいで何も変わっていません・・」
「そんな事ないわ、本当に見違えちゃった」
「いえ、そんなっ・・」
「あら、優希君、珍しく照れてるの?瑠璃子は美人ですものえぇ」
「さ、桜子さんっ、そんな事ないですっ、からかわないでくださいっ!」
「あらっ?そんな事無いって、私が美人じゃ無いって事かしらっ?」
「あっ!いえっっ、全然そんな事はっっ!」
 桜子とその親友、何だか雰囲気の似ている微妙に苦手な二人を前に、西原は心ならずも緊張して、受け答えがしどろもどろになってしまう。
 桜子もハキハキしているけれど、瑠璃子もこんな立派なホテルの跡を継ごうとしているだけあって、仕草は桜子同様に上品だけれど口がまわる。
「それじゃあ皆さんはごゆっくり、順也ちゃん、沢山泳いで一杯食べていってね」
 そして、しばらく桜子と一緒になって、オロオロする西原をからかった瑠璃子だったけれど、やがてポケットの中の携帯で呼ばれたらしく、そう言い残し急ぎ足でホテルの中に戻っていった。
 やっと二人掛かりのイジメから開放されてホッとした西原は、背中に隠れて大人しい順也の方を振り返ろうとして、その瞬間に『はっ!!』とした。
―――あんな大人の美人と親しく話していたら、また順也のヤキモチスイッチが入るかもっっ!? 
「順也っっ、今のは違うよっ、そういうんじゃ無いんだよっ!!」
 どこの誰からとも知れない手紙にあれだけ怒っていたんだから、今ので怒らない訳が無い。
 今日の学校での散々だった事を思い出し、早くも泣きたい気分で西原が振り返ると、
「ん?違うって何がだ?」
 しかし、順也は何時の間に手にしたのか、カットされたオレンジの実がとハイビスカスが綺麗に飾ってある、ゴージャスなオレンジジュースをチューッとストローで吸いながら、不思議そうに顔を傾けてみせた。


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2008.08.11(21:18)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大広間
登場人物・・・何かもう全員



――――パンパカパーーーン、パンパンパンパン、パンパカパーーーン
「皆様、大変お待たせいたしましたっ、時期国王陛下西原ゆ・・」
――――バーーーンっ!!!!
「順也ーーーーぁぁっ!!!愛しているよっ!!!俺と、結婚してくださいっ!!」
「ん?優希ぃ、走るの凄く早いな」
「それは今はどうでもいいからっ、俺と結婚してっっ、返事はっ??」
「んっ、別にいいぞっ」
「本当にっ?ありがとうっっ!順也!!」
「優希様っ、そんなにいきなり、段取りが滅茶苦茶でお客様が驚いていますっ」
「いいから、ケントは邪魔しないでっ」
「優希さまぁぁぁぁ!!!お選びになる相手を間違っていらっしゃいますっ!!抱きしめるならこのフローリアをぉぉっ・・・・うぶっ!!!!」
「煩いっっ!突進して来るなっっ、南方イボ猪っっ!!!」
「あらあらっ、優希さんっっ、相手は一応隣国のお姫様なんだから、投げ飛ばしては駄目ですよっ」
「おいおい、今のはちょっと酷くねぇ?」
「いいから、母さんも翔也さんも黙っていて下さいっ!三都葉殿っっ、お姉さんはどこから見ているんですかっ?ボーーッとしてないで、教えてくださいっ!!」
「えっ?あっ、えっと、そうですね・・あちらの海方向だと思いますけれど・・」
「こっちですねっ!!順也っ、こっちに来てっ!!!誓いのキスをするよっ!んーーーっ」
「んっ、いいぞっ、んーーーーっ」
「あっ!こらぁっっ!!こんな人前で、俺の弟になにすんだよっっ!!」
「だから翔也さんは黙ってて下さいっっ!!今、大切なところですっっ!海のお兄さんっっ、お姉さんっっ!!見てますかぁっっ?!俺の中に迷いはミジンコ程もありませんっっ!必ず幸せにしますからっ、順也を俺にくださいーーー!!!」


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2008.08.10(20:50)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
 縋り付いてくる順也の小さな身体を抱き締めて、西原は落ち着かせる様にポンポンとその背中を叩いた。
「そんな事を心配してたんだ・・・バカだね、順也は・・」
 そして、順也の落ち込んでいた原因が以外に他愛の無いものだと知り、安心してつい思ったままの感想を口にしてしまう。
「ふえっ・・、バカだと面倒臭いか?」
 すると順也はガーンとショックを受けたような顔をしてまた泣きそうになるので、
「違うよっ、そんな事は一言も言ってないよっ!」
 慌てて西原はブンブン首を振って見せた。

 どんな状況になったって、順也のことで何かを面倒だと思う事なんて絶対に有り得ない。
 順也がそこに居て、順也の為に何かが出来るから、西原はこうして普通の人の振りをして動く事が出来るのだ。
 順也だけが西原をこの現実世界に繋ぎ止めていてくれる唯一の楔だった。
 順也に見捨てられれば、存在理由を失って、三日と持たずに西原は正気を失うだろう。
 その愛しい存在の順也を恋人に出来て、最高に幸せな気持ちで生きているのに、どうしてヤキモチを妬かれた位でその生命線の順也を疎ましく思えるだろう?
 そんな有り得ない理由でこれ以上泣かれてしまっては敵わない。
「あのね、何があったって俺が順也を面倒だなんて思う事は絶対に起きないんだよ、だって、俺のこの中は順也で一杯なんだから」
 それをどうやって納得させようかと考えて、西原は順也を1人でソファーに座らせてその前に跪き、少し下から順也の顔を見上げてそう言った。
 そして、順也の手を掴んで導き自分の胸に触らせる。
「俺で一杯なのか?」
 順也は言われた事の意味が分からないらしく、大きな目を見張って不思議そうに小首を傾げてみせた。

「そう、順也が傍にいてくれて、何時も話しかけたり、笑いかけたり、甘えたりしてくれるから、そういう順也を取り込んで、俺は俺でいられる」
「ん?そうなのか?」
「そうだよ、知らなかった?」
「んんっ、知らなかったぞっ」
「あはは、大切な事だから覚えておいてね、じゃあ、反対に順也がいなければどうなると思う?」
「ん〜・・・・寂しい?」
「そんなんじゃ済まないよ、順也は以外と簡単に身体の外に抜けちゃうからね、俺の中は空っぽになって、直ぐにペシャンコに潰ちゃうんだ」
「んんっ!そうなのかっ?そんなの俺は嫌だぞっ!」
「うん、俺も嫌だよ、そうならない為にはずっと順也の傍にいて、順也を補給してなきゃならないから、ヤキモチを妬きでもいいから順也が傍にいてくれないと、俺は凄く困っちゃうんだよ」

「俺はヤキモチ妬いてもいいのか?西原は面倒じゃないのか?」
「順也を面倒だって思って嫌になったりしたら、俺は三日でペシャンコになっちゃうよ、そんな事は気にしないでいいから、ずっと俺の傍にいて順也を俺に補給させて?」
 西原の話しを納得してくれたらしく、順也は「なら良かったぞ」と言いニコリと笑って、酷く安心したように身体の力を抜いた。
―――チュッ
 フニャリのソファーの上で力を抜いている順也が可愛いので、西原はその上に圧し掛かり、ほんのり赤い唇にそっとキスを落とす。
「西原ぁ・・・」
 勿論、順也は嫌がったりしないで、首に腕を回してきて、先を強請るように目を閉じて首を小さく傾けてみせる。
「順也・・愛してるよ」
 西原はフワフワ柔らかく甘い唇を少し長く味わって、何時の間に二人で倒れこんでいたソファーの上で、順也を抱き締めた。
 ヤキモチは心臓に悪いから止めて欲しい。
 本心を言えばそうだけれど、それを言うとまた順也が混乱しそうなので、今はヤキモチを容認する事までで話を止めておく。
 これから、また順也は容赦なく膨れるかもしれないけれど、それについては本をただせば西原の自業自得なので仕方が無い。
 夏の日差しが眩しい、けれどもクーラーの効いた静かな部屋。
―――ああ、大事に至らなくて良かった
 はた迷惑なユウコリンさん事を忘れて機嫌の直った順也の華奢な身体を、西原は幸せな気分でシミジミ抱き締めた。
「なあ、西原ぁ・・・」
 安心して、つい何時の間にか意識を飛ばしてしまっていると、大人しく腕の中に納まっていた順也が、顔を上げて名前を呼んできた。
「ん?何?順也、ごめんね、苦しかった?」
 ちょっと力を込めて抱き締め過ぎていたかもしれない。
 慌てて西原が身体を起こすと、でも順也はそファーの上に寝転がったまま、そうじゃないと言いたげにフルフル首を振り、
「このままエッチするのか?俺は別にいいぞ・・・」
 何故か熱っぽく潤んだ色っぽいハシバミの瞳で西原を見上げながら、プチッとワイシャツの一番上のボタンを外して見せた。
「ええっ!しっ、しなよっ!!!!これから、家に帰って、お昼ご飯を食べて、また稽古するんでしょうっ!?」
 何時の間にそんな話になってしまっていたのか?
 こんなまっ昼間から、学校帰りにそんな事、したいけれど出来る筈が無い。
 まったくそんな気の無かった西原は、大慌てで順也をソファーから引き起こし、外したボタンを締めなおして、
「んんんっ!それはエッチしてからでも構わないぞっ!」
「絶対無理っ!!!そんな事した直ぐ後で、お母さん達とご飯なんて食べられないよっ!」
「んんっ!ちょっとだけっ!!」
「ちょっとも駄目っ!お昼を作ってお母さんが待ってるよっ!!早く家に帰ろうねっ」
 抵抗する順也の腕を引っ張って、足早にマンションを出たのだった。

 PM1:15分
 お昼ごはんは冷やしうどんと、順也と西原には追加でカツ丼が付いていた。
 マンションから帰ってきて、シャワーを浴びてサッパリした後に、それを、順也、西原、小枝子、桜子の四人で茶の間でテーブルを囲んで食べていると、
「そうだ、順也ちゃん、優希君、今日の晩御飯はプールで食べない?」
 うどんを上品に口に運んでいた桜子が、ニッコリと笑いながらそう言った。



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2008.08.10(11:00)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「わぁ、暑いね、直ぐにクーラー入れるからちょっと待ってね、何か冷たい物を飲む?オレンジジュース入れようか?」
 順也を連れてマンションの部屋に入ると、締め切っていた部屋の中は蒸し風呂みたいになっていた。
 慌ててクーラーを入れてから、順也をリビングのソファーに座らせて、西原は冷たい物を取りにキッチンへと向った。
 すると、順也も後をついてきて、食器棚からグラスを出している西原の腰に腕を回し、ピタリと背中にくっついてくる。
「ごめんなぁ・・・西原ぁ・・・」
 そして、くぐもった声でそう言い、
「・・・ぅ・・ぇぇ・・・っ・・」
 直ぐに西原の背中に顔を埋めて小さな声を出して泣き出した。

 クーラーの音が低く響くリビングにある椅子の上。
 泣き出した順也を西原は膝の上に抱き、そのまましばらく抱き締めていると、やっと順也は泣き止んだ。
「落ち着いた?ねえ教えて、さっき教室で、俺がちょっとだけいない間に何があったの?」
 それでも、まだ大きなハシバミ色の目に一杯涙を湛えたままでいる順也を驚かせてしまわないように、出来る限りの優しい声でそう尋ねると、順也はポツポツと泣いて掠れた声で話し始めた。

「梅本君の彼女のユウコリンさんがな・・・」
「ユウコリン・・さん?まぁ、いいか、うん、ユウコリンさんがどうしたの?」
「うん・・ユウコリンさんがな、凄くヤキモチ焼きなんだ」
「ヤキモチ焼き?」
「んっ、あのな、梅本君がなユウコリンさん以外の女の子と口を利くと、もの凄く怒るんだぞ」
「ふぅん、そうなの、どんなふうに?」
「んとな・・駅前でティッシュを配ってる女の人からティッシュを貰って、梅本君が『どうも』って言うと怒る」
「へぇ・・」
「それから、コンビニでお弁当を温めて貰って受け取る時に『どうも』って言った時、店員さんが女の人だと怒る」
「ふぅん・・」
「それからな、マックでハンバーガーを買って、『どうも』って言って、店員さんが女の人だと怒る」
「はぁ・・・」
「それから」
「まだあるの?」
「ん・・・と、もう無い、聞いたのはそれだけ、とにかくなユウコリンさんは凄いヤキモチ焼きで、梅本君は凄く困てるらしいんだぞっ」
「そうなんだ、そんなに何でも怒られたら、梅本君も大変だね・・で、それで何で順也の元気が無くなるの?」
 順也の話しを聞いて、謎だった若林達と順也の会話は理解する事が出来た。
 でも、何でそれで順也が泣く程に落ち込んで、しかも台所で西原に『ごめんな』と謝ったのか分からない。
 なので、疑問に思った事を、近くにあった順也の白く形の良いオデコにチュッとキスをしながら聞いてみる。
「んっ・・あのな、梅本君はユウコリンさんが好きだけど、余りヤキモチを妬くから、この頃ちょっと『面倒くさい』って言ってたぞ」
「うん・・・それで?」
「俺もな、今日は沢山オマエにヤキモチ妬いただろう?俺も西原に『面倒臭い』って思われてたらどうしようって考えたら、凄く恐くなったんだ」
 キスをされた順也はちょっとくすぐったそうに肩をすくめてそう言い、
「ヤキモチ妬いてゴメンなぁ・・・もうしないから、俺を『面倒臭い』って思わないでくれよな・・っ」
 また涙が溢れてきた瞳で縋るように見上げて来て、そのまま西原の首にギュッと力を込めて抱きついてきた。



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2008.08.08(07:30)|dropped somethingコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大広間扉前ロビー
登場人物・・・西原優希 大公爵の息子 
        三都葉 錬金術師



「どっ、どうすればっっ、俺はどうすればいいですかっ?三都葉殿っっ!!」
「どうすればと言われましても、桜子殿は怒り出すと手が付けられないのでどうしようもありません、でも大丈夫ですよ、人魚の方々は恋が叶わないと泡になって消えてしまう体質なので、順也様が優希殿をお好きなウチは、無理矢理引き離されたりはしませんから」
「えええっ!順也はそんな危なっかしい体質なんですかっ!?」
「おや、知りませんでしたか?そうなんですよ、だから順也君を無理に海に連れ戻したりする事はありませんからご安心ください」
「安心って、いえ、そんな消極的な事ではなく、順也と俺の結婚式は船の上で挙げて、海の中の皆さんもご招待して、俺たちの仲を祝福して頂こうと思っていたんですけれど、このままだとそういうのはどうなりますか?」
「どうなるって、そうですね・・優希様の第一印象は皆さんの見ている前で、初対面の順也君をいきなりアレしてしまったので最低でしたけれど・・・」
「うううっ」
「それでも、その後の心の籠もったお手紙の数々で、かなり人気は持ち直していましたから、昨日までならそれも可能だったかもぃれません」
「あああっ」
「私も、海の中の皆さんに優希様の良さを分かって頂こうと、陰ながらお力添えしていたのですが・・・」
「はぅぅぅっ」
「こうなると挽回は難しいでしょう、こんな結果になってしまって本当に残念です」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!順也の家族にずっと嫌われたままなんて絶対に嫌です!!皆に祝福されて、俺は順也を花嫁にしたいんですっっ!」
「そうは言われましても、桜子殿は本当に頑固で、一度ヘソを曲げてしまうと誰にもどうしようも・・・」
「そう言わずチャンスをっ、俺に挽回のチャンスを下さいっ!そうだっ!!今も花嫁選びの会場を、海の中の方々はご覧になっていらっしゃいますかっ?!!」
「ええ、きっと見ていると思いますけど、でも今は何をやっても・・・」
――――パンパカパーーーン、パンパンパンパン、パンパカパーーーン
「あっ!!!!合図のファンファーレだっ!!!俺っ!行きますっ、三都葉殿っっ!!言って見ている海の皆さんに、順也だけを愛している俺の本気を見て貰いますっっ!!」
「ちょっ、優希様!どうすおつもりですか?!」



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2008.08.07(23:16)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「よぉーし、全員自分の席にもどれぇ!皆、班は決まったかぁ?決まっていない奴や、人数が半端な奴は言えよ、こっちで調節するからな」
 チャイムが鳴ったのを聞いて、羽田が教卓から立ち上がりそう声を上げる。
 それを期に西原も自分の席に戻ろうとすると、
「西原、オマエの言う事もまあもっともだけれどな、せっかくのプレゼントや手紙を『落し物扱い』で突き返される奴等の気持ちも考えろよ」
 と、羽田に背中をポンッと叩かれて小声で注意される。
「はい・・でも、受け取れません」
 一瞬振り返り、羽田の顔を見てやはり小声で答えた西原は、自分の席に大股で戻った。

 羽田の言う事は西原にも理解出来る。
 悪気があって送って来る物ではないので、夏休み前までは西原もお礼や返事をした事は無かったけれど、勝手に送られてくる様々な物を、受け取るだけは受け取っていた。
 でも、それらに対しては何の感慨も無かったので、特に中身を覗く事はなく、手紙は家でシュレッターに掛け、プレゼントも始末して手元に置く様な事はしていなかった。
 特に目立った害があるわけでなし、リアクションが無ければそのうち皆も諦めるだろうと、悠長な考えでずっといたのだ。
「あっ!西原ぁ、オマエのロッカーにまた何か入ってるぞっ」
「本当だね、皆、よく飽きないね」
「んんっ、今日のはお菓子みたいだぞっ、食べてもいいか?」
「ええ?駄目っ!誰がくれたか判らない食べ物なんて絶対に口に入れたら駄目だよっ!」
「んん〜、でもな、凄くお腹が空いたぞ・・」
「はいはい、今日も部活頑張ったものね、早く家に帰って何かオヤツを食べようね」
 順也もそんな西原の行動を、さして気にしている様子は無かった。
 でも、今はそんな夏休み前とは事情が違っていた。
 そういった物を持っていて純也の機嫌が悪くなる事を考えると、カバンに入れて家にもって帰る気には絶対になれない。 
 人の気持ちを踏みにじって自分の事しか考えていない、身勝手な行動だと分かっている。
 でも今の西原には、焦がれて焦がれてやっと手に入れた恋人の気持ちを優先する以外の事は、もう精一杯で手が回らなかった。

―――プレゼントを突き返して、それで誰かに酷い人間だと思われても仕方ない
 順也さえ手に残ればそれでいいと諦めて西原が自分の席に戻ると、後ろの席に座っている順也の様子が何だか変だった。
「ただ今、順也、梅本君の彼女の話しは面白かった?」
「ん・・・別に・・そうでもないぞ」
 酷く楽しそうだった会話の内容を尋ねても、言葉を濁して教えてくれようとしない。
 しかも、前に立っている西原の顔を大きな目でジッと見上げて、何か言いたそうに口を開きかけるけれど、結局は何も言わずに視線も下ろしてしまう。
 ついさっきまであんなにはしゃいでいたのに、自分が居ない僅かの間に何かあったのだろうか?
「えっと、順也・・・」
「よーし、全員静かにしろぉ!次は進路調査の紙を配るからな、記入するときに注意して欲しい事が幾つかあって、これからそれを説明するから、無駄口を叩かないで静かに聞いておけよぉ!」
 しかし、様子のおかしい理由を尋ねようと名前を呼んだけれど、羽田の言葉に遮られてしまった。
―――俺の居ない間に一体、何があった!?つぅーか、順也に何をしたっっ!!
 仕方ないので、事情を知っているであろう斜め後ろの若林に、視線だけで尋ねてみると、
―――しっ、知らねぇよ!!俺はホントに何も知らねぇしっ、何一つしていねぇっ!!!
 視線を受けた若林はビクリと怯えた様に身を縮めて、次に首が捥げそうになる程に、ブンブン激しく頭を振った。

 プリントは家にもって帰って、来週の月曜日に提出すればいい。
 今日の予定の最後だった進路調査もそれで終了して、最後に各教科の係りが宿題を回収し、羽田が簡単な挨拶で締めくくり、2学期第一日目のクラス会は終了した。 
 社会科係の順也は、『ヨーロッパと日本の近代化の差について』というレポートを皆から集めて、放課後社会科の担当教師まで持っていった。
 元気の無い順也を手伝って西原がほとんどを集めて、二人で職員室に届ける。
 その間、西原が「どうしたの?」と元気の無い理由を尋ねても、俯いたままフルフルと頭を振るだけだった。
 でも、何か言いたそうな事がある様に、時折西原の顔をジッと盗み見たりしている。
 取りあえず元気は無いけれど、機嫌が悪い訳ではなさそうだった。
「順也の家に帰る前に、ちょっとだけ俺のマンションに行こうか?」
 何か言いたいけれど、言い辛い事があるのだろうか?
それが何だか分からないけれど、まさかのまま放って置く訳にはいかないので、後ろからトボトボした足取りで付いてくる順也に西原がそう言うと、
「ん・・・いいぞ」
 順也は小さな声でそう返事をして、コクリと頷いてみせた。

「うわぁぁぁ!またこんなになのっ?!!」
 帰りの昇降口で、性懲りも無く西原の下駄箱から大量の手紙やプレゼントで出てきて、西原は酷く慌てたけれど、後ろで見ていた順也は何故だか何も言わなかった。


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2008.08.07(08:02)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
こんばんわ、ブレス☆シングさん。
コメントと大量の拍手、本当にありがとうございました!
拍手コメントのお返事が遅れてすみません(><;;
何時にもコメントが少ないので、チェックがゆるくなっています!
ああああっ!数字が戻っている(^^;;
ご指摘ありがとうございます、直しておきます。
前もあったな〜、こんなとこも無責任ですみません(><;;

ブレス☆シングさんだったんですねぇ、読んで拍手してくださってたの。
ああああぁ、ありがたいけど、恥ずかしいです。
つじつまが合わないところ、ありましたか?どれくらいありましたか?大量にありましたか?
いえっ!教えてくださらなくって結構です(><;
心の中に仕舞って、笑って許してやってください。

これからも、書けた時だけの不定期更新ですが、付き合い頂けると嬉しいです。
でわでわ、本当にありがとうございました〜
2008.08.06(21:29)|未分類コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大広間扉前ロビー
登場人物・・・西原優希 大公爵の息子 
        三都葉 錬金術師




「優希様、ちょっとよろしいですか?」
「これは三都葉殿、まだ城にいらしたんですね、今日は飛んだ騒ぎに巻き込んでしまって、ご研究がお忙しいのに申し訳ありませんでした」
「いいえ・・翔也を置いて帰る訳にはいかないので私の事は別に良いのですが、じつは優希様に、大変言い辛いのですがお伝えしなければならない事があります」
「えっと、急に改まって何ですか?何だか恐いですね」
「ええ・・・、あの、今日の順也君とフローリア姫を並べての花嫁選びの事ですが、その事を順也君のご家族が知ってしまって、それでご家族が大変怒っていらっしゃいます」
「え?家族って翔也さんですか?それなら知っていますよ、今朝花嫁選びの舞踏会の話をお話しした時に、『俺の可愛い弟と、あんな『青イボ猪』をどうして比べるんだっ?!何か順也に不満があるのかっ?!0.1秒でも考えるじゃねぇっ、アホ王子っ!!!』って、物凄い勢いで怒られましたから」
「そうですね、あのときは私の弟子が無礼な事を言ってしまって申し訳ありませんでした」
「いえっ!そんなっっ!!確かにこんな馬鹿げた花嫁選びに順也を巻き込んでしまって、お兄さんの翔也さんが怒るの当然です、でもさっき会った時は順也の正装を見て、『すっげぇせ可愛いっ!!流石俺の弟だぜっ!』って喜んで、すっかり機嫌が治っていましたけれど・・」
「いえ、優希様、私が言っているのは翔也の事ではありません、怒っている家族というのは、海の中に居る順也君のもう一人のお兄様の智也さんと、自称『姉』の私の兄弟弟子、深海の魔女桜子殿の事なのです」
「え?順也のお兄さんとお姉さん?」
「はい、今日、久しぶりに桜子殿の魔力が復活して、早速彼女の魔法の水晶で順也様の様子をご覧になったそうです」
「は・・はぁ・・・」
「お二人はてっきり順也様は優希様のもとで大切にされて暮らしていると信じていらっしゃいました」
「え・・はい、勿論、渾身の力を込めて大切にしてますけれど・・・え?」
「でも、タイミング悪くいきなり、順也様があのフローリア姫と比べられている花嫁選びの会場が水晶に映ってしまいまして・・・」
「えっ・・ああっっ・・えええっ!!」
「それで、『あんな猪もどきと順也ちゃんを比べるなんて、どういうおつもりっ!?猪と順也ちゃんの差が分からないアンポン王子に順也ちゃんはまかせられないわっ!』って、特に桜子殿の方が無茶苦茶に腹を立てています」
「わぁぁ!!そっっそんなぁぁぁっ!!!」


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2008.08.05(21:15)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
「すみません、ご迷惑をお掛けしました」
 文句を言われるのももっともだと思い、バンバンと机を叩いた若林に向い、素直に頭を下げて謝った西原だったけれど、その一部始終をクラスメイト全員が見ていたので、更に若林の評価は下落してしまった。
『逆切れして西原天使様に頭を下げさせた最低の悪魔男』
『彼女が出来ないのを西原天使様のせいにした、無責任悪魔』
 ヒソヒソと囁きあう女子から追加のレッテルを貼られた若林は、机の上にガックリとうっつ伏し、2度と顔を上げなくなってしまう。 

 クラス役員選出結果。
 西原・・剣道部副部長なのでクラス役員は免除
 順也・・社会科係
 席順に続いてクラス役員もサクッと決まり、
「次は、遠足の班決めだ、一班3人以上6人以下で班を組め、休憩を含めて今から30分時間をやるからな、決まったらメンバーを黒板に書いてくれよ」
 続いての羽田の言葉を受けて、一気に教室が騒がしくなる。
「西原ぁ、若林君がな、俺達を遠足のグループに入れてくれるって言ってたぞっ!」
「へぇ、良かったね、俺と順也と若林君と後は誰?分かるんならもう黒板に書いてくるよ」
「後は・・・なぁ、後は誰だ?若林君?」
「終わったぁ・・・・」
「若林君?」
「俺の人生は終わったぁ・・・・全部西原のせいだ〜・・」
「んんっ?そうなのか?」
「いっ、いいよっ、順也、今は無理みたいだからもう少し待とうね」
 そして、遠足のグループも思いがけなくさっさと決まってしまい、空いた時間で西原は『落し物の拾得届け』を書いてしまう事にした。
 順也の前で書くと、また機嫌をそこねてしまうかもしれなけれど、『出すんなら今日中に出せよ』と羽田に言われてしまったので仕方ない。

「でよ、そこでも知らない女子にポッポコーンとか投げられて、結局プールに一時間もいられなかったよな?なぁ、若ちゃん?」
「ううう・・・思い出させるなぁ、一生の心の傷だぁ」
「ぎゃはははは、そういやぁ、鳳は夏休み中にプールとか行かなかったのかよ?」
「んっ!今年は忙しかったから、何処にも行かなかったぞっ!あっ、西原と一回だけ映画に入ったぞっ!」
「へぇ、それってやっぱり剣道の稽古のせい?」
「夏休みに何処にも行けないなんて、全国チャンピオンも大変だよなぁ」
「んんっ、そうでもないぞっ!」
「そういえば大変って言えばよ、俺、夏休みの間にさぁ、彼女の事でもの凄く大変な事が起きちまってよ、鳳、聞きてぇ?」
「んんっ!聞きたいぞっ」
「また始まった、梅ちゃんの彼女自慢っ!鳳ぃ、くだらねぇから気かねぇ方がいいぞっ」
「そーそー、梅ちゃんのブサイクな彼女の話なんか聞くだけ時間の無駄っ!」
「んんっ!じゃあ、聞かないぞっ!」
「何だよっ、いいから聞けよ、鳳ぃ!それから、若ちゃんと松っつん!!俺のユウコリンをブサイク扱いするなって何度言えば分かるんだよっ?!」

 西原の書いている拾得届けを見た順也はきっとまたイライラとして、プウッと頬を膨らませるだろう。
 西原はそう覚悟していたけれど、そんな西原の心配を他所に、順也は復活した若林と、若林の悪友で遠足で同じグループになった松田と梅本の会話に混ぜて貰って、至極上機嫌だ。
 順也が自分以外の人間と楽しげに話している。
 その状況はやっぱり気に入らないけれど、ある意味絶好のチャンスを逃す訳にはいかないので、西原は余り身の無さそうな会話を背中で聞きながら、急いで数十枚の拾得物届けを書き上げた。
 そしてその紙の束を、教卓に座り書き物をしている羽田のところまで持って行く。

「呆れたなぁ、本当に書いたのか?」
「はい、これで先生に渡した分全部・・・じゃなくてそうだ、この手紙も追加です、この分も書いたんで預かってください」
「貰ったものが何で、それが何処にあったのかとか、現物を見ないでちゃんと覚えているのか?」
「貰ってません!落し物ですっ!!」
「ああ、はいはい、落し物・・・で、覚えてるのか?適当なら受け取れないぞ」
「そんなに沢山じゃ無いし、それ位ちゃんと覚えていますよ」
「いやぁ、紙袋一杯ってのは結構沢山だろう?」
「そうですか?どっちでもいいですけれど、でもちゃんと書きました、これで『落し物』は受け取って貰えますよね?」
「はぁ・・まあな、約束だからいいけどな」
 西原が差し出した拾得物届けの束を、羽田は文句をいいながらも受け取ってくれた。
「しかし、何でここまで頑なに拒否するかなぁ?俺がオマエの歳の頃は、例え相手が象でもキリンからでも、あったらあっただけ嬉しかったものだけどなぁ、ある意味、男の勲章だろう?」
 渡された紙束をパラパラと捲りながら、不思議そうに羽田が顔を顰めた時、
―――キーーンコーーンカーーーンコーーン
 今日は余り関係ないけれど、3時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。


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2008.08.05(00:42)|jealous princessコメント(1)トラックバック(0)TOP↑
「よーーし、席替え終了したな、今学期はこれでいくからな、勝手に交換とかするんじゃないぞ」
「はーーーいっ」
「うぃーーす」
「えーーーーーっ、やり直そうぜ〜」
 教壇の上の羽田に言われて、席が気に入った者は元気に返事をし、そうでない者は不満タラタラの声を出す。
「もう決まったんだから諦めて静かにしろっ、次はクラス役員の選出っ、今日の日直、前に出てきてこのクラス役員を一通り、黒板に書き出してくれ」
 しかし、羽田は聞く耳も持たずサラッと受け流して、黒板の席替えの文字を消し、代わりに持っていたプリントをペラペラさせながらそう言った。

「んんんっ!西原ぁ、気合って利くんだなっ!良かったなっ!!」
「そうだねぇ、きっと順也が頑張ったおかげだね、ありがとう、順也」
「んっ!そうだぞっ、俺、凄く頑張ったぞっ!」
 西原と順也は運良く元気な返事グループで、見事に前後だけれど並んだ席を引き当てた。
 順也が顔を真っ赤にして、『おい、鳳、そろそろいだろう』と羽田に心配されながら、クジを引いた賜物だ。
 順也は窓際の一番後ろの今まで西原が座っていた席で、西原がやはり窓際の順也の前。
「俺が前に居て、黒板が見辛くない?」
「んんっ!大丈夫だぞっ」
 前後が逆転していればなお良かったけれど、そこまで総てを求めるのは贅沢だろう。
 振り返ると、何時でもそこに順也がいる。
「西原ぁ、お昼は机をくっつけて食べようなっ!」
「あはは・・そうだね、順也」
 これで、家でも学校でも四六時中順也と一緒にいられることになってを約束されて、西原にとってこんなに嬉しいことはない。
「若林君もまた隣だな、よろしくなっ」
「おお、よろしく、奇遇だよな」
「ん?奇遇って何だ?」
「あ?奇遇・・奇遇、不思議な偶然って感じかぁ?」
 ただ、たった一つ気に入らない事があるのなら、順也の隣の席が、前回同様何故か髪を金色に脱色したヤンキーな若林だということだ。
 珍しく順也が他人になついている光景を前に、西原はついさっき感じた胸の支えをまた思い出してしまう。
―――順也は俺だけのモノなんだから気安く馴れ馴れしくするなっ!
 そのせいで、今にも順也を腕の中に隠してそう叫びだしてしまいたくなるけれど、せっかく内気な順也が誰かと仲良くしようとしているのに、それを邪魔するなんて事は間違っていると理解する位の理性は残っていた。
「順也ともどもよろしくね、若林君」
 順也の前でみっともない様子は見せられないので、出来るだけ余裕の笑顔を作り若林に向けてそう言うと、
「西原ぁ、オマエは『よろしく』の前に俺に何か言う事があるんじゃねぇ?」
 しかし、言われた若林は急にヤンキーらしい半眼になったり西原を睨みながらそう言い返してきて、
「へ?」
順也の事だけで頭が一杯だった西原は、その意味が分からずについポカンとしてしまった。

 夏休み前。
 西原は順也への片想いが辛すぎて、情けないけれど順也を完全に無視してしまった時期が数週あった。
 その時に、孤立してしまった順也に声を掛けてくれたのが若林で、順也はそれで若林に懐いているのだ。
 順也を無視してしまっていた間の事を、本気で気が触れかけていた西原は余り良く覚えていない。
 順也が高熱を出して居なかった終業式の日に、若林からその順也を無視していた間の事を聞かされてしまい、それで西原はクラスメートの揃っている教室で思い切り泣いてしまったのだった。
 西原にとっては余りに情けない思い出したくない過去なので、順也に謝り許して貰えた後は、つい記憶の奥に押しやってしまっていた。
「オマエはっ!終業式の日に俺と話している途中でボロボロ大泣きしただろう!俺が何もしていないのにっ!皆の前でいきなりっ!何の前触れもなくっ!」
 しばらく記憶を再生するのに手間取っていると、更に険しい顔になった若林にそう捲くし立てられてしまい、それで西原は言われている事が何なのかを思い出す。
「ああっ」
 やっと合点が行ったので、数秒遅れでポンッと叩いたら、
「『ああっ』とか、やっとピンと来てんじゃねぇ!!あの後なぁ、俺が一体どんな酷い目に会ったと思う?『西原天使様を泣かせた最低の悪魔男』って呼ばれて、何処に行ってもウチの学校の女子だけじゃ無くて、見たこともねぇ制服着た女子にまで毛虫のみたいに嫌われてたんだぞっ!お陰で目標の彼女も出来なくて・・・っ!俺の夏休みを返せっ!『よろしく』の前にまずは俺に謝れっ!」
 それが余程気に触ったらしく、怒髪天を突いた若林に、机をバンバン叩きながら抗議されてしまった。


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2008.08.04(02:42)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・王城大ホール


―――パンパカパーーーンッ、パンパンパンパンッ、パンパカパーーーンッ
「紳士・淑女の皆様っ!本日はこの王城大ホールにようこそお集まりくださいましたっ!
これより、次期国王、西原優希殿下の花嫁選び舞踏会を開催いたしますっ」
―――わぁーーーーーーっっ!!
―――パチパチパチパチパチパチ!!
―――パーーーーンッ・・パンッ・・パーーーーンッ


場所・・・国王控え室
登場人物・・・大公爵の息子 西原優希
        国王(優希の叔父)



「わぁぁぁ!陛下っ!って言うか、叔父上っ!!何でこんな盛大に人を招いて花火まで上げてしまうんですかっ!?」
「はぁ、申し訳ありません、優希さん、昨日いきなり優希さんからフローリア姫を押し付けられたので、恐くてつい総て姫の言うとおりにしてしまいました」
「そ・・それはこちらこそ申し訳ありませんでした、でも、あの姫と順也を同じ屋敷には置いて置けなかったんですよ、でもだからってっ、ドサクサに次期国王って何ですかっ?!俺はそんなことOKした覚えはありませんよっっ」
「ははは・・まぁまぁ、いいじゃないですか、そろそろ私も引退してお気楽なご隠居になりたいなぁと考えていたんです、良い機会だと思って、今日この場で花嫁を決めて、ついでに王座も継いじゃってください」
「王座ってついでで継ぐようなモノですかっ!?それに花嫁って、俺はフローリア姫と結婚する気なんて、締め殺されてもありませんよっ!」
「勿論、私だってそんな事は思ってませんよ、花嫁は優希さんの大好きな順也君でいいじゃないか、可愛いし性格も素直だし私も大賛成ですよ」
「えっ?!いっ、いいんですか?そりゃ可愛いですけれど順也は正真正銘の男の子ですよ?」
「いいんじゃないですか?男の子でもあれだけ可愛ければ、誰も文句は言いませんよ、堂々とウエディングドレス姿の順也君と、王室大聖堂で結婚式を挙げちゃってください」
「ウエディングドレス姿の順也と堂々結婚式・・・本当にそれでいいなら・・・王座、継いでみようかなぁ?」
「ははは、それでこそ優希さん、じゃあ話しが決まった所で順也君を花嫁さんに選びにいきましょうか」
「ああ・・・純白のウエディングドレス姿の順也ぁぁ・・・」
「あの、優希さん、花嫁の前に行くのだし、時期国王だし、もう少し締りのあるお顔は出来ませんか?」

「では、優希さん、私は先に会場に行っています、あなたはファンファーレが鳴ったら入って来て、順也君の手を取ってダンスに誘ってください、それで優希さんの花嫁は順也君に決定です」
「はい、分かりました」
「ちなみに間違って他のお嬢さんの手を取ると、その人が優希さんの花嫁になるシステムになっていますから気をつけてくださいね」
「え・・・と、何だかもの凄く危険なシステムですね、誰が考えたんですか?」
「フローリア姫です」
「やっぱり?」
「ええ、そしてそれが決まってから、城の中庭で逃げる牛相手にタックルの練習をしていました」
「えと・・・それってもしかして、牛イコール俺ですか?」
「多分そうでしょうねぇ、牛に向って『優希様っ!お待ちになりなさいっ!!絶対に逃がさなくてよっ!!』って言っていましたから」
「あは・・・・あはははははは・・・・」
「それはもう、牛も吹き飛ぶ見事なタックルでしたよ・・では、私は先に行っています、優希さんは会場に入ったら、くれぐれも気を抜かないようにしてくださいね」


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2008.08.02(22:32)|小劇場コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
〜今日のクラス会〜
 1 席替え
 2 クラス役員選出
 3 横浜遠足班決め
 4 進路希望調査

「全部終わったらそれで帰れるからな、全員迅速に動けよ」
 西原が自分の席でウジウジ考え事をしていると、何時の間に黒板に大きな字で本日の予定を書いた羽田がそう言う。
―――ドン
 そして、菓子箱を改造した大きな『クジ』と書かれている箱を教卓の上に置いて、
「じゃあ早速席替えを始めるぞぉ、そっちの後ろの端から順に前に出て来い、この箱から一枚づつ紙を引いて、書いてある番号の場所に机ごと移動、座席表は前に貼っておくからな、各自確認してから席に戻れよ〜」
 いかにも運動部の顧問らしいテキパキとした支持をだした。
 気の早い生徒はもう立ち上がり始めたりして、教室は途端に騒然とする。
 「後ろから」と支持されて、西原の順番は直ぐに回ってきてしまったので、隣の生徒に続いて慌てて椅子から立ち上がった。

―――まずは自分がしっかり良い番号を引かなければっ!
 出来れば一番後ろの端。
 今時分が座っている比較的静かな辺りに順也と並んで座りたい西原は、
「(んんんんんんんんんんんっ)」
 順也の真似をして、心の中で右手に気合を注入する。
 そうしながら順也の横を通って、『頑張るからね』と伝えようとしたら、しかし、順也は席の隣の人間と、(桜子作)自分の遠足のしおりを広げて夢中になって話していた。

「へぇ、昼飯は中華街で磨棒豆腐か〜、それもいいよなぁ、でもまあ棒もいいけどよぉ、俺はこのチャンスに北京ダックっとかも、一度食べてみたいんだよなぁ」
「ん?ぺんきダックって何だ?若林君っ」
「北京ダックっっ、何、オマエ、知らねぇの?良くテレビでやってんじゃん、こう鶏を丸焼きにしてさぁ、その皮だけを削いで甘い味噌と一緒にパンに挟んで食うんだよ」
「鶏の皮?皮だけ食べるのかっ?身はどうするんだ?」
「身は・・・さぁ?考えたこと無かったぜ、でもよ、俺、好きなんだよな、鶏の皮、それをこんがり焼いて食うんだぜ?想像したら絶対美味いと思わねぇ?」
「んっ、思うぞっ、俺も鶏の皮は大好きだぞっ!凄いなっ、若林君は何でそんな事知ってるんだ?」
「いや、別にそこまで凄くはねぇけどよ、うち家が肉屋なんだ、メンチカツとかの惣菜も売ってるし、何か肉料理って気になるんだよなぁ」
「んんっ、そうなのかぁ、若林君の家はお肉屋さんなのかぁ、凄いなぁっ」
 話している相手は、若林という見かけちょっとヤンキーのクラスメートで、話に夢中の順也は、西原が横に立っても気付かない。
「順也」
「んっ?」
 数秒待っても気付ないので声を掛けると、やっとそれでこちらを見てくれる。
「あっ、西原ぁ、クジ引くのか?」
「えっ・・うん、頑張ってくるからね」
「んっ!念力で頑張ってくれよなっ」
「はぁ?何だよ?念力って?」
「ん?念力って言うのはなっ、手に込めると引きたいクジが引けるんだぞっ!」
 しかし西原を見て笑ってくれたのもつかの間、若林に聞かれるとそれを説明しようと、また直ぐに後ろを向いてしまった。
―――え?何でそんな奴に、俺達二人だけが決めた事を話してしまうの?
 何時に無く順也の素っ気無い態度を前に、西原は酷く息苦しい胸の支えを感じてしまうけれど、
「おーい、西原っ、早く引きに来いっ!後が詰まってるぞぉ」
「あっ、はいっ!スミマセンっっ」
 担任の羽田に注意されて、慌てて教卓の前へ歩いて行った。


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2008.08.02(06:50)|jealous princessコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
誰かが物凄い勢いで読み返して、拍手をして頂いています(><;;
ありがとうございます!
でもっっっ、嬉しいけれど、恥ずかしい!!!
顔から火の出る思いですっっ
始めた頃の何か、自分では読み返せません!!
もう何書いたかも忘れましたぁぁ(無責任発言)
2008.08.01(18:08)|未分類コメント(0)トラックバック(0)TOP↑
場所・・・大公爵邸中庭のガーデンパーティ
登場人物・・・大公爵の息子 西原優希
        海の国の第1王子 順也(今は人間)
        海の国の第2王子 翔也(今は人間)
        錬金術師 三都葉 
        召使 ケント
        優希の母

        隣国の姫 フローリア



「ほーーーほほほっ!優希さま、お待たせしましたっ!あなたのフローリアが参上しましたわっ!」
「わぁ!フローリア姫っ?!!ケッ、ケントッ、何っ?!何でこの人がこの屋敷にいるのっ?!」
「申し訳ありませんっ!優希様っ、門番が止めたのですが、強行突破されましたっ」
「ホホホホッ!優希様とこのフローリアの愛の前に立ちはだかる者は、総て排除させて頂きますわっ!」
「優希様っ、その不審者の護衛の騎士のせいで門番は大怪我です!」
「はぁ?何て事をするんですかっっ?!」
「ホホホっ!愛に犠牲はつきものですわっ!」
「あっ愛って、あなたは一体さっきから何を?」
「ん?優希ぃ、その人達誰だ?」
「人がメシ食ってんのに騒がしいなぁ、何が起きてんだよ?」
「優希さん、せっかく順也ちゃんのお兄さんと三都葉さんが遊びにいらしてくれているのに騒々しいわよ」
「わぁ!順也っ、母さんっ、それからお兄さんも、危ないからこっちに来ないでっ!」
「誰がオマエのお兄さんだっ!んっ、その派手な女、どっかで見たとことあるな」
「ホホホ・・・このフローリアの美しさの虜になった子羊がまた一匹・・」
「違ぇーーよっっ!!!思い出したっ!昨日、バザールの肖像画屋で見たんだっ!」
「ああっ!『青い海のイボ猪、フローリアの雌』だぞっ!」
「えっ?『青い海のイボ猪』??順也っ何それっ!?」
「微妙に違っていますよ、順也君、それを言うなら『青い海の真珠姫、フローリア』ですよ、昨日肖像画屋でお教えしたでしょう?フローリア姫は一応隣国の王女様です」
「ホホホホ・・・そう、私は王女フローリアっ!私の美しさはこの国でも評判ですのねっ!そしてそこの美形魔術師も私の虜っ!」
「いえ、それは大きな誤解です」
「優希ぃ、虜って何だ?」
「え?虜って言うのはね・・っ、今はそんな事はいいからこっちに来てっ、あんまり前に出ると危ないよっ!」
「んん〜、そうなのか?」
「そうだよっ!フッ、フローリア姫っ!もう随分前にお国に帰られましたよねっ?またいらっしゃる予定は聞いていませんでしたけれど、今回は何をしに我が国にいらしたんですか?」
「オホホッ!愚問ですわっ!優希様!!勿論、優希様の花嫁にこのフローリアを選んで貰う為に、やって来たに決まっていますっ!」
「はぁ?は、花嫁ぇ?!??選ぶって、姫のおっしゃっている事が良く分かりませんっ、って言うか、何でジリジリ近づいてくるんですかぁぁぁ!?」


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