意味も理由も不明だがが、道着を脱いで演舞を披露する。
鷹也の言葉に『やります』とは言ったが、興味津々で見られている前で脱ぐのも、増してや鷹也に脱ぐのを手伝って貰うのもまっぴらだったので、西原は一端道場の外に出た。
「優希君、ありがとうもう十分だよ、何も優希君がそこまでするは無いんだから止めてください」
「優希、鷹也さんは病気なんだって判っているだろう?言う事全部にまともに取りあってどうする?」
さっきの控え室に戻り、汗に濡れてしまった上着を脱いでいると、着いて出てきた史也と智也がオロオロと声を掛けてくる。
でも、西原は何を言われようが、鷹也の言葉通りにするのを止めようとは思わなかった。
「いえ、俺は何でも大丈夫です、それより最初の予定通りに何でも鷹也さんの気の済む様にして今日を穏便に済ませましょう、変に騒いで警察沙汰にでもなったら、順也の為になりませんから」
「まあ・・それはそうだけれど、それだからって優希がこんなマネをする事は無いだろ」
「そうですよ、優希君にそこまでご迷惑は掛けられません」
「順也の事で迷惑な事なんて何一つありません」
「そのお気持ちはあり難いですけれど・・・優希君にこんな事をさせたら、アメリカにいる西原に申し訳が立ちませんし・・」
「もう一年も顔を見ない父の事なんてどうでもいいですっ」
「そう言う訳にもいかないでしょう・・ともかく優希君が服を脱ぐ必要なんてまったく無いですよ、こんなおかしな話はありません」
「まったく、あのお客も何で優希に服を脱げなんて言うんだ?この家から金を騙し取るのに、そんな事は何の関係も無いだろうに」
「ずっとわぁわぁお話しをしているんですけれど、何を言っているのか判りませんからねぇ・・・困った方々です」
「とりあえず必要の無い事は断わりましょう、お父さん、俺が行ってきます」
「そうですね、それがいいですね」
「いえっ、断わらないで下さいっ、必要性ならちゃんとありますからっ!」
荷物の中からタオルを出して汗まみれの身体を拭き、順也が飲みたがるかもと思い持って来ていたスポーツドリンクを一気に飲み干す。
それで落ち着いたので、最後に解れてしまった髪の毛を結び直した。
もう一度道場に戻る準備を進める西原が、まったく言う事を聞く気の無い事を悟った史也と智也は、強引に演舞を断わってしまおうとする。
しかし、話を決めて急ぎ足で出て行こうとする智也を、西原はキッパリとした声で引き止めた。
「優希?」
「優希君?」
引き止められて振り返った智也と、正座した姿から見上げてる史也に見られて、西原は一瞬言葉に迷う。
史也達に納得してもらう為に、あのフランス人達の言っている事をどう説明したものか迷ったのだが・・・
「ぷっ、あはっ・・・あはははははっっ・・すっ、すみません、あはははは・・・っ」
しかし、すると自然と愉快過ぎるフランス語の会話が頭の中に浮かび、笑い出したいのを我慢していた事を思い出して、西原はそのまま大笑いしてしまった。
「笑ってすみませんでした・・・」
「はあ、それは構いませんけれど、フランス語も分るなんて優希君は本当に多才ですねぇ」
「料理も勉強も運動も出来るし、見かけもそれだし無敵だなぁ・・これからも順也をよろしく頼むな、優希」
「ああ、本当に、順也君は良い子ですけれどオットリさんですから、優希君と一緒だと安心です、よろしくお願いしますね、優希君」
「えええっ!こちらこそっ、よろしくお願いしますっ」
西原が道場で聞いた会話を話して聞かせると、史也も智也もその話の内容にも去る事ながら、西原がフランス語を理解している事にもっと驚いたようだった。
心の病だった母に手を上げられるのが恐くて、仕方なく覚えてしまったフランス語。
話せるようになった自慢できない経緯までは説明しなかったけれど、まあ、フランス人とのクォーターという事で、そこな何となく納得してくれたらしい。
やたらと感心されてしまい、それで自分の株も上がった様で、西原は今まで疎ましいだけだった過去に、ひれ伏して感謝したくなる。
順也の家族に順也をよろしくと言って貰えるなんて、これ以上嬉しい事は滅多に無かった。
一頻り感心した後に、「それでは尚更危ない」と史也も智也ももう一度演舞を披露する事に大反対した。
「これで今日は大人しく帰って貰えるんですからやらせて下さい、ここにはまだ順也もいるのにこれ以上の騒ぎなんか真っ平です、俺を攫うのはこの家からお金を騙し取ってからだと言っていましたから俺の心配はいりません、順也や鷹也さんの事が落ち着いたら、方法を考えて警察にでも大使館にでも訴えたらいいと思います」
しかし、西原が熱心にそう言うと、渋々といった様子で納得してくれたのだった。
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、どうぞよろしくお願いします・・はぁ、それにしても羨ましいですねぇ」
「あっ、お父さんもそう思いますか?」
息も整って、しかも史也達に『順也をよろしく』とまで言って貰えて、もう一度演舞を通して披露する気力もしっかり出来た。
なので、上着を脱いだままの姿で部屋を出ようとすると、何やら史也達に羨ましがられてしまう。
何の事だか分らなくて「何がですか?」と尋ねると、
「昔ね、優希君みたいな身体になりたくて、色々努力した時期があったんですよ、まだ若い頃に」
「俺も高校生位の時に頑張ったんだけれど、ウチの一家はいくら運動しても筋肉にならないんだよ、授業で水着とかになると貧弱で嫌だったんだ」
「私も嫌でしたねぇ、そう言えばそれで翔也は変な薬を飲んでいましたね」
「プロテインですよ、マズいのとお腹壊したので3日で止めましたけれど、優希は見る見るいい身体になったからな、この筋肉が欲しかったんだよなぁ」
「欲しかったですねぇ」
「あ、えっと・・はぁ、あはは・・」
誉められるのは嬉しい気がするが、返事に困る事をシミジミ言われてしまった西原は、曖昧に笑ってそそくさと部屋から出たのだった。
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鷹也の言葉に『やります』とは言ったが、興味津々で見られている前で脱ぐのも、増してや鷹也に脱ぐのを手伝って貰うのもまっぴらだったので、西原は一端道場の外に出た。
「優希君、ありがとうもう十分だよ、何も優希君がそこまでするは無いんだから止めてください」
「優希、鷹也さんは病気なんだって判っているだろう?言う事全部にまともに取りあってどうする?」
さっきの控え室に戻り、汗に濡れてしまった上着を脱いでいると、着いて出てきた史也と智也がオロオロと声を掛けてくる。
でも、西原は何を言われようが、鷹也の言葉通りにするのを止めようとは思わなかった。
「いえ、俺は何でも大丈夫です、それより最初の予定通りに何でも鷹也さんの気の済む様にして今日を穏便に済ませましょう、変に騒いで警察沙汰にでもなったら、順也の為になりませんから」
「まあ・・それはそうだけれど、それだからって優希がこんなマネをする事は無いだろ」
「そうですよ、優希君にそこまでご迷惑は掛けられません」
「順也の事で迷惑な事なんて何一つありません」
「そのお気持ちはあり難いですけれど・・・優希君にこんな事をさせたら、アメリカにいる西原に申し訳が立ちませんし・・」
「もう一年も顔を見ない父の事なんてどうでもいいですっ」
「そう言う訳にもいかないでしょう・・ともかく優希君が服を脱ぐ必要なんてまったく無いですよ、こんなおかしな話はありません」
「まったく、あのお客も何で優希に服を脱げなんて言うんだ?この家から金を騙し取るのに、そんな事は何の関係も無いだろうに」
「ずっとわぁわぁお話しをしているんですけれど、何を言っているのか判りませんからねぇ・・・困った方々です」
「とりあえず必要の無い事は断わりましょう、お父さん、俺が行ってきます」
「そうですね、それがいいですね」
「いえっ、断わらないで下さいっ、必要性ならちゃんとありますからっ!」
荷物の中からタオルを出して汗まみれの身体を拭き、順也が飲みたがるかもと思い持って来ていたスポーツドリンクを一気に飲み干す。
それで落ち着いたので、最後に解れてしまった髪の毛を結び直した。
もう一度道場に戻る準備を進める西原が、まったく言う事を聞く気の無い事を悟った史也と智也は、強引に演舞を断わってしまおうとする。
しかし、話を決めて急ぎ足で出て行こうとする智也を、西原はキッパリとした声で引き止めた。
「優希?」
「優希君?」
引き止められて振り返った智也と、正座した姿から見上げてる史也に見られて、西原は一瞬言葉に迷う。
史也達に納得してもらう為に、あのフランス人達の言っている事をどう説明したものか迷ったのだが・・・
「ぷっ、あはっ・・・あはははははっっ・・すっ、すみません、あはははは・・・っ」
しかし、すると自然と愉快過ぎるフランス語の会話が頭の中に浮かび、笑い出したいのを我慢していた事を思い出して、西原はそのまま大笑いしてしまった。
「笑ってすみませんでした・・・」
「はあ、それは構いませんけれど、フランス語も分るなんて優希君は本当に多才ですねぇ」
「料理も勉強も運動も出来るし、見かけもそれだし無敵だなぁ・・これからも順也をよろしく頼むな、優希」
「ああ、本当に、順也君は良い子ですけれどオットリさんですから、優希君と一緒だと安心です、よろしくお願いしますね、優希君」
「えええっ!こちらこそっ、よろしくお願いしますっ」
西原が道場で聞いた会話を話して聞かせると、史也も智也もその話の内容にも去る事ながら、西原がフランス語を理解している事にもっと驚いたようだった。
心の病だった母に手を上げられるのが恐くて、仕方なく覚えてしまったフランス語。
話せるようになった自慢できない経緯までは説明しなかったけれど、まあ、フランス人とのクォーターという事で、そこな何となく納得してくれたらしい。
やたらと感心されてしまい、それで自分の株も上がった様で、西原は今まで疎ましいだけだった過去に、ひれ伏して感謝したくなる。
順也の家族に順也をよろしくと言って貰えるなんて、これ以上嬉しい事は滅多に無かった。
一頻り感心した後に、「それでは尚更危ない」と史也も智也ももう一度演舞を披露する事に大反対した。
「これで今日は大人しく帰って貰えるんですからやらせて下さい、ここにはまだ順也もいるのにこれ以上の騒ぎなんか真っ平です、俺を攫うのはこの家からお金を騙し取ってからだと言っていましたから俺の心配はいりません、順也や鷹也さんの事が落ち着いたら、方法を考えて警察にでも大使館にでも訴えたらいいと思います」
しかし、西原が熱心にそう言うと、渋々といった様子で納得してくれたのだった。
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、どうぞよろしくお願いします・・はぁ、それにしても羨ましいですねぇ」
「あっ、お父さんもそう思いますか?」
息も整って、しかも史也達に『順也をよろしく』とまで言って貰えて、もう一度演舞を通して披露する気力もしっかり出来た。
なので、上着を脱いだままの姿で部屋を出ようとすると、何やら史也達に羨ましがられてしまう。
何の事だか分らなくて「何がですか?」と尋ねると、
「昔ね、優希君みたいな身体になりたくて、色々努力した時期があったんですよ、まだ若い頃に」
「俺も高校生位の時に頑張ったんだけれど、ウチの一家はいくら運動しても筋肉にならないんだよ、授業で水着とかになると貧弱で嫌だったんだ」
「私も嫌でしたねぇ、そう言えばそれで翔也は変な薬を飲んでいましたね」
「プロテインですよ、マズいのとお腹壊したので3日で止めましたけれど、優希は見る見るいい身体になったからな、この筋肉が欲しかったんだよなぁ」
「欲しかったですねぇ」
「あ、えっと・・はぁ、あはは・・」
誉められるのは嬉しい気がするが、返事に困る事をシミジミ言われてしまった西原は、曖昧に笑ってそそくさと部屋から出たのだった。
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