「お母さん、桜子さん、お風呂お先に頂きました、あの、俺そろそろ部屋に戻って寝ますね」
「あら、優希ちゃん、もう寝るの?まだ10時よ」
「はい、順也が明日の朝も稽古をするって言っていたんで、今日は早く寝て、明日早起きします」
「あら、残念だわ、三都葉先生も居るし、美味しいお菓子があるから、これから皆でお茶にしようと思っていたのよ」
「すみません、桜子さん、でももう歯も磨いた後ですから」
「気にしなくていいのよ、順也ちゃんの分も取っておくから、明日二人で食べてね」
「うふふ・・優希ちゃんはともかく、順也ちゃんはちゃんと起きれるのかしら?」
「あはは、でも起こすように頼まれてるんで、一応頑張ってみます・・・あっ、お茶の準備、手伝いましょうか?」
「いいのよ、後は私達がするわ、おやすみなさい、優希君」
「おやすみなさい、優希ちゃん、今日も沢山お手伝いしてくれてありがとう、とても助かったわ」
「あぅ、部屋がちょっとお酒臭いよ、順也」
PM10:15
西原が順也の部屋の襖を開けると、中からアルコールの匂いが漂ってきた。
発生源は勿論布団の上の順也で、酔って暑いのか掛けておいた布団を全部蹴飛ばして、枕を抱き締めながらスヨスヨと気持ち良さそうな寝息を立てている。
庭がバーベキューのせいで騒がしいのと煙たいから、クーラーを付けて窓を閉め切ってしまっていたのだけれど、そのせいですっかりお酒の匂いが籠もってしまっているのだった。
「窓、開けるよ、もう外も静かになったからいいよね?」
西原は寝むっている順也にそう小声で断わってから、布団をキチンと掛け直し、締まっていた窓を開け放した。
開けた窓から入り込んでくる、少し生暖かいけれど、自然の夜風が心地良い。
西原は縁側に腰掛けて、持って来たペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら、シャワーで濡れた髪をタオルでゴシゴシと擦って乾かした。
母屋の方からは、人の動く気配と一緒に、時折楽しそうな笑い声が夜風に乗って聞こえてくる。
家元と田淵はとっくに帰ってしまったけれど、桜子と三都葉は泊まっていくことになったので、何時までも賑やかだった。
酔い潰れている順也は別にして、確かに寝るには少し早い時間。
それなのに、せっかくお茶に誘って貰ったのを断わって悪かったかなぁ、と賑やかな声を聞きながら思う。
だけれど、何だか気分が落ち着かなかったので、今日はもう1人になりたかった。
落ち着かない理由は勿論、さっき台所で桜子と三都葉が話してきかせてくれた話のせいだった。
混乱した西原を落ち着かせる為に三都葉が煎れてくれたコーヒーは、自分で言うだけあって、やたらに薫り高くて美味しかった。
「あれ?これってここにある豆と道具で入れたんですよね?何でこんな味になるんですか?」
「ははは・・コツがあるんだよ、企業秘密だけれど、特別に優希君には今度教えてあげよう」
それを台所の大きくは無いテーブルを囲んで飲みながら、西原は桜子と三都葉から、二人が知っている話を聞いた。
有名な剣道宗家である新古心流の、一応まだ跡継ぎと見なされている鷹也が、覚醒剤中毒で海外の病院へ入院するという噂を聞いたのは三都葉だった。
三都葉の家も剣道をしている人間が多くて、その人脈を経由して噂が伝わって来たらしい。
「本家の方々には厳しく箝口令を敷いた筈なんですけれどねぇ」
「人の口に戸は立てられないと言いますもの、仕方ないですわ」
「えっ・・・あの、それじゃあ順也の事とかも噂に・・」
「ああ、それは大丈夫だよ、そんな事までは伝わってないから」
「そこまで細かく噂になっておたら、その場にいて覚醒剤中毒の鷹也さんを警察に通報しなかった三都葉先生が、こんな所で呑気に似合わないエプロン姿を披露なさっている筈ありませんわ」
「あはは、まったくです、まぁ、私にエプロンが似合わない事なんて、もう直ぐ新妻ななる予定のあなたが似合わない事に比べれば、大した問題でもないでは無いですけれどね」
「まぁ・・ホホホホホ・・ねえ、優希君はどっちが似合わないと思うかしら?」
「あはははは・・・遠慮無しで答えなさい、どっちだい?」
「えっ!似合う方でなくて、似合わない方ですかっ・・・・うううう・・うう・・すみません、俺には決められません・・・・」
もしかしたら、順也が覚醒剤を打たれた事も人の口に上っているのかと西原は心配したのだけれど、実際は有名な剣道宗家の家で『そんな不祥事があったらしい』という曖昧な噂が、面白おかしく囁かれているだけらしかった。
「ははは、まあいい・・・その後に、あの敷地を売りたがっているという噂が流れてね・・まさか、翔也に事実かどうか聞くわけにもいかなし、取りあえず桜子さんには知らせておいたんですけれど」
「ほほほ・・・覚えてらっしゃい、それで心配していたところに、御家元がいきなり尋ねてくるからまさかと思いましたけれど、優希君のお陰ではっきりしましたわ、噂は本当でしたのねぇ」
ランキング参加中!
ポチッ↓ありがとうございます♪大変励みになっています〜(^^)
「あら、優希ちゃん、もう寝るの?まだ10時よ」
「はい、順也が明日の朝も稽古をするって言っていたんで、今日は早く寝て、明日早起きします」
「あら、残念だわ、三都葉先生も居るし、美味しいお菓子があるから、これから皆でお茶にしようと思っていたのよ」
「すみません、桜子さん、でももう歯も磨いた後ですから」
「気にしなくていいのよ、順也ちゃんの分も取っておくから、明日二人で食べてね」
「うふふ・・優希ちゃんはともかく、順也ちゃんはちゃんと起きれるのかしら?」
「あはは、でも起こすように頼まれてるんで、一応頑張ってみます・・・あっ、お茶の準備、手伝いましょうか?」
「いいのよ、後は私達がするわ、おやすみなさい、優希君」
「おやすみなさい、優希ちゃん、今日も沢山お手伝いしてくれてありがとう、とても助かったわ」
「あぅ、部屋がちょっとお酒臭いよ、順也」
PM10:15
西原が順也の部屋の襖を開けると、中からアルコールの匂いが漂ってきた。
発生源は勿論布団の上の順也で、酔って暑いのか掛けておいた布団を全部蹴飛ばして、枕を抱き締めながらスヨスヨと気持ち良さそうな寝息を立てている。
庭がバーベキューのせいで騒がしいのと煙たいから、クーラーを付けて窓を閉め切ってしまっていたのだけれど、そのせいですっかりお酒の匂いが籠もってしまっているのだった。
「窓、開けるよ、もう外も静かになったからいいよね?」
西原は寝むっている順也にそう小声で断わってから、布団をキチンと掛け直し、締まっていた窓を開け放した。
開けた窓から入り込んでくる、少し生暖かいけれど、自然の夜風が心地良い。
西原は縁側に腰掛けて、持って来たペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら、シャワーで濡れた髪をタオルでゴシゴシと擦って乾かした。
母屋の方からは、人の動く気配と一緒に、時折楽しそうな笑い声が夜風に乗って聞こえてくる。
家元と田淵はとっくに帰ってしまったけれど、桜子と三都葉は泊まっていくことになったので、何時までも賑やかだった。
酔い潰れている順也は別にして、確かに寝るには少し早い時間。
それなのに、せっかくお茶に誘って貰ったのを断わって悪かったかなぁ、と賑やかな声を聞きながら思う。
だけれど、何だか気分が落ち着かなかったので、今日はもう1人になりたかった。
落ち着かない理由は勿論、さっき台所で桜子と三都葉が話してきかせてくれた話のせいだった。
混乱した西原を落ち着かせる為に三都葉が煎れてくれたコーヒーは、自分で言うだけあって、やたらに薫り高くて美味しかった。
「あれ?これってここにある豆と道具で入れたんですよね?何でこんな味になるんですか?」
「ははは・・コツがあるんだよ、企業秘密だけれど、特別に優希君には今度教えてあげよう」
それを台所の大きくは無いテーブルを囲んで飲みながら、西原は桜子と三都葉から、二人が知っている話を聞いた。
有名な剣道宗家である新古心流の、一応まだ跡継ぎと見なされている鷹也が、覚醒剤中毒で海外の病院へ入院するという噂を聞いたのは三都葉だった。
三都葉の家も剣道をしている人間が多くて、その人脈を経由して噂が伝わって来たらしい。
「本家の方々には厳しく箝口令を敷いた筈なんですけれどねぇ」
「人の口に戸は立てられないと言いますもの、仕方ないですわ」
「えっ・・・あの、それじゃあ順也の事とかも噂に・・」
「ああ、それは大丈夫だよ、そんな事までは伝わってないから」
「そこまで細かく噂になっておたら、その場にいて覚醒剤中毒の鷹也さんを警察に通報しなかった三都葉先生が、こんな所で呑気に似合わないエプロン姿を披露なさっている筈ありませんわ」
「あはは、まったくです、まぁ、私にエプロンが似合わない事なんて、もう直ぐ新妻ななる予定のあなたが似合わない事に比べれば、大した問題でもないでは無いですけれどね」
「まぁ・・ホホホホホ・・ねえ、優希君はどっちが似合わないと思うかしら?」
「あはははは・・・遠慮無しで答えなさい、どっちだい?」
「えっ!似合う方でなくて、似合わない方ですかっ・・・・うううう・・うう・・すみません、俺には決められません・・・・」
もしかしたら、順也が覚醒剤を打たれた事も人の口に上っているのかと西原は心配したのだけれど、実際は有名な剣道宗家の家で『そんな不祥事があったらしい』という曖昧な噂が、面白おかしく囁かれているだけらしかった。
「ははは、まあいい・・・その後に、あの敷地を売りたがっているという噂が流れてね・・まさか、翔也に事実かどうか聞くわけにもいかなし、取りあえず桜子さんには知らせておいたんですけれど」
「ほほほ・・・覚えてらっしゃい、それで心配していたところに、御家元がいきなり尋ねてくるからまさかと思いましたけれど、優希君のお陰ではっきりしましたわ、噂は本当でしたのねぇ」
ランキング参加中!
ポチッ↓ありがとうございます♪大変励みになっています〜(^^)





