中学の正門の前に三都葉の車が滑り込む。
「送って下さってありがとうございました、三都葉先生、翔也さん」
「ありがとうございましたっ」
「いえいえ、どういたしまして、今トランク開けますからね」
「しょうがねぇな、下ろすの手伝ってやるよ」
丁度登校のピークの時間で、道の脇に車を寄せて、トランクから荷物を下ろしていると、
「おはようございますっ、西原先輩っ」
「おはようございまーす」
「おはよう西原君っ」
「おはようっ、西原くーん」
近くを通りかかる女生徒達が、次々に声を掛けては『キャー挨拶しちゃった』だの、『やっぱりカッコイイ』だの『返事してくれた』だの興奮した声で騒ぎ立てながら、挨拶の返事も聞かずに走り去って行く。
「あ・・はい・・おはよう・・はい・・はい・・」
特に見知った相手でも無いし、返事も聞く気も無さそうなので、西原が適当な返事を返していると、
「流石優希はモテモテのモテ男君だなぁ」
「いやいや、すざましいですねぇ、私も昔はそれなりだったんですけれど、やっぱり優希君は別格ですねぇ」
「しかも皆、可愛いじゃねぇかっ、告白とか毎日バンバンされてんだろっ?」
「放課後の屋上で行列とか出来そうですよねぇ」
翔也と三都葉から口々にからかわれてしまうのだった。
「はぁ・・・あはは・・・」
何処かで見ていたんだろうか?
確かに二人に言う事は当らずしも遠からずなのだが、だからと言って言われて嬉しいわけでも、それが自慢なわけでもない。
むしろ知らない人間に呼び出されて、時間ばかり取られて、鬱陶しくて迷惑なだけだ。
「何が『あはは』だよ、澄ました顔しやがって、気になる子くらいいんだろう?どんなのがタイプなんだよっ?翔也兄さんに教えてみ?」
なので、笑って受け流そうとするのだが、更に調子に乗った翔也が大声でそう聞きながら腕を回して首を絞めてくる。
「もうっ!止めてくださいっ、苦しいですよっ!翔也さん!」
「照れんなよぉ、教えろよぉ」
直ぐ道の向うには、先生も何人か立ってこちらを見ているし、周囲には物珍しそうな顔の生徒の輪が出来初めている。
そんな注目の中心で恥ずかしくて西原は翔也の腕を解こうとバタバタと暴れた。
どうしてこの人はたまにどうしようもなく子供になるのだろう?
何故かテンションの高い翔也に思い切り困惑しながら、大人気ない力で首を絞めてくるその手を解こうと西原は四苦八苦してしまう。
その間、三都葉は「ははは・・」と楽しそうに笑っていて、順也はと言うと、ちょっと眉を顰めた硬い表情で、車から下ろした荷物を抱えてポツンと三都葉の横に立っていた。
家では元気で我侭が可愛い順也だけれど、一度外に出ると人見知りの引っ込み思案に変身してしまう。
今もこんなに注目されてしまって、きっと恥ずかしくて溜まらないに違いない。
「もうっ、学校の近くで止めて下さいっ!」
そんな順也の気持ちを慮って、西原は思い切って翔也の腕を振り払った。
そんな事をして、もしかしたら後で翔也にもっと苛められるかもしれないけれど、順也の恥ずかしがり屋さんの繊細な気持ちには代えられない。
「順也、お待たせ、もう行こうねっ」
「こらっ!優希っ逃げんなっ!俺の質問に答えてから行けっ」
案の定、ブーブー言う翔也の声を背中に聞きながら、西原は順也の背中に手を掛けようとした。
「いいっ!1人で行くっ」
しかし、順也はその手をすり抜けて、そう言い残し、荷物を両手一杯に抱えてタカタカと校門の方へ走り出してしまうだった。
登校初日にいきなりこんな目に会って、順也の機嫌が悪くなるのは理解出来る。
でも、その声が想像以上に棘のある響きを含んでいる気がして、
「順也っ!待ってっ!少し荷物持つよっ・・あっ、送ってくださってありがとうございましたっ、行って来ますっ」
驚いた西原は自分の荷物を拾い上げて、一応もう一度翔也と三都葉にお礼を言ってから、声を掛けても振り返らない白いシャツの背中を大慌てで追いかけた。
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「送って下さってありがとうございました、三都葉先生、翔也さん」
「ありがとうございましたっ」
「いえいえ、どういたしまして、今トランク開けますからね」
「しょうがねぇな、下ろすの手伝ってやるよ」
丁度登校のピークの時間で、道の脇に車を寄せて、トランクから荷物を下ろしていると、
「おはようございますっ、西原先輩っ」
「おはようございまーす」
「おはよう西原君っ」
「おはようっ、西原くーん」
近くを通りかかる女生徒達が、次々に声を掛けては『キャー挨拶しちゃった』だの、『やっぱりカッコイイ』だの『返事してくれた』だの興奮した声で騒ぎ立てながら、挨拶の返事も聞かずに走り去って行く。
「あ・・はい・・おはよう・・はい・・はい・・」
特に見知った相手でも無いし、返事も聞く気も無さそうなので、西原が適当な返事を返していると、
「流石優希はモテモテのモテ男君だなぁ」
「いやいや、すざましいですねぇ、私も昔はそれなりだったんですけれど、やっぱり優希君は別格ですねぇ」
「しかも皆、可愛いじゃねぇかっ、告白とか毎日バンバンされてんだろっ?」
「放課後の屋上で行列とか出来そうですよねぇ」
翔也と三都葉から口々にからかわれてしまうのだった。
「はぁ・・・あはは・・・」
何処かで見ていたんだろうか?
確かに二人に言う事は当らずしも遠からずなのだが、だからと言って言われて嬉しいわけでも、それが自慢なわけでもない。
むしろ知らない人間に呼び出されて、時間ばかり取られて、鬱陶しくて迷惑なだけだ。
「何が『あはは』だよ、澄ました顔しやがって、気になる子くらいいんだろう?どんなのがタイプなんだよっ?翔也兄さんに教えてみ?」
なので、笑って受け流そうとするのだが、更に調子に乗った翔也が大声でそう聞きながら腕を回して首を絞めてくる。
「もうっ!止めてくださいっ、苦しいですよっ!翔也さん!」
「照れんなよぉ、教えろよぉ」
直ぐ道の向うには、先生も何人か立ってこちらを見ているし、周囲には物珍しそうな顔の生徒の輪が出来初めている。
そんな注目の中心で恥ずかしくて西原は翔也の腕を解こうとバタバタと暴れた。
どうしてこの人はたまにどうしようもなく子供になるのだろう?
何故かテンションの高い翔也に思い切り困惑しながら、大人気ない力で首を絞めてくるその手を解こうと西原は四苦八苦してしまう。
その間、三都葉は「ははは・・」と楽しそうに笑っていて、順也はと言うと、ちょっと眉を顰めた硬い表情で、車から下ろした荷物を抱えてポツンと三都葉の横に立っていた。
家では元気で我侭が可愛い順也だけれど、一度外に出ると人見知りの引っ込み思案に変身してしまう。
今もこんなに注目されてしまって、きっと恥ずかしくて溜まらないに違いない。
「もうっ、学校の近くで止めて下さいっ!」
そんな順也の気持ちを慮って、西原は思い切って翔也の腕を振り払った。
そんな事をして、もしかしたら後で翔也にもっと苛められるかもしれないけれど、順也の恥ずかしがり屋さんの繊細な気持ちには代えられない。
「順也、お待たせ、もう行こうねっ」
「こらっ!優希っ逃げんなっ!俺の質問に答えてから行けっ」
案の定、ブーブー言う翔也の声を背中に聞きながら、西原は順也の背中に手を掛けようとした。
「いいっ!1人で行くっ」
しかし、順也はその手をすり抜けて、そう言い残し、荷物を両手一杯に抱えてタカタカと校門の方へ走り出してしまうだった。
登校初日にいきなりこんな目に会って、順也の機嫌が悪くなるのは理解出来る。
でも、その声が想像以上に棘のある響きを含んでいる気がして、
「順也っ!待ってっ!少し荷物持つよっ・・あっ、送ってくださってありがとうございましたっ、行って来ますっ」
驚いた西原は自分の荷物を拾い上げて、一応もう一度翔也と三都葉にお礼を言ってから、声を掛けても振り返らない白いシャツの背中を大慌てで追いかけた。
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