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2011.05.03 *Tue*

your voice is heard 22

―――PM11:30
 お客様も全員帰り、家族もそれぞれの部屋に入り(翔也は三都葉と一緒に三都葉の実家へチャリーパイを返しに出掛けた)鳳家は静かさを取り戻していた。
 風呂に入り終えた俺は、何時もの日課になっている台所の火の元を確認した後に、冷蔵庫から取り出した500mlのミネラルウォーターを持って、離れの順也の部屋へと戻った。
 今夜も熱帯夜なので、ゆるく冷房を掛けた部屋の中は程好く涼しい。
 俺と順也の分。
 二組並べて敷いてある布団の、
「あう、何でそっち?」
 何故か俺の布団の上に順也が寝ていて、順也の腕の中には茶色が小さな身体を丸めて眠っていた。
順也も茶色も目一杯はしゃいでいたせいで疲れてグッスリ眠っているらしく、俺が部屋に入った気配くらいでは、まったく目を覚ます様子は無い。
 俺は、相変わらず布団を蹴ってしまっている順也にそれを掛けなおし、
「おやすみ、順也」
―――チュ・・・
 小さな寝息を立てているふっくら柔らかい唇にそっとキスをしてから、もう一度フスマを開けてそっと部屋の外へ出た。

 庭に出ると、
―――サーーーー・・・
 ついさっきまでなかった風が吹いていて、タンクトップを着ている俺の裸の肩を撫でた。
 風には僅かな湿気が感じられて、『明日は雨かも?』なんて予感が頭に浮かぶ。
 8月31日。
 まあ、明日の順也の予定は宮田のクリニックへ出掛けるだけなので、天気は何でもいいといえばいい。
 庭に置いてある縁台に腰を下ろして、冷たい水を一口飲んでから確認すると、
「明日の順也の予定は、1:30から宮田のクリニックの受診のみ・・と」
 さっき部屋から持ち出した手帳をには、確かに記憶通りにそう記入してあった。
しかし、明日は余裕のある一日だけれど、明後日からはいよいよ高校の新学期が始まる。
「9月1日、始業式、8:30〜講堂」
 俺がケガをして間抜けに一年間も寝ていたせいで、順也も俺も学校へ通うのは一年半ぶり、高校へは勿論初めての登校だ。
 始業式の日には、新しい学校でクラスメートになる予定の、桜子の従兄弟の館林雪君が迎えに来てくれて、学校まで一緒に行ってくれることになっているので問題はないどろう。
だけれど、それから始まる高校生活を想像すると、不安な気分になった。
 何が不安なのかと言うと、まず一学期遅れて入学するのも不安だし、
「目立って順也が苛められたらどうしよう?」
入学するのが桜子紹介のセレブな小中高一貫高というのも不安だし、
「平民の子だって順也が苛められたらどうしよう?」
それがしかも男子校というのも、
「女子がいないから、代わりに可愛い順也がエッチな苛めを・・・っぎゃーーーー><恐ろしくて想像したくないっ!!」
大きな不安の種だった。
 俺1人なら、どんな高校生活でも別にかまわないのだが、順也が一緒だと考えると不安な事は、次から次へと頭に浮かんでくる。
 新しい環境で俺はちゃんと順也を守れるだろうか?
 いや、どんな困難があっても全身全霊を掛けて順也を守ることは当たり前なのだが、それに加えて順也が少しでも嫌な思いをすることが無いようにしなければならなかった。
 明後日からの新学期の事を考えるととにかく不安で、
「あう、今夜も眠れそうにないかも・・・」
 ここ一週間ほど、俺は基本寝不足だった。

 もし、順也の声が出る様になっていれば、ここまで不安にはならなかっただろう。
 せめて『新学期』までに順也の声が出るようにならないかと、俺も、そして家族の皆も願っていたが、もう新学期までは間がなさ過ぎた。
「あ・・・、もしかして順也も?」
 熱帯夜とはいえさすがにこの時間となるといくらかは涼しい庭の端っこで、縁台に座ってボンヤリ手帳を見ているうちに、俺はふと思いついた。
 順也がどうして、今日の肝試しに並々ならない、焦ってご機嫌が悪くなる位に、期待をしていたのか?
 二人きりになったら落ち着いて聞いてみようと思っていて、
「順也、二人きりでちょっと話が・・・」
「(カキカキ<約束したエッチだな、今行くぞ)」
「あうっ、そうじゃなくてっ」
「あ?メシの最中にわざわざ二人で話ってなんだよ?お客もいるのに失礼だろう?どうせたいした用事じゃないんだろうし、ここでしろよ」
「(カキカキ<さすがの俺でもここでは出来ないぞ)」
「は?何が出来ないのかわからん、前のページを見せてみろ」
「(いいぞ)」
「うっわーーーーーーーーーーーーーぁぁぁっ、絶対にダメーーーーーーぇぇぇぇ><」
結局今日はそのチャンスは無かったけれど、今何となくその答えがわかった気がした。

 マイペースで物事に動じないところが順也の魅力のだけれど、そのマイペースさ故に、順也は声の出ない生活にも馴染んで何の不便も感じていないようだった。
 周囲にいる大人達(俺もだけれど><;)が、よってたかって不自由がないように面倒を見てしまうのも、余り良くないのかもしれないが、
「(カキカキ<なんならもうこのままでもいい気がしてきたぞ)」
「なにがなんならなのか判らないしっ、そんな気もしちゃ駄目だよっっ」
 順也からはまったく声を取り戻したいという欲求とか焦りが、まったく感じられなかった。
 それが、今回の肝試しに限って、妙にやる気を出していたのは何故なんだろう?
 もしその理由が、俺の考えた通りに明後日からの始まる新学期を目指したのだとしたら、
「う〜〜〜〜〜〜〜ん、だとしたら何なんだろう?」
 もしそれが今日の順也の本気の理由だとしても、『新しい学校へ行く不安』で、順也がその真骨頂のマイペースを崩すのかというと、
「(カキカキ<大変だぞっ、西原っ)」
「え?どうしたの?順也っ、客間で雪君に高校の話を聞いてたんでしょ?何かあったの?」
「(カキカキ<あのなっ、雪君の話だと高校には生徒用の食堂があるんだぞ)」
「うん、そうらしいね、メニューも多くて、ハンバーグがなかなか美味しいらしいよ」
「(カキカキ<んんっ、知ってたのか?知ってて黙ってるなんてオマエも人が悪いぞっ)」
「人が悪いって・・^^;で、そのハンバーグがどうしたの?」
「(カキカキ<そのハンバーグを俺は毎日食べるぞっ、学校で毎日ハンバーグが食べられるなんて、早く学校に行きたいぞっ)」
 むしろ、順也は新学期を楽しみにしていた節もあり、それは可能性が低い気がした。

「ああっ、わかんないっ、もう寝よう><」
 俺はしばらくトロリと晴れている熱帯夜の夜空を見上げて考えていたけれど、チビチビ飲んでいたペットボトルの水が無くなったので、それを機に座っていた縁台から腰を上げた。
 確かに明日の順也の予定は午後からだけれど、俺は朝から(この家の嫁としてっ!!)早朝から家事に精をださなければならない予定だった。
 どうして順也が肝試しに本気だったのか?
 その理由はやっぱり順也本人に尋ねてみようと思ったのだけれど、
「はあ・・、でも順也は素直に話してくれるかなぁ?」
 もし、順也がその理由を誰にも知られたくないと思っていたら・・・?
 普段は素直な良い子だけれど、こうと自分で決めたことは絶対に曲げない順也から話を聞きだす事は、なかなかの無理難題と思われた。

 順也と茶色が俺の布団で寝て居るので、部屋に戻った俺は空いている順也の布団に潜り込んだ。
 ―――優希には前も話したことがあるけれど、順也君には声をだしたくない理由があるのかもしれませんね、その理由のせいで本人も声を出したくても、出せない状況が続いているのかもしれません
 すると思考は段々と、昼間に山間のドライブインで宮田から聞いた、話について考え出してしまう。
 声を出したくないと思わせる秘密が順也の心の中にあるのかも?
 その可能性については、以前に宮田から話を聞いていたので、あるとしたらそれが何なのかはについては、時々頭の中で考えていた。
 しかし、その謎の答えも出ないうちに、
「声を出したくないり理由があるとして、それが新学期までに声を出したい理由は関係あるのかな?や、新学期までは俺の想像か・・、じゃあ今日のいきなりのやる気は何?」
 更なる謎が追加されてしまい、
―――宮田は順也の治療方針を変えたいと思っているといっていた
「それって、どんな方針?順也が苦しがったりとか・・・?って、ああっ、また別の疑問が割り込んできたっっ><」
 いざ寝ようと思っても、不安や疑問がグルグルしてしまい、今夜も俺に眠気はなかなか訪れなかったのだった。


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2011.04.30 *Sat*

your voice is heard 21

 肝試しから家に帰ると、鳳家ではちょっとした騒ぎがあった。
 その日の夜には、順也の為に肝試しに付き合ってくれた人達の為に、鳳家では肝試しの参加者全員を招いての食事会を開く予定だったのだが、
「(ただいま〜〜)」
「キュ・キュ・キュ・キューーー」
「ただいま〜〜、う〜〜、夕方なのに外は暑〜〜ぃ、おい、優希、麦茶入れろっ」
「お帰りなさいっ、順也、翔也さん、茶色、はい、麦茶は直ぐに入れます、翔也さんっ、あっ、順也っ、茶色を家に入れるなら足を拭かなきゃダメだよっ」
 順也と翔也が御近所の獣医へ連れて行って、『健康優良児』のお墨付きを貰って帰ってきた茶色のこれからをどうするかについて話し合いになったのだ。
 飼い主の判らない野良犬なのだから保健所・・・、なんて話には勿論ならなかった。
 むしろ飼いたい人が引く手あまたで、皆で囲んだ夕食の席は紛糾した。
 まずは当然順也が名乗りを上げたのだが、
「(カキカキ<茶色は俺が見つけたんだから俺が飼うぞっ!)」
「順也が気に入っているならいいんじゃないか?俺も散歩は手伝うよ」
「しょうがねえな、俺もロードワークついでに、散歩させてやるよっ」
「お父さんも、前々から犬は飼いたいと思っていました、是非我が家で面倒見ましょう、ねえ?お母さん^^」
「ダメです、犬は絶対に飼いません」
 しかし、父親の史也と智也、翔也は賛成してくれたけれど、今日も和服に割烹着の良く似合っているお母さんの小枝子が反対して、鳳家では飼えそうにない雰囲気が流れた。
 すると、ぞくぞくと、
鳩「よろしければ、我が家で面倒を見ますわ、ねえ、総一郎さん?」
総「そうですね、旦那様も奥様も動物はお好きですから大丈夫だと思いますが・・・、ドーベルマンのダッシュとアッシュに虐められたりしないでしょうか?」
三「では私の実家に預けましょう、チェリーパイと仲良くなっているみたいですし」
チ「(へっへっへっへっへっへっ・・・)」
桜「私の実家でもよろしいですわ、何時でも順也君が遊びに行けばよろしいんじゃないかしら?」
宮「我が家も、瞳が犬好きです」
梅「あっ、俺も飼いたい、ユウコリン、犬が大好きだし」
松「俺も〜、姉ちゃんと妹がずっと犬を飼いたがってる」
若「あ〜〜、俺んちは絶対無理、食い物商売、家狭い、兄弟多数」
 皆が名乗りを上げて、一時収集がつかなくなった。
「(・・・茶色は俺が見つけたんだぞ)」
「キューーーーーン・・・」
 しかし、茶色を抱いた順也がションボリしているのに気がついて皆が口をつぐみ、
「あの、お母さん、どうして茶色を飼っちゃダメなんですか?」
 俺がそう聞くと、皆がお茶を煎れていた小枝子に注目した。
 俺には、家の前を散歩している人の犬を「まあ、可愛いのね」と言いながら撫でたりしている小枝子が、とても犬嫌いには思えなかったのだ。
 すると皆に注目された小枝子は、ちょっと困ったように小さな溜息をついて、昔の出来事を話してくれた。
 俺も順也も知らないことだったのだが、鳳家では20年くらい前に一匹のマメ芝犬を飼っていたそうだった。
 小枝子が子供の頃からこの家で飼われていたその犬『マメさん』は、長生きだったけれど、智也が4歳、翔也が2歳の頃に、老衰で死んでしまった。
 その時に、智也と翔也は、
「え〜〜〜〜〜〜ん、お母さんっ、マメちゃんはどうして動かないのっ?」
「ふえ〜〜〜〜〜ん、おかーしゃぁ、マエちゃんは、ろうしてうおかないの?」
 何時までも泣き止まないし、
「はあ・・、マメさん、どして私を置いて死んでしまったんですか・・・」
 父親の史也までドンヨリと落ち込んでしまっているしで、
「それがマメさんが死んで一ヶ月も続いたのよ、私だって悲しいのに皆を慰め続けてどれだけ大変だったか、その時に二度と犬は飼わないと決めたんです」
 一ヶ月間、家の中がずっとお通夜みたいで、それは大変な思いをしたらしかった。

「それなら、もしも茶色ちゃんが天寿をまっとうした時には、この家の嫁として私もお義母様と一緒に皆を励ましますわ」
「俺も(この家の嫁としてっ><)一緒に皆を励ましますっ!」
「俺達も子供じゃねえんだから、もう泣かねえよな?なあ、兄貴」
「ああ、その時には俺も50近いだろうし、流石に泣き喚いたりするのは我慢すると思うよ」
「そんな事もありましたねぇ、反省します、すみませんでした、お母さん」
 しかし、桜子、俺、翔也、智也、史也、が順に励ましたり、謝ったりしているうちに、
「そうねえ、もう皆大人になるし、大丈夫かしら?」
 小枝子の気持ちも段々代わり、
「順也君の治療の為にも、動物を飼うというのは良い効果が期待出来ると思いますよ」
 順也の主治医である宮田のその一言が決め手になって、
「それなら、茶色ちゃんはウチの子にしましょう」
 最後は茶色を飼うことを許してくれたのだった。

 順也は凄く喜んで、
「(ありがとうなっ、お母さんっっ)」
「おめでとうございます、順也さん」
「良かったな、鳳、俺はちょっと残念だったけれどさ」
「俺も残念だけれど、茶色は鳳が助けたんだものな」
「茶色も鳳に懐いているみたいだし、ここに居るのが一番いいんじゃねえの?じゃあよ、今日は皆で茶色とチェリーパイと遊ぼうぜ」
「(んっ、いいぞっ!)」
「キュ・キュ〜〜〜」
「(へっへっへっへっへっへっ・・・)」
 その夜は茶色を抱いてずっと上機嫌だった。

 だけれど、いくら頬をピンク色に可愛く上気させながら、興奮したようにコロコロと笑っていても、
「(何だか楽しすぎて喉が渇いたぞ、なあ?茶色)」
「キュ・キュ〜〜〜」
「(カキカキ<西原ぁ、何か飲み物をくれよな)」
「はいはい、オレンジジュースでいい?茶色はお水だね」
「(カキカキ<出来れば大人の皆さんと同じビールがいいぞ)」
「そ・ん・な・のっ、絶対にダメっっっ!!!」
 順也の声が思わずポロっと出たりする事は結局なくて、いきなりの『茶色効果』にちょっと期待していた俺は、こっそりがっかりしてしまったのだった。

 

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2011.04.28 *Thu*

your voice is heard 20

 順也が行方不明になっていたのは、警備員の犬飼から『犬が閉じ込められているかも?』という話を聞いて、犬飼と一緒に地下室へ茶色を救出に行っていた為だった。
 そして茶色は、昨日の夜中に肝試しに来て追い返された大学生達が、病院地下のボイラーの、あろうことか焼却口の中に押し込めていったものらしい。
 夜に肝試しする時に、動物の鳴き声が聞こえてきたら怖いだろうと思い、わざわざ日が暮れる前に忍び込んで、その時は警備の人には気づかれずに置いていったのだった。
 もう少し順也と犬飼の救出が遅ければ、ボイラーに火が入って茶色は丸焼きになってしまっていただろう。
『最強の心霊スポット』言われていた廃病院地下へ臆する事無く乗り込み、可愛そうな子犬を救出した。
何から何まで立派な順也だったけれど、しかし茶色を助ける為とは言え、皆に迷惑を掛けてしまったのは確かだったので、
「順也、オマエがいきなりにいなくなって、皆がどれだけ心配したと思っているんだ?」
 借りていたヘルメットを返しに行った、クーラーが涼しい警備員室で、智也にお説教されることになってしまった。
「あぁ・・・地下に・・ぃ降りる前にぃ、順也君はぁ皆さんを呼ぶとぉ・・おっしゃられたんです・・、でも・・ぉ、もう時間がぁ無くて、二人で・・茶色君を助けにぃ行ってしまいました・・ご心配を・・ぉお掛けして、申し訳ぇありませんでぇ・・したぁぁ・・」
「それは判っています、犬飼さん、でもそれとこれとは別問題です、これは我が家の問題ですので、口出しはなさらなうでください」
「・・は・・はぃ・・・でも・・ぉ・・、どうかぁ・・お手柔らかに・・ぃぃ・・」
「(カキカキ<でも、おかげで茶色を助けられたぞっ)」
「それは良かったが、あちこち探してもらって、迷惑を掛けたことは確かなんだから、ちゃんと皆さんに謝りなさい」
「(んん・・申し訳ありませんでした)」
「(キューーーーーーン・・・)」
 しかし、智也に叱られてちょっとションボリした順也と、つられてションボリしている順也に抱っこされた茶色が余りに可愛らしかったので、
「ちっ、仕方ねぇなっ、許してやれよ、兄貴」
「何が仕方ないだ、オマエが叱れと言ったから俺も頑張って叱ってるんだ〜〜っ><」
「おほほ、順也さんはなにも何も悪くありませんわ、悪いのは、100%そのアホタレ大学生達ですわ、こんなに可愛い茶色ちゃんを怖い目に合わるなんて、見つけたら小鳩がお仕置きして差し上げますっ」
「小鳩お嬢様の言うとおり、僕も順也君は何も悪くないと思います」
「俺達、別に迷惑掛けられたとかおもてねえし、なあ、梅ちゃん、まっつん」
「うん、思ってないよな」
「うん、思ってない」
「順也君が無事で何よりでした、何の問題もありませんよ」
「智也さんっ、順也を叱るんならっ、代わりに秘書の俺を叱ってくださいっ、許して貰う為にっまずは土下座しますっ><!!!!!」
 全員がその姿に胸キュンしてしまい、あっと言う間にお説教は終了したのだった。

 そして、俺はというと宮田との話を通して、順也のご機嫌が悪い原因がやっぱり自分にあると確信したので、順也にその事を一刻も早く謝ろうと思ったけれど、中々二人きりにはなれなくて困っているうちに、
「(西原ぁ、これ読んでくれよな)」
「え?俺に?えーと、何て書いてあるの?」
―――さっきはごめんな、意地悪言って俺が悪かったぞ、お詫びにちょっと隅の方で、オマエの好きなふうにエッチな事をしてもいいぞ
「え?本当に??」
「(カキカキ<本当だぞ、ちょっとあっちの方で、オマエの好きなエッチな事をするぞ)」
「いやっ、本当にはそっちもだけど、今はそっちじゃなくてっ、本当に俺の事を許してくれるの?」
「(カキカキ<もちろん、悪いのは俺だから許すぞ)」
「あうっ><良かったぁぁぁぁぁぁ、ゴメンネ、順也っ、俺、これからもっと頑張って、順也の良い恋人になるからねっっ!!」
「(カキカキ<エッチはどうする?)」
「ううっ、それはまた後でっっ><」
 何だか判らないが順也の方から謝ってくれて、順也のご機嫌が治っていることを知って、とりあえず胸を撫で下ろしたのだった。

 順也も無事に見つかり肝試しも終了したので、俺達は犬飼にお礼を言って、山奥の廃病院から家への帰途へと就いた。
―――PM1:30
 そして、車で山を降りきったあたりで、メンバーのほぼ全員が空腹を訴えたので、
「まだ、若林君にはハバネロベースト入りオニギリが残っているんだけれど、どうする?食べちゃう??」
「食べちゃう訳ねえだろうっっ!!どうもしねえよっ、そんな殺人オニギリ!!!恐ろしいものをっ最高の笑顔で勧めてんじゃねえっ!!!」
 通りかかった駐車場の広いレストランで、お昼ご飯を食べることになった。
 緑に囲まれたレストランの敷地には、郊外のレストランならではな感じで、広々とした緑の芝生のドックランがあって、
「キューーーーーーン・・」
「はいはい、直ぐに終わるから静かにしていてください、・・・フムフム、骨異常無し、内臓・・多分異常なし」
「先輩、ググった情報によると、犬は鼻の濡れ具合と、耳の中の綺麗さで、健康状態をチェックといいみたいです」
「なるほど、了解した翔也、それじゃあ、鼻の湿り気(ベチャっ!)わっ、コラコラ、鼻を押し付けないでください、鼻の湿り気異常なし、耳の中も・・異常無し」
「キューーーーーーン・・」
「はいはい、そんな悲しげな声を出さなくても、もう、遊びに言っていいですよ、うん、まったく専門じゃないから断定は出来ないけど、茶色君は元気一杯みたいですよ、順也君」
「(カキカキ<本当か?なら良かったぞ、ありがとうございました、三都葉先生)」
「いえいえ、どういたしまして、念の為に、後で獣医さんに見て貰ってくださいね」
「(カキカキ<んん、わかったぞ)」
「わかったぞじゃねえよっ、順也っ!!先輩は人間の医者なんだから、2度と子犬の診察とか無茶なことを押し付けるじゃねえぞっ!」
「(んん、無茶なんか言ってないぞ、じゃあ、俺はあそこにあるドックランっていう場所で、茶色とチェリーパイと遊んでくるぞっ、いくぞっ、茶色っ、チェリーパイっ)」
「(へっへっへっへっへっへっ・・・)」
「(キュン・キュン・キュン・キュン)」
「こらーーーっ、言い訳くらい筆談してけっ、ああもうっ、順也が我が儘言ってすみませんっ、英嗣さん><」
「ははは、いいんだよ、翔也、未来の弟の頼みなら、ハムスターの診察でも断らないさ」
「みっ、未来の弟ってっっ!英嗣さんっ、そんなの誰かに聞かれたらどうするんですかぁっ><」
 順也はシーズー犬のチェリーパイと、廃病院の地下で拾ってきた茶色い雑種犬の茶色(順也命名、変更不可)と、食事もそこそこに遊びに行ってしまった。
 
 俺も一緒に行きたかったけれど、
「ネコ舌で食事のスピードがノンビリなのは、昔と変わらないな、優希」
「えっ、そんなことないですっ、総一郎さん、これでも頑張って結構早くなったんですよ」
「はは、そんな一生懸命食べてる優希も可愛いから一枚撮っておこう、はい、優希、笑顔〜〜〜」
「うう、食事中は恥ずかしいから、止めてくださいっ、総一郎さん><」
「ほほほ、優希さん、お食事中も可愛らしくて、羨ましいですわっ」
「あうっっ!!(痛いですっ、こっそりフォークで突くのはやめてくださいっ、小鳩お嬢様っっぁ><)」
 頼んだグラタンが熱々で、ちょっと遅れをとってしまった。
 それでも、やっと食べ終えてドックランへの近道らしい裏口から順也の後を追おうとした時に、
「そうですか、やはり順也君が声を出せるようになるには、もっと積極的な治療が必要ということかもしれませんね・・」
 宮田が店の隅にある椅子に腰掛けて、携帯でそう話しているのが聞こえてしまい、思わず足を止めたのだった。


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2011.04.25 *Mon*

momo様へ

momoさま、4月7日にコメントありがとうございました><
うう、コメントとかあると思っていなかったので、まったくのノーチェックでした
本気でスミマセン><
復活気づいてくださってありがとうございます
ノンビリ更新ですが、ユルユルやっていこうと思っています
また覗いてやってくださいね〜^^ノシ
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2011.04.24 *Sun*

your voice is heard 19

「これだけ探していないとすると、順也君は地下へ行ったんですかねえ?」
 もう隠れている必要がなくなったので、三都葉と清原も含めた全員が集まった一階スタート地点で、顔を曇らせた宮田がそう言った。
 ちなみに、携帯で連絡をしようとしたけれど、
―――タラタッタッタ〜〜♪タラタッタッタッ〜♪♪タラタ〜ララタ〜ララ〜〜♪
「スミマセンっ、順也の携帯はここにあります><」
「ありますじゃねえよっ、ドアホウっ!!!」
―――ボカっっ!!!
「あうっ、ごめんなさいっ!!」
「こらっ、翔也っ、優希をお手軽にポカポカ殴るんじゃないっ!!」
 順也は携帯を持つのが邪魔で嫌いなので、俺が朝から預かりっぱなしになっていて無理だった。 
 地下の湿気で脆くなっている壁が倒れてくる危険がある。
 そんな理由で、地下は危ないからダメだと再三言われていたけれど、
「順也君は、今日の肝試しで声を出せるようになるんじゃないかと、かなり期待していました、本番の肝試しが怖くなかったのにガッカリして、1人で怖がろうと地下へ行ってしまったのかもしれません」
 宮田の話を聞いて、全員が顔を見合わせる。

 順也が今日の肝試しに並々ならぬ期待を掛けている。
 その話なら、さっき掃除をしながらここへ上がってくる途中に、俺も宮田から聞いた。
 宮田の話によると、朝の集合場所だった最寄の駅前ロータリーで、順也の今日の肝試しに掛ける意気込みを聞いたらしい。
「今朝、順也君がどうしても私とケンタッキーを買いに行きたいと言うから、二人でちょっと遠くに見えたケンタッキーキまで歩いただろう?」
「あう、すみません、宮田先生、順也ってば誰が一番自分の我が儘をすんなり聞いてくれそうか、凄く見分けるのが上手なんです」
「あはは、私は嬉しかったからかまわなかったんだけれどね、その時に順也君が筆談で話してくれたんだ、あ、これ、その時の筆談メモも貰ったんだけれどね」
「はい・・、えっと、『今日できっと声が出る様になるから、もう診察には行かないです、今までありがとうございました』『今日の肝試しで話せるようになっても、西原の昔の話を聞きに遊びに行ってもいいですか?』『念の為に声が出やすくなるコツがあったら教えてくれよな』・・」
 確かに、もう見慣れた順也の筆談メモからも、順也が今日の肝試しに強く期待していた様子が滲み出ていた。
 宮田は順也の機嫌が悪くなったのは、怖い肝試しをプロデュース出来なかった自分せいだと言って、
「優希まで順也君とケンカさせる嵌めにさせてしまってすまなかった」
 俺にまで頭を下げて謝ってくれた。
 でも俺は、やっぱり順也の機嫌が悪くなったのは自分のせいだと思っていた。
 順也が日頃から懐いていて気に入らない若林が発案者だという理由で、俺はどうもこの肝試しには乗り気になれていなかった。
 順也のやる気も知らずに、朝からどれだけ『行きたくない』だの、『帰ろう』だの、『待ってよう』を連呼していたかと思い出すと、俺は自分の心の小ささが情けなくて、消えてしまいたい気分になってしまう。
 しかし、順也が肝試しで怖がれ無かった事で意気消沈していたことは判ったけれど、それで順也が地下におりて行ったという事に対しては、俺も含めて皆が首を傾げた。
 順也は可愛い我が儘がチャームポイントの、甘えん坊のマイペース少年だったけれど、『ダメ』と言われたことはちゃんと守れる良い子でもあった。
 朝からあれだけ注意されて、ダメと言われていた地下へ黙って下りていくなんて、余りに順也らしくない行動だと、その場で顔を見合わせている全員が考えている様だった。

「地下は、壁が崩れそうになっているのもそうなんですが、妙に通路が入り組んでいるので、順也君は迷っているのかも知れません、後、これは皆さんには言っていなかったのですが、新しく大きなボイラーが置いてあったりするんです」
「え?ボイラーって、ここはもう直ぐ取り壊すんですよね」
「はい、でも、地下の作り自体は異様な位にしっかりしているので、壊すよりも次の建物に生かそうということになって、それでかさ張るボイラーの搬入も早めに・・、まあ、私も工事の詳しいことは判らないのですが・・、すみません」
 ボイラーは試運転中ということで、正午から毎日1時間、タイマーで動くようになっているらしい。
ただし、よっぽど無理やりに覗き込んだりしないかぎり、近寄っても心配はないという事だった。
「ちっ、順也のヤツ、あれだけダメだって言われたのに何で下りていくんだよっ、なあ、兄貴?」
「そうだな、しかし、チェリーパイもいないし、それから犬飼さんの姿も見えない、犬飼さんと逃げたチェリーパイを追いかけてるんじゃないのか?とにかくこのまま待っているのも心配だし、すみません、ちょっと俺達で順也を探しに行ってきます、行くぞ、翔也」
「おうっ」
「あっ、俺も行きますっ、智也さんっ、翔也さんっ!」
「優希はダメだ、危ないから待ってなさいっ」
「でもっ!!」
「あの、チェリーパイを探してくれてるんだとしたら、私達にも責任があります、私とキヨも探しに行かせてください」
「ははは、人間GPSと異名を取った俺がいればっ、順ピーが見つかるのも時間の問題っ、いいからポニュは安心してここで待ってなさいっ!!」
「嫌ですっ!!俺も行きますっ!!」
 壁が倒れてくる心配のある地下へ誰が順也を探しに行くのか?
 皆で行くのも危険ということになり、軽くモメた末に、俺、智也さん、翔也さん、宮田先生、人間GPSキヨの5人で地下へ下りる事になり、残りの人達はもう一度地下以外の他を探すことにした。
 俺が行く事には最後まで反対されたけれど、俺は一刻も早く順也の身の安全を確認したかったので、
「ダメだって言うんならっ、俺は1人でも行きます><」
 最後はかなり恥ずかしい駄々っ子モードになって、やっと同行を許して貰ったのだった。
 
 懐中電灯を手に5人が地下へ向かったのは12時30分頃だった。
―――ゴゴゴゴーーーーーーーー・・・・・
 階段を下りるに連れて不気味な地響きみたいな音が大きくなっていき、
「ボイラーが燃えている音ですね」
 そう宮田が説明してくれる。
「犬飼さんがいて下さると、迷わないですむんですが・・」
 懐中電灯で照らし出した宮田の手元には、家から持参していたこの廃病院の地下の見取り図があったのだが、覗き込んだそれは思った以上に入り組んでいて、
―――ゴゴゴゴーーーーーーーー・・・・・
 低く唸る様に聞こえるボイラーの音も手伝って、俺は心配だった順也の身が、更に心配になってしまうのだった。

 でも、その俺の心配もその後30秒で終了した。
「では行きましょう」
 そう言った宮田が、重そうな鉄の扉を引き空けて、後ろに立っていた俺が扉の中を照らすと、
「(んんっ、自動扉かと思ったぞ、なあ、チェリーパイ、茶色)」
「(へっへっへっへっへっへっ・・・)」
「(キュ〜〜〜〜〜〜ン)」
 そこには見知らぬ茶色い子犬を抱えて、足元にチェリーパイを従えた順也が、キョトンとした顔で立っていた。



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