西原&順也くんシリーズのブログです。 <登場人物> 西原 優希(さいばら ゆうき)日仏クォーター、才色兼備な中学2年の14歳。幼馴染の順也が大好き。 /鳳 順也(おおとり じゅんや)ちょっと小さいけれど、剣道チャンピオンのやっぱり14歳。綺麗で優しい西原が大好き。
「順也ちゃんが、あんなに意固地に怒るなんておかしいと思ったわ」
 西原から渡されたお盆をテーブルの上に戻して、椅子に座り直した桜子は大きく溜息をついた。
「今更だけれど、順也ちゃんと約束しているのに、どうしてあんな場面になっちゃったのかしら?」
 そして別に責めている様子は無いけれど、桜子にそう聞かれて、床の上に座り込んだ西原は心底自分の浅はかさが嫌になってしまう。
 
 どうして?と言われれば、ただ順也の為に出来る事をしたかっただけだった。
 覚醒剤中毒の鷹也を病院に入院させ、犯罪者のフランス人達を本家から遠ざけ、騒ぎが大きくならないように、万が一にでも警察沙汰になったりしないようにする。
 そうする事が、順也を守る為の最善の方法だと思っていた。
 自分の身などどうなっても構わないと、誰に触られようが、誰の前でどんな姿になろうが、そんな事はどうでも良い事だと、その時は何の迷いも逡巡も無かった。

 順也を守るという重大な使命に比べれば、本当にどうでもいいこの存在。
 自殺する位に弱っていた母を見殺しにした7年前のあの日から、自分にはもうこの世で幸せに生きる権利を失った筈だった。
 薬を飲まなければ心の平静を保てない母が、それを勝手に要らないと決め付けて怠っている事を、ちゃんと近くの大人に知らせなかった。
 そうした方が母に気に入って貰えると、自分の得ばかりを考えてしまった。
 その結果、背負ってしまった大き過ぎる罪に雁字搦めになって、順也が傍にいてくれなければ、きっと今頃は深い心の闇に摑まってしまっていただろう。
 順也が居てくれたからこそ今の自分があって、順也がいなければ一瞬も今の存在を保てない、総てが順也故の自分。
 順也との約束を忘れた分けではない。
 順也が心配してくれる気持ちは心から嬉しかったし、その言葉は受け取って大切に心に仕舞った。
 だけれど、何をそんなに心配するのか、その理由はまったく分からいままだった。
 こんなにどうでもいい身体の事で、順也がそこまで真剣に怒るだなんて、想像もしていなかった。

「あ・・・順也との約束を忘れたわけじゃ無いんです、ただ・・・俺なんか・・・俺の身体なんか順也の為ならどうなってもいいから・・・あの場が上手く収まるなら何をされてもいいって思って・・・」
 どうしてという桜子の問いに、西原はしどろもどろに答える。
 でも、どう言い訳しても、順也との約束を破っていい理由にはならなかった。
 この3日間、あれだけ硬く交わした約束を破られたと思い込んでいた順也は、どんなに悔しい気持ちでいただろう?
 『触るな』と言われて当然だ。
 約束を破っただけならまだしも、その約束を破った事にすら気付いていない無神経な恋人に、ベタベタと優しくされたって疎ましいだけだろう。 

 3日間も約束を破った事を気付かないままボンヤリと過ごしてしまった。
 余りの自分の鈍感ぶりが情けなくて、もう西原はどんな顔をして順也に会えばいいのか分らない。
 しかも、多分そのとばっちりで、史也と智也と翔也と桜子まで順也に嫌われてしまい、これがバレたら、この家にも申し訳なくて出入り出来なくなってしまう。
 せっかく、鷹也の事での出入り禁止事件が解決したばかりなのに、また同じ問題に突き当たり、西原はショックでへたり込んだ床から頭を上げる事も出来ない。
「はぁ・・・優希君は何から何まで完璧なのに全然奢り高ぶらなくて、むしろ笑っちゃう位に卑屈で、そういうところを私は大好きよ」
「笑っちゃう位に卑屈・・・?」
「傍から見ていると、そのギャップに大ウケよ」
「ううっ・・俺を見てそんなに誰かがウケてるなんて知りませんでした」
「ほほほ・・人生何時でも油断は禁物よ、でもね、ウケ狙いもいいけど」
「いや、狙っていませんよ?」
「もう昔の自分の事は許してあげて、今の自分を大切に扱ってあげないと・・順也ちゃんは、そんなどうでもいい優希君でも大好きなんだから、汚されたり傷ついたりしたら、きっととても悲しむわ」
 幸い桜子はとばっちりを受けた事を怒ってはいない様で、落ち込む西原を何時もの調子で慰めてくれる。
「とにかく出来るだけ早く謝った方がいいわ、このオヤツを持って、『順也、約束を破ってゴメンネ、お詫びのオヤツ食べる?それとも俺を食べてみる?』とか言って、何時もの胸焼けしそうな甘ったるい笑顔で謝れば、ラブラブなんだからきっと許して貰えるわよ」
 そして絶対に言いたくない様な謝罪方法の例を挙げて直に順也の部屋に行くよう薦めてくれるのだが、西原は順也にまた拒絶されたらと想像すると身が竦んで、にわかにはその勇気を持てなかった。



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2008.05.23(21:52)|hanging gardensコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
 家人が出てくるのを門前で待っている俺とユウキとアレン・マリーの周囲には、屈強な体格の男の人達が何人も立っている。
 皆、ユウキが雇っている護衛の為の私兵の人達で、ユウキの家の家紋の入ったお揃いの革の鎧を身に着けていて、手には長い槍を持っていた。
 俺が屋敷から外に出る時も必ず付いてきてくれるのだけれど、周りを囲まれてしまうと何も見えなくなってしまうので、本当は余り好きではない。
 でも、今は抱き上げてくれているユウキの背も同じ位に高いので、銀色の冑を被った頭越しにあたりを見回す事が出来た。
 これから訪ねる先の目に前の異様な門構えの家も去る事ながら、俺はこの家が立っている街並みも珍しくて仕方が無かった。
 花柳街。
 今、俺たちが立っている場所はそう呼ばれているらしい。
 俺の目の前にある、これから訪ねる名人に家の高い壁は色の無い石積みだけれど、その両側も、道の反対側にある建物も、全部が目に眩しい朱の色に塗られていた。
 先が行き止まりになっているこの路地は道幅がちょっと狭いので、ユウキの家の大きな馬車はここまで入ってこれない。
 朝だというのに、周囲には人影がまったくなくて、でも建物の中からは、時折物音や人の話し声がしたりして、中には人がちゃんと居ることが分った。
 見上げると狭い路に沿って立つ背の高い赤い建物に、何だか押し潰されそうな気分になる。
 路に面した一階の部分には、どの家にも大きな大きな窓があって、そこには何故だか朱色に塗られた鉄格子が嵌めてあった。
 よく見ると、他の窓全部にも赤く塗られた格子が嵌められている。
 何か動物の檻みたいだなぁ。
 そう思ったけれど、でも格子の中には、やはり赤い絨毯と色とりどりのクッションが置かれていて、牛とか馬とか動物が入るのも変な感じだ。
「ユウキィ・・あの中には人が入るのか?」
 良く分らないので、指差しながら聞いてみたら、
「うん?そうだけれど、ジュンヤは気にしなくていいんだよ」
「そうなのか?それじゃあ、あそこに『嬰泉楼少年男娼専門』って看板があるけど、何かのお店なのか?」
「読まなくていいのっ」
 ちょっと怒った声で答えてくれたユウキに何故か目隠しされしまった。
「まったく、だから屋敷に来てくれる様に頼んだんだ、代金なら2倍でも3倍でも払うと言っているのに、大体何でこんな教育に悪い場所に工房を構えているんだ?」
 その後、俺は景色が見えないように地面に下ろされしまい、ユウキは機嫌の悪い小さな声でブツブツと文句を言った。
「仕方ないでしょうっ、嫌なら来なくていいと言われてしまったんですからっ、それに教育に悪いのはユウキ様がどうしても作ると言って聞かないリングなんてモノの方がよっぽどですっ、嫌なら今からでも帰りますかっ?」
 そして、それを聞いたアレン・マリーさんに、今日もビシッと怒られてしまった。


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2008.05.23(12:34)|LOVE RINGコメント(0)トラックバック(0)TOP↑
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